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妹のためならこれぐらい!  作者: ツンヤン
プロローグ
5/131

正体がバレるとき その②

 その後は、少しだけラノベを読んでから寝る事にした。

 今日は、色々ありすぎて疲れてしまったよ。もうネロとパトラッシュの最後の気持ちがわかってしまったかもしれない。

 そして、朝から事件が起きるのである。平凡だった日々が懐かしく思えるし、それを望むことを許される環境でない事も承知している。








 朝の目覚めは、唐突で最悪の目覚めだった。


「幸菜……これなに?」


 肩を揺すられて目を覚ます。そこにはなぎさがなぜか居るのだ。

 この寮は内側から鍵を掛けることができない。それは淑女たるもの、いつでも恥じない生活を…に則っての事。本人が部屋に居れば、簡単に出入りできてしまうのだ。

 掛け布団は捲られ、俺の体がむき出しの状態で目を覚ました。そして、なぎさと目が合う。


「コレ……なに?」


 指の先を見ると、男の子である物が『漢である象徴』を主張しているのだ。


「コレ……はですね。フランクフルト?」


「そんなわけないでしょ!」


 パンツは履いているんだけど、男の生理現象を抑えるのは、至難の業と言うより不可能なのだから、どうする事もできない。


「男なんでしょ! そうなんでしょ! なんでこんな事してるの!?」


 とさすがにラフな、なぎさでも納得の説明が必要みたい。

 てっきり「私、気にしないから(笑)」ぐらいで済むと思っていたのに……

 昨日、楓お姉さまに説明したのと同じように説明する。


「そういう理由があったんだ……わかった! 協力するよ!?」


 そんなあっさりいいのかよ!?

 ラフ過ぎません? こんな展開、恋愛シミュレーションでもありえないだろ。


「そんなあっさりでいいの?」


「え? じゃぁ人生台無しにしていいの?」


「ごめんなさい…」


 この学院の生徒さんは人生を台無しにするのが大好きみたいです。


「でしょ! だったら気にしなくておっけーだよ」


 ま、まぁ結果オーライと言う事で一件落着しちゃおうか。


「でさ、噂聞いたよ~。花園先輩の妹になったんでしょ! 先輩も知ってるって事だよね?」


「うん。知ってるよ」 


 なぎさに聞けば、もう高等部と中等部には、ほとんど知れ渡っているとの事。

 そして、楓お姉様の事も聞いてみると、お姉様と言える人はいなかった。妹も作らなかった。後輩から告白(妹にして欲しい)とされても、全部、断り続けたと言う事、だから俺が妹になった事は、大きなニュースだったりするらしい。


「そして、その妹が実は、男の子……面白くなってきたよね」


 俺は面白くもないんだけどなぎさの目はキラキラエフェクトを使っているかのように輝いている。俺はひっそりとしていたいんだけどね。


「面白くないって……それで用事ってそれだけ?」


 この部屋に来たのだから、それ以外にも用事があるのではないか? と言う予想でしかないのだけど。


「忘れてた。今日は暇?」


「暇だけど?」


「街に遊びにいこっかってお誘いに来たんだ! 妹も紹介しておきたいしね」


 お節介で正体バレるって、もう少し気をつけよう……


「わかったけど、こんな朝の5時に来なくてもいいと思うよ」


 こんな時間にこなかったらバレなかったのに………終わったこと言ってもなにも始まらないのだが。

 朝の5時に起こされて、目が冴えてしまった。

 とりあえず、お化粧して制服に着替えておこうと布団から這い出る。

 エアコンのリモコンを手に取り、運転ボタンを押し、暖かい風が出てくるまでカーディガンでも羽織っておこう。

 あ、楓お姉さまも来るかな? メールだけでもしておかないと後でうるさく言われそう。ただそれだけだったのだが、弱みを握られるのも突然だったら、握るのも突然なのである。

 部屋も十分に暖かくなり、お化粧を入念にしていく。

 鏡に向かって可愛らしく顎に人差し指を添えて、ウインク!

 ………………

 さて、楓お姉さまにメールしなくっちゃ。ベッドに充電しながら置いていたスマホを手に取って、メールアプリを起動する。そして本文を打ち込んでいく。


『お友達と街に行きますけど、どうしますか?』


 正体がバレた事は、後で説明すればいいだろうと、簡潔なメールを送ったのだが、返信メールが凄い状態で帰ってきたのだ。


『gdtydsfさysdgfydgf』


 日本語でおk?

 この暗号を解読するには、英語ではダメだろう。ならイタリア語? あ、フランス語かもしれない!

 そんなわけあるか!

 英語でもイタリアでもフランスでもチョミメン語でも解読できるはずがないだろ。だからこう返信してみた。


『fgdsdshdさゆgふぁsj』


 ちょー適当☆

 絶対に言える。あのメールはちゃんと打ててない。これはひょっとしてチャンスじゃないのか? 寝ぼけている可能性がヒシヒシ……×20 と伝わってくる。

 この機を逃せば、楓お姉さまの弱みを握れるチャンスは、ほとんどないと思わないといけない。だったら行動するしかないだろう!

 急いで、制服に着替え、お姉さまのお部屋へGO~

 部屋の前まで着いたのだが、ここで注意しておきたい事がいくつかある。まずはノックして返事があった場合、さっきのメールが罠であった可能性がある。その時は、一目散に逃げるのが得策と思う。そして、ノックがなかった場合、この時は中に潜入した時に、部屋で待ち伏せしている可能性がある。その時は、逃げるより土下座でその場を切り抜ける!     以上……(泣)

 緊張しながらノックする。コンコンっとノックをするも返事がない。ただの屍のようだ。ホントに屍なのか、確認と行こうか。

 いざ! 参る!?


 部屋は真っ暗で、カーテンの隙間から朝の日差しが入り込んでいるだけだった。

 本気と書いてマジと読む。本気で寝てらっしゃる? そっと起こさないようにベットに近づいていく。

 すぅすぅ……っと規則正しい寝息が、鼓膜を震わせる。


「ん……ん~………」

 とちょっとエッチィ声と共に寝返りを打つと、そこには下着姿のお姉様でした。

 大きなお胸が苦しそうに、ブラに詰まっており、触ればものすごい弾力ではじき返されそうである。


 俺はゴクっと唾を飲み込む。健全な男の子であれば、据え膳が目の前にあるのに頂かないというのは、ものすごく失礼なのでないかと、思ってしまうのである。

 それでは、頂きましょうか!

 いざぁああああああああああああああああああ…


 手を伸ばすと、そのまま腕を取られて布団にゴールした。

 そして、抱き枕と間違えられたのであろう。ギュッっと抱きしめ、お姉様の足は俺の股の間に絡み付いてくる。スルっとしていて、サラッサラなお肌が俺の太ももや腕に刺激してきて、「最高です……」っと小声で言ってしまうぐらい、女の子の生肌を堪能してしまった。


 さすがにこれはマズイっと判断して、抱き枕から人間に戻ろうと、すり抜けて脱出成功となるはずだったのに、『逃げる獲物は逃がさない!』と言う、お姉様の本能でさらにギュッと締め付けられ、顔が胸に埋まってしまった。


 なんて最高なんだ! 誰だ、マシュマロなんて言ったのは! 水風船ではないか!

 そう思えたのは、最初だけで、数秒もすれば「ふにゅうにゅ!」と息が出なくなっていた。


「ふにゅ! ふにゅ、ふ……」


 結論、おっぱいは大きすぎるのも考えようって事が判明しました。

 幸菜、ごめんね。君のブラを見て少しだけ涙が出たのは、間違いでした。


 「くは!」


 俺の意識が覚醒した時には、お姉様は制服に袖を通していた。

 あれ? 俺って、お姉様に腕を掴まれて、抱き枕になった挙句に、二つの水風船で窒息死する夢を見ていたような……


「あら、目を覚ましたの」


 制服に着替え、髪の毛をバッサァ~っと手で払いのける、お姉様の姿がそこにある。


「あれ? 楓お姉様を起こしに来て、腕を掴まれて、抱き枕にされたよう……」


「気のせいね」


「気のせいですか?」


「えぇ。私を起こしに来たけど、あなたは私の寝姿が美しすぎて、隣に入り込んできたんでしょ?」


「それはありますね」


 大いにありそうです! でも


「お姉様は朝に弱いっと……メモメモ」


 キチンとメモを取っておかないと、俺はすぐに忘れるからな。弱みになるかわからないけど、覚えておいて損はないだろう。

 お姉様は「覚えておきなさいよ……」と、悔しがるのであった。弱みではなくチャームポイントだと思うんだけどね。


「そういえば、なぎさに正体、バレちゃいました。テヘ☆」


 可愛らしく報告しておけば、なんとかなるだろう。なりませんよ。

 ハァ……っと大きな。いや、「あんたバカァ? ホントにバカね……」と赤い髪の少女が某主人公を罵っているかのような、ため息。

 それはそれで、ありです!

 だって、俺は綾○よりもア○カのほうが大好きだから!

 クーデレよりもツンデレですから!

 SよりもMですから!


「あなたの性癖なんて聞いていないのよ」


 あ、心の声がうっかり外に漏れてしまっていたようです。

 僕ってたまに心の声が外に漏れちゃいます。テヘ☆


「話を進めていいかしら?」


 それから、食堂に向かいながら、詳細を説明し、ちゃんと黙っていてくれる事などを告げる。「あなたって運がいいのか悪いのか……」とあきれられた。


 食堂に入ると、また鋭い視線がザックザク(ガン○ムネタじゃないからね!)俺に突き刺さってくるのは、もう慣れるしかないのだろう。


「ゆっきなぁあああああああああああ」


 朝から元気で鼓膜に突き刺さるような、叫び声で俺を呼ぶ。

 お姉様も「あの子がなぎささんなのね」と、まだ紹介もしていないのに、わかってしまうあたり、なぎさの特権なんだろうな。

 俺を待っていたかのように歩み寄ってきてくれる。

 隣には、小柄な2人の少女も一緒に歩いてくるあたり、どちらかがなぎさの妹なのか。


「あ、会長ごきげんよ~」


 なんて馴れ馴れしい挨拶なんだ……怖いもの知らずとは、この子のためにある言葉じゃないのか。


「花園会長、ごきげんよう」


「ご、ごきげんようでしゅ…」


「はい、ごきげんよう」


 あら、金髪・ツインテール・貧乳の子はしっかり挨拶しているのに、ボブカット・黒髪・発育の良い胸の持ち主の子は『でしゅ』と噛むあたり、萌えをわかってる!

 ロリコンのみんな、どっちがいいか、この後の会話で決めてくれい。


「こっちの金髪が私の妹で、黒い髪の子が妹のお友達ね」


 金髪の子「この平民がお姉様のお友達? 寝言は寝てから言って欲しいわね」

 黒髪の子「凛ちゃん……ご挨拶と自己紹介はきちんとしないといけないよ」

 金髪の子「はん! 聞きなさい平民。私は東条凛(とうじょうりん)、凛様と呼ばせてあげるわ!」

 黒髪の子「初めまして、長嶺雛子と申します。気軽に雛子とお呼び下さい。」


 みなさん、ご覧いただけたでしょうか?

 金髪少女の凛ちゃんと黒髪少女の雛子ちゃん。あなたはどっちを選ぶ?


「こちらこそ初めまして、立花幸菜って言います。私も幸菜って呼んでね。」


「あんたには、平民で十分よ!」


 あのさ、どうして金髪+ツインテール+貧乳=ツンデレ ってテンプレが出来上がってしまっているんだ? デレデレキャラの1人ぐらい居てもいいだろ。

 それに比べ、雛子ちゃんは礼儀正しく、守ってあげたくなるぐらい可愛らしい……

 態度が大きく育ちすぎて、胸に栄養が回らなかったんだね!


「平民に言われたくないわ!」


 あら、また心の声が外に漏れていたみたい。しっかり防音工事しておかないと、恋愛シミュレーションをしてるのが、バレちゃうぞ♪

 喘ぎ声が駐輪場まで聞こえてきて、喘ぎ声を出している。声優さんより、恥ずかしい目に遭っちゃうぞ♪


 そんな事実はどうでもいいんだ。今はツンデレの少女、どうやってデレさせるかなんだ。これはミレニアム懸賞問題(数学七大問題)よりも難しい問題なのかも知れない。だって簡単にデレてしまっては、味気ない。ツンが9割、デレ1割が最高のツンデレであって、その1割をどう引き出すか! が問題なのである。


「幸菜はほっておいて、朝ごはんにしましょうか」


「おっけーです」


「平民市ね!」


「立花様、かわいそうです……」


 みんな、言いたい放題だし、ほっておかないで。構い過ぎるのもイヤだけど、ほっとかれるのもイヤなんです。

 それから、朝ごはんを食べて、中等部の2人はまだ時間があると言う事で、1度、寮に戻ると言うので、今は楓お姉様となぎさと俺は、秘密の会議を行っている。俺の部屋でね。


「なぎささんも幸菜の事は知っていると思うけど、ホントに手伝ってくれるのね?」


「はい! だって面白そうじゃないですか」


「そうよね。面白そうだものね」


 2人は、不気味な笑いをしながら、こちらを見つめてくる。美少女に見つめられて、嬉しいはず、なんだけど嬉しさが半減するね。


「2人に言っておきます。俺はおもちゃじゃないです。面白いとか面白くないとかで、俺の人生を弄ばないでください!」


「却下ね」


「却下だね」


 即答とか、やめてくださいよ。


「幸菜に拒否権は認められないわ。あなたの人生は私達が握っているのだから」


 なんで、こんな2人にバレてしまったんだろうか。なぎさはともかく、楓お姉様の裏の顔は見たくなかった。優雅で美しくいて欲しかっただけなのに、今はもう悪魔か堕天使かの二択でしかない。


「さて、今後の話なのだけど、来週から本格的な授業が始まるわ。それにともなって幸菜の正体がバレてしまう可能性が上がってくる。特に体育の時とかね、その時はなぎささんにお願いするわね」


「おっけーです。あ、なぎさでいいですよ!」


「わかったわ。なぎさ」


 だけど、面倒見がよかったりする所は長所でもあるよな。そういう所が生徒会長と言う役職についている理由なのかもしれない。


「あ、性的な面倒は御免蒙るわ」


「誰も、そんな事言ってません!」


「ゆきなの顔、真っ赤ー」


 もうこの2人のペースにハマッてしまって、抜け出せないよ!


「この後は、楓お姉様は一緒にこないんですよね?」


「えぇ、生徒会の仕事があるの。だから、なぎさに任せるわ」


「まかせておいてください! 泥舟に乗ったつもりでいてくだされば」


 泥舟だったら、溶けて沈没するよ! ホントになぎさの冗談は、抜け目ないなぁ。


「ごめん。間違えた! タイタニック号に乗ったつもりで」


「余計にたちが悪いよ!」


「コスタ・コンコルディア号はどうかしら?」


「乗客より先に、船長が逃げないで!」


 ボケが2人もいると突っ込みは2倍も疲れるんですよ。だから、どちらかは普通にいて下さいよ。


「冗談はこれぐらいにしておいて、私は学院に向かうわ。後はよろしくね」


 と楓お姉様は学院に向かっていった。


「いい人だね」


「そうだね。悪魔がでてこなかったらね」


 あははははは……っと自然と2人で笑い出す。

 楓お姉様もなぎさも俺の事を助けてくれると言ってくれたのは、とても嬉しい。これから、この2人には迷惑をかけるかもしれないけど、友達以上の関係で結ばれていたいと思う自分が現れ始めたのであった。


「あ、エッチな本みっけた!」


「エッチな本じゃなくて、ライトノベルって勝手に出さないで!」


 訂正します。友達と他人の間ぐらいがちょうどいいのかもしれない………




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