去る決断
叔母のマリーはストーブの前に立ち、白髪をきちんとまとめたお団子ヘアで鉄のフライパンで卵をひっくり返していた。マリーは兄弟を赤ん坊の頃から育て、冒険家の父親が跡形もなく姿を消した時、孤児の甥二人を引き取ったことについて一度も文句を言わなかった。
「本当に大丈夫なの?」とマリーは振り返らずに尋ねた。「ブラックウォーターリッジは、よそ者を歓迎する場所としてはあまり知られていないわ。」
ローレルとネルソンは視線を交わした。ブラックウォーターリッジ――法の外側に存在する街。古くからの領土紛争のため、政府の介入が及ばない場所だ。危険で混沌としており、まさに違法な冒険者の支部が公然と活動できるような場所だった。
「マリーおばさん、試してみないと」ローレルは叔母から渡された卵とトーストの皿を受け取りながら言った。「お父さんはどこかにいるわ。ブラックウォーターリッジのギルド支部に、お父さんの行方記録があるかもしれないわ。」
彼女は深くため息をついた。「あなたのお父さん…マーカスはいつも手の届かないものを追いかけていたの。あなたたち兄弟には、その癖を受け継がないことを祈るわ。」
朝食後、兄弟は旅の荷物を背負った。軽い食料と、村のあちこちで雑用をしながら長年貯めたわずかなお金だけだった。二人合わせて150エコインほどしかなかったが、それが彼らの全てだった。
しかし、彼らには確かな技術があった。マリーは幼い頃から二人の息子に戦闘訓練をさせようとしていた。冒険者が闊歩し、モンスターが存在する世界では、それが不可欠だと主張していたのだ。ローレルとネルソンはどちらも並の戦士なら簡単に倒せるほどで、村の周りの森で幾度となく狩猟の腕前を証明していた。
マリーおばさんは玄関で二人を強く抱きしめた。「お互いに気を配るって約束して」と彼女は囁いた。「もし危険になったら…」
「戻ってくるよ」とネルソンは彼女を安心させた。 「これは永遠の別れじゃない。」
しかし、二人が唯一知っていた故郷を離れる時、ローレルはもう何もかもが元に戻ってしまうのではないかという不安を拭い去ることができなかった。




