第21話「革命の種」
処刑台。
エクレアが縛られている。
執行人が斧を振り上げた。
群衆は——息を呑んだ。
ロクマデスは兵士に囲まれている。
ネックレスを握る——。
使うか?
でも、また記憶を失う。
その時——。
群衆の中から、一人の男が飛び出した。
40代。
痩せた体。
目に涙を浮かべて。
「待ってくれ!」
男は叫んだ。
「娘を——!」
「娘を助けてくれ!」
兵士たちが、男を取り押さえようとする。
だが——。
男は必死で抵抗した。
「エクレア!」
「パパは——!」
「パパは、お前を守る!」
エクレアは——。
泣いた。
「パパ……!」
「来ちゃダメ!」
「捕まっちゃう!」
ロクマデスは——。
その光景を見た。
父親の愛。
娘への想い。
そして——。
決断した。
「メゼ!」
ロクマデスが叫んだ。
「時間を止めろ!」
「でも——」
メゼは躊躇した。
「また記憶を——」
「構わない!」
ロクマデスは言った。
「今は、彼女を救うことが先だ!」
メゼは——。
頷いた。
ブレスレットが輝く。
時間操作発動——。
周囲の時間が、遅くなった。
兵士の動きが、スローモーションになる。
「バクラヴァ!」
ロクマデスが叫んだ。
「鎖を壊せ!」
バクラヴァは指輪を輝かせた。
力増幅。
拳に力が集まる。
そして——。
処刑台の鎖を殴った。
ガシャン!
鎖が砕ける。
「グリコ!」
ロクマデスが叫んだ。
「みんなの恐怖を、和らげろ!」
グリコはチェーンを輝かせた。
共感能力。
群衆の心に——光が広がる。
恐怖が、少しずつ消えていく。
代わりに——。
勇気が芽生え始める。
「今だ!」
ロクマデスは走った。
時間が遅くなった世界で。
処刑台に飛び乗り——。
エクレアを抱きかかえた。
「捕まってろ!」
エクレアは——。
ロクマデスの首に腕を回した。
「……うん」
ロクマデスは——。
処刑台から飛び降りた。
着地。
メゼが時間操作を解除した。
時間が——戻った。
「……え?」
兵士たちは混乱した。
「少女が——消えた!?」
執行人の斧が、空を切った。
ロクマデスは——。
エクレアを抱えたまま、走った。
「追え!」
兵士たちが追いかけてくる。
だが——。
群衆が、立ちはだかった。
「通さない!」
エクレアの父親が叫んだ。
「娘を——!」
「娘を守るんだ!」
他の人々も——。
動き始めた。
「そうだ!」
「子供を殺すな!」
「ギを持っているだけで、死刑なんておかしい!」
グリコの共感能力が——。
人々の心を、繋げていた。
恐怖を超えて。
勇気を分かち合って。
「くそ……!」
兵士たちは、群衆を押しのけようとした。
だが——。
人々は、譲らなかった。
ロクマデスたちは——。
その隙に、逃げた。
路地裏へ。
しばらく走って。
安全な場所に着いた。
廃墟になった建物。
「……大丈夫か?」
ロクマデスはエクレアを下ろした。
エクレアは——。
頷いた。
「うん……」
「ありがとう……」
涙を流しながら。
「助けてくれて……」
メゼが膝をついた。
「ふう……」
「大丈夫?」
グリコが心配そうに尋ねた。
「ええ……」
メゼは頷いた。
「でも——」
メゼは頭を押さえた。
「また、何かを忘れた気がする……」
ロクマデスは——。
メゼの肩に手を置いた。
「すまない」
「無理させた」
「いいの」
メゼは微笑んだ。
「エクレアを救えたんだから」
その時——。
足音が聞こえた。
ロクマデスは警戒した。
だが——。
現れたのは、エクレアの父親だった。
「……見つけた」
父親は息を切らしていた。
「エクレア!」
「パパ!」
エクレアは父親に抱きついた。
二人は——。
抱き合って泣いた。
「よかった……よかった……」
父親は娘の頭を撫でた。
「無事で……」
しばらくして。
父親はロクマデスたちに頭を下げた。
「ありがとうございます」
「娘を助けてくれて」
「いや」
ロクマデスは首を振った。
「当然のことをしただけだ」
父親は——。
顔を上げた。
「あなたたちは……」
「ギ所持者ですね?」
ロクマデスは頷いた。
「ああ」
「なら——」
父親は言った。
「来てください」
「案内したい場所がある」
父親に導かれ——。
地下へ降りていった。
古い下水道。
暗く、湿っている。
だが——。
奥に、明かりが見えた。
「ここです」
扉を開けると——。
広い空間があった。
地下のアジト。
そして——。
20人ほどの人々がいた。
「これは……」
メゼは驚いた。
「地下組織です」
父親は説明した。
「ギを隠れて使う者たちの」
人々が——。
ロクマデスたちを見た。
様々な年齢。
様々な表情。
だが——。
全員に共通しているのは。
恐怖と、希望。
「私の名はミル」
父親は名乗った。
「元は、国の研究者でした」
「50年前の大災害を調べていた」
「だが——」
ミルは悲しそうな顔をした。
「真実を知りすぎて、追放された」
「真実?」
ロクマデスが尋ねた。
「ええ」
ミルは壁を指差した。
そこには——。
無数の資料が貼られていた。
写真、文書、図表。
50年前の記録。
ロクマデスは——。
それらを見た。
大災害の写真。
焼け野原。
死体の山。
だが——。
何かが、おかしい。
「これ……」
ロクマデスは一枚の写真を指差した。
「建物が——爆発じゃなくて、切られてる?」
「よく気づきましたね」
ミルは頷いた。
「そうです」
「50年前の『大災害』——」
ミルは続けた。
「あれは、ギの暴走なんかじゃない」
「これは——」
ロクマデスは息を呑んだ。
「虐殺だ」
その言葉に——。
一同は沈黙した。
「誰が……?」
メゼが尋ねた。
その時——。
扉が開いた。
フードを被った人物が入ってきた。
「よく気づいたわね」
女性の声。
「50年前の真実——」
「教えてあげる」
フードが取られた。
そこには——。
30代前半の女性。
金髪、碧眼。
そして——。
国王にそっくりな顔立ち。
「私の名はシュトーレン」
女性は言った。
「国王の——妹よ」
一同は——。
驚愕した。
「国王の……妹……!?」
「ええ」
シュトーレンは頷いた。
「兄は——」
彼女の目に、悲しみが浮かんだ。
「50年前、ギ使用者を虐殺した」
「そして——」
「それを『大災害』と偽った」
ロクマデスは——。
拳を握った。
「なぜ……」
「それは——」
シュトーレンは答えようとした。
だが——。
その時。
上から、爆発音が聞こえた。
ドォン!
「見つかった!?」
ミルが叫んだ。
「兵士たちだ!」
「地下組織の場所が、バレた!」
階段から、兵士たちが降りてくる。
「全員、捕らえろ!」
「ギ所持者は——死刑だ!」
ロクマデスは——。
立ち上がった。
「逃げろ!」
「でも——」
「俺たちが時間を稼ぐ!」
ロクマデスは仲間を見た。
メゼ、バクラヴァ、グリコ——。
三人は頷いた。
「行って!」
メゼが叫んだ。
「子供たちを!」
ミルは——。
頷いた。
「エクレア、行くぞ!」
「でも——」
「いいから!」
地下組織の人々は——。
別の出口から逃げ始めた。
ロクマデスたちは——。
兵士たちと対峙した。
「お前たち——」
兵士の隊長が言った。
「国を裏切ったな」
「裏切ってない」
ロクマデスは答えた。
「俺たちは——」
「この国を、救おうとしてるんだ」




