表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『ギ。~感情を装備した少年たち~』  作者: 比呂石 凪


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

16/22

第16話「消えない絆」

街へ戻る道。

ロクマデスは——歩いていた。

メゼに手を引かれて。

虚ろな目で。

何も見ていない。

何も考えていない。

ただ——歩くだけ。

「ロクマデス……」

メゼは何度も呼びかけた。

だが、反応はない。

グリコも、トラハナスも——。

何も言えなかった。

ただ、悲しそうに見ているだけだった。


街に着いた。

図書館の一室に、ロクマデスを寝かせた。

「休んで」

メゼは優しく言った。

ロクマデスは——。

言われた通りに横になった。

そして、目を閉じた。

まるで——人形のように。

メゼは——。

部屋を出た。

廊下で、崩れ落ちた。

「くそ……くそ……!」

拳で床を叩く。

涙が止まらない。

「なんで……なんで……!」

グリコが駆け寄った。

「メゼさん……」

「私が……私が弱かったから……!」

メゼは叫んだ。

「もっと早く、彼を止めるべきだった!」

「もっと強く、止めるべきだった!」

「でも——」

メゼは顔を上げた。

「私には、できなかった」

「彼の決意を、止められなかった」

グリコは——。

メゼを抱きしめた。

「……メゼさんのせいじゃない」

「ロクマデスが、選んだの」

「みんなを救うって」

グリコも泣いていた。

「だから——」

「私たちが、彼を救う番」

メゼは——。

頷いた。

涙を拭う。

「そうね」

「今度は、私が——」

その時。

扉が開いた。

バクラヴァが立っていた。

「……話がある」

バクラヴァは言った。

「メゼ。お前と」

メゼは警戒した。

「何の用?」

「過去の話だ」

バクラヴァは続けた。

「お前が、忘れた過去」

メゼは——。

息を呑んだ。


屋上。

バクラヴァとメゼが、二人きりで立っていた。

「何を言いたいの?」

メゼは尋ねた。

バクラヴァは——。

空を見上げた。

「俺たちは、かつて恋人だった」

「……え?」

メゼは驚いた。

「何を言って——」

「本当だ」

バクラヴァは続けた。

「10年前。お前と俺は、恋人同士だった」

「だが——」

バクラヴァの表情が曇った。

「お前は、ギの副作用で——」

「俺のことを、忘れた」

メゼは——。

何も言えなかった。

頭が混乱している。

「嘘……」

「嘘じゃない」

バクラヴァは指輪を見た。

「この指輪——」

「お前が、俺にくれたものだ」

メゼは——。

その指輪を見た。

金色の、古びた指輪。

「これが……」

「ああ」

バクラヴァは続けた。

「俺は、ギに依存した」

「お前を忘れられなくて」

「お前を取り戻したくて」

「力を求めた」

バクラヴァは笑った。

自嘲的に。

「だが——」

「ギを使えば使うほど、俺も壊れた」

「感情が消え、人間性が失われ——」

「気づけば、俺も真っ黒だった」

メゼは——。

震えた。

「じゃあ……私が……」

「お前のせいじゃない」

バクラヴァは首を振った。

「俺が、弱かったんだ」

「お前を受け入れられなかった」

「お前が俺を忘れても、それでもお前を愛し続けるべきだった」

バクラヴァはメゼを見た。

「だが、俺にはできなかった」

「だから——」

バクラヴァは続けた。

「お前に、伝えたかった」

「今のお前が、ロクマデスにしようとしていることは——」

「正しい」

メゼは——。

涙を流した。

「バクラヴァ……」

「俺はできなかった」

バクラヴァは言った。

「でも、お前ならできる」

「彼を忘れても、彼を愛し続けることが」

「そして——」

バクラヴァは微笑んだ。

わずかに。

「きっと、還ってくる」

「真の愛は——必ず」

メゼは——。

バクラヴァに近づいた。

そして——。

抱きしめた。

「ごめんなさい……」

「ごめんなさい……」

バクラヴァは——。

驚いた。

だが——。

そっと、メゼの背中に手を置いた。

「……いいんだ」

二人は——。

しばらく、そうしていた。

10年越しの——。

別れの抱擁。


部屋に戻ると。

ロクマデスは、まだ横になっていた。

目を閉じて。

メゼは——。

彼の隣に座った。

そして、手を握った。

「ロクマデス」

呼びかける。

「私の名前は、メゼ」

「あなたを救った人」

「あなたを愛している人」

メゼは続けた。

「あなたは、私の名前を忘れた」

「でも——」

メゼは微笑んだ。

「私は、あなたを忘れない」

「何度忘れられても」

「私は、あなたを愛し続ける」

その時——。

ロクマデスの目が、開いた。

虚ろな目。

だが——。

一瞬だけ。

光が宿った。

「……温かい」

小さな声。

メゼは——。

驚いた。

「ロクマデス!?」

だが——。

すぐに、虚ろに戻った。

目を閉じる。

何も言わなくなった。

「今の……」

グリコが駆け寄った。

「今、彼——」

「ああ」

メゼは頷いた。

涙を流しながら。

「反応した」

「初めて、反応した」

グリコはチェーンを光らせた。

共感能力で、ロクマデスの心を見る。

「……見える」

グリコは呟いた。

「彼の心の中——」

「真っ暗だけど」

「でも——」

グリコは微笑んだ。

「小さな光がある」

「すごく小さいけど」

「確かに、ある」

メゼは——。

ロクマデスの手を、強く握った。

「まだ、終わってない」

「彼は、まだここにいる」

「だから——」

メゼは決意した。

「私が、取り戻す」

「あなたを」

その時——。

窓の外で、爆発音が聞こえた。

「何!?」

トラハナスが窓に駆け寄った。

「……これは」

街の中心部が——。

燃えていた。

そして——。

黒い服を着た集団が、街を襲撃していた。

「新しい勢力か?」

トラハナスは呟いた。

「だが、どこの……」

その時。

集団のリーダーが現れた。

30代前半。

黒髪、鋭い目。

そして——。

金色の古びた剣を持っている。

「我が名は——ダクワーズ」

男は宣言した。

「ギ破壊者だ」

「この世界から、全てのギを——」

「消し去る」

メゼは——。

驚愕した。

「ギ破壊者……」

「まさか……」

トラハナスは厳しい顔をした。

「来たか……」

「最も過激な、反ギ勢力が」

ダクワーズは叫んだ。

「ギは呪いだ!」

「ギは悪魔だ!」

「ギを使う者は——」

「全員、死ね!」

集団が——。

街中のギ所持者を襲い始めた。

無差別に。

容赦なく。

「くそ……!」

メゼは立ち上がった。

「行くわ」

「待て!」

トラハナスが止めた。

「お前一人では——」

「でも!」

その時——。

ロクマデスが——。

起き上がった。

虚ろな目のまま。

だが——。

立ち上がった。

「ロクマデス?」

メゼが尋ねた。

ロクマデスは——。

窓の外を見た。

燃える街を。

そして——。

呟いた。

「……守る」

小さな声。

でも——確かに。

「みんなを……守る……」

メゼは——。

涙を流した。

「ロクマデス……!」

彼は——。

まだ、そこにいた。

記憶は失っても。

名前は忘れても。

心は——。

まだ、覚えていた。

守りたいという、想いを。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ