第22話「真実の映像」
地下アジト。
兵士たちが階段を降りてくる。
20人以上。
重装備。
ロクマデスは——。
構えた。
「メゼ、バクラヴァ、グリコ」
「連携で行くぞ」
三人は頷いた。
兵士隊長が剣を抜いた。
「抵抗は無駄だ!」
「大人しく捕まれ!」
ロクマデスは——。
答えなかった。
ただ——走った。
兵士に向かって。
最初の兵士の剣を避け、拳を叩き込む。
兵士が倒れる。
「くそ!」
他の兵士が襲いかかる。
だが——。
メゼが時間を遅くした。
兵士の動きがスローになる。
その隙に——。
バクラヴァが力増幅で複数の兵士を吹き飛ばした。
グリコは共感能力で——。
兵士たちの戦意を削ぐ。
「何だ……?」
「身体が……重い……」
「戦いたく……ない……?」
だが——。
兵士の数が多すぎる。
少しずつ、押され始める。
「くそ……!」
ロクマデスは息を切らした。
「このままじゃ——」
その時。
「待って!」
シュトーレンが戻ってきた。
「シュトーレン!?」
ミルが驚いた。
「逃げたんじゃ——」
「私も、戦う」
シュトーレンは言った。
「真実を——見せるために」
シュトーレンは胸に手を当てた。
そこには——金色の小さなカメラのペンダント。
「私のギは——『記録』」
「過去に記録した映像を、投影できる」
ペンダントが輝いた。
金色の光が——空中に広がる。
そして——。
映像が現れた。
半透明の、巨大なスクリーン。
50年前——。
街の中心部。
人々が走り回っている。
逃げている。
追っているのは——。
兵士たち。
そして——。
その先頭に、一人の男。
若き日の国王。
30代くらい。
金髪、鋭い目。
手には——巨大な剣。
「ギ使用者を——」
若き国王が叫んだ。
「一人残らず、殺せ!」
兵士たちが——。
ギを持つ人々を捕らえていく。
老人、女性、子供——。
容赦なく。
そして——。
国王自身が、剣を振るった。
一人の男を斬る。
血が飛び散る。
次に——。
女性を斬る。
そして——。
子供を——。
「やめろおおお!」
映像の中で、誰かが叫んだ。
だが——。
国王は止まらなかった。
兵士たちは——。
映像を見て、愕然とした。
「これ……」
「嘘だろ……」
「国王陛下が……」
「子供まで……?」
隊長は——。
震えていた。
「何だ、これは……」
「真実よ」
シュトーレンは言った。
涙を流しながら。
「50年前——」
「兄は、ギ使用者を虐殺した」
「理由もなく」
「ただ——」
シュトーレンは続けた。
「ギを憎んでいたから」
映像は続く。
虐殺が終わった後。
国王は——。
膝をついていた。
周囲は死体の山。
血の海。
国王は——。
泣いていた。
「許せ……」
「許してくれ……」
「でも——」
国王は拳を握った。
「ギは……」
「ギは、呪いだ……」
「全て……消さなければ……」
映像の最後。
幼い少女が——。
国王の元へ走ってきた。
6歳くらい。
金髪の少女。
若き日の——シュトーレン。
「お兄ちゃん……」
幼いシュトーレンは、国王を見上げた。
「なんで……?」
「なんで、みんなを殺したの……?」
国王は——。
妹を抱きしめた。
「お前だけは……」
「お前だけは、生かしておく」
「だから——」
国王は妹の目を見た。
「ギを、持つな」
「ギを、使うな」
「ギは——」
涙が溢れる。
「全てを、奪うから」
映像が——消えた。
地下アジトは——。
沈黙に包まれた。
兵士たちは——。
呆然としていた。
「これが……本当なのか……?」
「俺たちは……何を守ってきたんだ……?」
隊長は——。
シュトーレンを睨んだ。
「嘘だ!」
「こんなの、捏造だ!」
「国王陛下が、そんなことを——」
「嘘じゃない」
シュトーレンは断言した。
「私は——そこにいた」
「兄が、人々を殺すのを」
「この目で、見た」
シュトーレンは涙を拭った。
「50年間——」
「ずっと、苦しんできた」
「真実を知りながら、何もできなかった」
「でも——」
シュトーレンはロクマデスを見た。
「あなたたちが来てくれた」
「だから——」
「もう、黙っていられない」
兵士たちは——。
動揺していた。
何人かは、剣を下ろした。
「俺は……」
一人の兵士が呟いた。
「もう、戦えない……」
「こんな国のために……」
だが——。
隊長は叫んだ。
「黙れ!」
「国王陛下を疑うな!」
「我々は——」
隊長は剣を構えた。
「命令に従うだけだ!」
隊長が——。
ロクマデスに斬りかかった。
ロクマデスは避けた。
「お前——」
「まだわからないのか!?」
「わかってる!」
隊長は叫んだ。
「でも——」
「でも、どうすればいいんだ!?」
隊長の目には、涙があった。
「俺は——」
「ずっと、国王陛下を信じてきた!」
「家族も、仲間も、全てを捧げてきた!」
「それが——」
隊長は震えた。
「嘘だったなんて……」
「認められるか!」
ロクマデスは——。
隊長の剣を受け止めた。
素手で。
「認めなくていい」
ロクマデスは言った。
「でも——」
「目を背けるな」
「真実から」
隊長は——。
力が抜けた。
剣を落とす。
「俺は……」
「どうすれば……」
ロクマデスは——。
隊長の肩に手を置いた。
「一緒に、考えよう」
「この国を、どう変えるか」
その時——。
天井が——崩れた。
ドガァン!
土砂が降ってくる。
「何だ!?」
みんなが上を見上げた。
穴が開いている。
そこから——。
一人の男が降りてきた。
60代。
金髪、碧眼。
王冠を被っている。
国王——その人だった。
「妹よ」
国王は、シュトーレンを見た。
「まだ、分からないのか」
シュトーレンは——。
国王を睨んだ。
「兄さん……」
「ギは、呪いだ」
国王は言った。
穏やかな、でも冷たい声で。
「全てを奪う」
「だから——」
国王は剣を抜いた。
「消さなければならない」
「全て」
国王の剣が——輝いた。
金色の光。
ギだ。
国王自身が——ギを持っている。
「お前……!」
ロクマデスは驚いた。
「ギを持ってるのか!?」
「ああ」
国王は頷いた。
「私のギは——『絶対切断』」
「どんなものでも、切ることができる」
「ギも、人も、絆も——」
国王の目は、虚ろだった。
「全てを、切る」
国王が——。
剣を振るった。
空間が——切れた。
文字通り、空間が裂ける。
「危ない!」
ロクマデスは叫んだ。
みんなが避ける。
空間の裂け目が、地面を切り裂いた。
「これは……!」
メゼは驚愕した。
国王は——。
静かに言った。
「ここで、全員——」
「終わらせる」




