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暗示使い  作者: 夜鳥ツル
第0章 それぞれの視点から見た日常
3/15

視点B

ーーー


ーー


ーサキとともにバスに乗り込む。


バスには同じ学園の生徒が何人か乗り込んでいた。


その中から先にシロを見つけたのはサキだった。


「おはよう、シロくん」


サキが声をかけると、シロは手を振りながら席をずれる。


今日シロが座っていたのは4人並べる席だった。そのど真ん中にシロはいた。相変わらず、気を配っているのに、周囲に気を配りきれていない。



これだからこの親友は人に悪い人と勘違いされるのだ。


…もちろん魔法のせいもあるが。


「よう」

こちらも手を上げて挨拶を返す。


「二人ともおはよう」

声が届くところまで来たのか、ようやく声で挨拶をする。


シロの声は小さい。

サキやカナタよりも小さい。


元気がないわけではないが、とにかく小さい。


…まぁ今はバスの中だからかもしれないが。


バスはすでに走り始めていたので、さっさと席に座る。


シロ、オレ、サキの順だ。


「…今日は一段と眠そうだな。昨日遅かったのか?」


「いや、そうでもないんだけど…眠そうに見える?」


「いつも通りよ」

「うん、いつも通りだな」


「いつでも眠そうに見えてるの?僕」


なんだか悲しんでいるような気がするが、そこはスルーだ。


「まあまあ、そこがお前の特徴なんだから、いいじゃん」


「そう。シロくんは気にしすぎ。ほんのジョークよ。」


「サキ…お前ジョークのつもりだから俺より答えるの早かったのか…」


「ん?ジョークじゃなかったの」




オレが言うまでもないことだが、夢島(むとう)サキはどこかずれている。


長い黒髪に落ち着いた印象の顔立ちのサキだが、その言動は突拍子もない。現に、


「ジョークだったんだ…ていうかサキは僕が気にするの分かって言ってたでしょ!…そういうのやめてね?」


「うん?そしたらもうシロくんと喋れなくなっちゃうよ?」


「……………」


「おいおい」




…こんな具合だ


だがまあシロ相手にはこれくらいで十分な気がする。




シロはあの「噂」が出てから変わってしまった。


オレたちの前では、あまり変わらずに済んでいるが、その他の人の前では、あまりしゃべらなくなってしまった。


オレだったら、たとえシロのように魔法のレベルが0でも気にもしないが、シロはやはり気にしてしまうようだ。


サキもそこらへんの事情は察しているのか、最近のサキはある意味絶好調だ。


十年来(じゅうねんらい)の付き合いであるオレすらも時々置いていくのだ。


…今サキはシロを慰めながら追い詰めている。どうしてこうなったかは謎だが、おれはそれに適当に相槌を打ちながら思う。




せめてオレたちといる間はこれまで通りのシロでいて欲しい、と。




これはオレとサキ、カナタのなかでは暗黙の了解事項だった。


バスが止まり、生徒達は立ち上がる。


学園に着いたのだ。


二人と一緒にバスを降りる。


見えてくるのは、このサイカロール魔法学園ーーー通称「学園」の正門だ。


ここは、オレたちの住んでいる「サイカ共同領域国」にある魔法学園だ。


魔法学園は世界に四つしかなく、四つの国それぞれが一つずつ保有している。


なかでも「サイカ」の「学園」は、四つのなかでも特に生徒数が多いことで有名だ。


正門では、次々と降りてくる生徒でごった返し、かなり混雑している。


体格がいいオレは、人の波を押し分け、二人の手を引きながら学園へと入っていく。


一度あそこで別々に入っていったら、二人とも押しつぶされて保健室送りになってしまったのだ。


こうせざる負えないだろう。

恥ずかしがってはいられない。


五分ほどで、なんとか混雑から脱出した。


「ありがとう」


シロは律儀に礼を言う。


サキなどはこんなことさも当たり前、といった態度だ。


まあこの態度には慣れている。


逆に礼を言われたら…


「今、何考えてるの?」


「うわ」


サキがこちらに顔を近付ける。


なんて勘のいい…


「脅かすなよ。いや、シロと違ってお前は冷た、いぃぃ!?」


「私が、なんだって?」


こいつ…問答無用で腕凍らせやがった!


しかもこの発動速度、明らかに準備してたな!


…ちなみに学園内では、魔法は割と自由に使うことが出来きたりする。


なのでオレも火を自分の腕に生成する。


「…くそ、溶けねぇ」


やはり火じゃ、水属性の派生系である氷を溶かすのは難しい。


サキが悪魔の笑みを浮かべているのが見える。


ーーー仕方ない。


「シロ、頼めるか?」


「うん、ちょっと待ってて。すぐ種出すから…」


そう言うと、ポケットから何かの種を取り出す。


「…いくよ。…グロウイング」


オレの氷の腕に、種から生えたツタ?が巻き付く。


「…スゥ………はっ!」


シロが開いた手を閉じると同時に、ピシッと音を立てて氷が砕けた。腕は無事だ。


「シロ………サンキュ」


サキを睨み、腕をさすりながら礼を言う。


「シロくん、そんなに上手く魔法使えるようになったんだ。すごいね!」


サキはオレの視線と周囲の視線を軽く無視して明るく言う。


「ちょっと工夫しただけだよ。そんなことより早く教室行こう。目立ってるから」


オレたちはシロの言う通り教室に向かうことにした。






…それにしても驚いた。

レベル0で生成すら満足に出来ないはずのシロがあんなに魔法を使えるようになっているなんて。一体どんな工夫をしたのだろうか?







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