表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/9

第六章:嫉妬の影

翌朝の仕込み時間。歌恋が作業台に並べた小麦粉の袋の一つに、封が切られたままの袋が混ざっていた。


「……あれ?」


気づいた瞬間には遅く、粉が舞い上がり、歌恋の制服に飛び散った。周囲にいたスタッフたちも振り返る。


「綾瀬、何やってんの?」笹森が不機嫌そうに声をかける。


「い、いえ……すみません、私がちゃんと確認しなかったので……」


慌てて後始末をする歌恋の様子を、厨房の奥から浦部が静かに見ていた。


誰も気づかなかったが、粉袋の封を緩めていたのは浦部だった。


「ちょっと確認すれば分かることなのにね。やっぱり詰めが甘いんじゃないの?」


その一言に、歌恋は何も言い返せなかった。周囲も何となく空気を察し、話題を逸らすように別の作業に戻っていく。


浦部はただ静かに成形台へ戻り、無表情のままクロワッサンの成形を続けた。


その指先は、少し強く力が入りすぎていて、生地がわずかにひしゃげていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ