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NTRはクソである


「血液操作ができない?」


僕はアルベールさんの言葉がうまく理解できずに聞き返してしまった。


「ど、どういうことです?」


思わず間抜けな声が出てしまう。

吸血鬼なのに血液操作ができないということかな。


「そのとおりだよ。私は血液操作ができない。といっても体外の血液操作だけだけどね」


その通りだった。

しかし、体外の血液操作ができないとは?


「元々は体外の血液も操作できたのだが、陽の光の元を歩けないというのは、なかなかに厄介でね。だから吸血鬼の最大の強みである体外での血液操作を手放したというわけさ。体内、又は血液がある程度つながっていて、霊力が十分流れるならできるけどね」


「ま、待ってください。ちょ頭が……」


「ああ、すまない。再生能力のことだろう?そこは大丈夫さ。普通の吸血鬼よりも弱いが、再生は可能だよ」


「そっちじゃなくて。なんで陽の光の元活動できないから、血液操作手放そうってなったのかがわかりません。関係なくないですか?」


「ん?あれ、『奉納』を知らないのかい?」


「ほうのう?山梨の郷土料理?」


「それは『ほうとう』だね。奉納だよ。奉納」


「すみません、分かんないです」


アルベールさんは少し首をかしげてから、説明を始めた。


「じゃあ、教えてあげよう。『奉納』とは異能力者が瞬間的、又は永続的に異能や霊力なんかを大幅に強化することができる異能力者の根源的なシステムさ。しかし、代償としてそれに値する”何か”を支払わなければならない。私の場合、陽の光の元を活動できるというメリットを得る代わりに、血液操作という吸血鬼の最大の強みを失ってしまったと言うわけさ」


なーんか呪術◯戦の縛りみたいだな。

というか、この作品自体が暁が呪術廻戦好きで考えたもんだから寄ってしまうのも無理ないよな。

許せ単眼猫。


「しかし、奉納にはリスクも存在する」


「リスク?」


「奉納をする際、極稀にその術者の意識が何者かとリンクすることがある。それが問題なんだ。奉納して、それと偶然リンクしてしまった者は皆、口々に「彼女は我々を視ている。彼女はあいつを探している」と言っているんだ」


「あいつ…?」


「彼女とは誰なのか、何が目的なのか、なぜリンクするのかなどは全く分かっていない。故に奉納をするものはほとんど居ないな。居たとしても切羽詰まった状況下のみだ」


「なるほど……」


「おっと、話が長かったね。いやはや年を取ると話が長くなってしまうな。さぁ、私に構わず、君は第一部隊を見学したまえ」


明らかに僕よりも年下の見た目で自分のことを老人と言っているアルベールさん。

僕は後ろで氷室先輩が腕時計に指をトントンしているのを見て「すみません、失礼します」とだけ言って、その場を離れた。

その後、黒谷さんや氷花さんに第一部隊を案内してもらった。

特に面白みもなかったし、他の隊とそこまで変わらなかった。

僕達が第一部隊を案内してもらっている最中、アルベールさんも第一部隊専用訓練場を歩いて見て回っていた。

隊員たちはビクビク怖がって、真面目に筋トレとかをしていた。

イメージで言うと、授業参観で親が自分のノートをちらっと見ているときみたいな感じだった。

そして、特に何もなく見学は終わった。

しかし、終わって「さぁ終わったから帰宅するかー」って成っていると、千弘がアルベールさんのもとへ行った。


「どうしたんだろあれ」


僕が半分独り言、もう半分は美玲に問いかけるように声を出す。


「コンポタとお汁粉どっちが出るかな―」


美玲は自動販売機のコーンポタージュとお汁粉のボタン両方に指を当てて押そうとしている。

何してんだこいつ。


「今、夏だぞ」


「チッチッチ、分かってないなぁ塁くんは。暑いからこそ暑いものを飲む。これこそ夏の風物詩でしょ」


「ごめん、全然わかんない」


「冬にアイス食べたくなるでしょ?」


「たしかし」


僕は気に食わないけど、納得してしまった。

美玲は両方のボタンを同時に押す。

自動販売機からゴトン!という音が聞こえてくる。


「酷暑こそ 辛きラーメン 啜りけり。どうよ?」


おそらく今作ったであろう俳句を言いながら、出てきたコンポタを手に取りながら、決めポーズを取る。


「コンポタじゃん。ラーメンちゃうやん」


「そこは良いんだよ。というか、この次期にコンポタ置いてある自販機って珍しいね」


すると僕の後ろから氷室先輩が出てくる。


「ここの人、皆結構変わってるからね。年がら年中熱いものしか飲まない人もいるし」


「ほらね!やっぱり分かってる人もいるんだよ。通だね~」


「多分そういう意味じゃねぇだろ」


氷室先輩が言ってるのは異能とかじゃねぇのかな。

僕と美玲が言い争っていると、僕の方にチョンチョンと指が当たる。

それに反応し、僕は後ろを向く。

するとそこには千弘が立っていた。

というか、この会話千弘から生まれたんだった。


「おう、どうした?」


僕がそう言うと、千弘は「いや、全然大事な用とかじゃないんだけどね」と言う。


「ちょっとこの後、アルベールさんと用事があるから先に行っててもらおうと思って」


千弘はなんだか表情が暗い。


「? おう、そうか。……大丈夫か?」


「えっ…いや、なんでもないよ。僕は大丈夫だからね」


そう言って千弘は明らかに作られた笑顔を見せる。


「止めて!!これでアルベールさんが坊主で目元が暗くなってて見えなかったら、僕死んじゃうから!!!!!!」


「え、ど…どうしたの?大丈夫?」


「大丈夫じゃない!!戻ってきてね!僕待ってるから!!!絶対に口元に毛なんて付けて帰ってこないでね!!!!!」


僕は泣きながら千弘の足元に縋り付く。


「だ、大丈夫だよ。少しお願いしたいことがあるだけだし、ちょっと時間はかかるかもしれないけど…。それにアルベールさんだよ?いい人だし、強いし、心配ないって」


「ああ、言われてみればそうだな。お前男だし」


「それ、関係ある?」


千弘はジト目で僕のことを見ながら首をかしげる。


「いや、なんでもない。行って来い」


「……うん、またね」


そうして、僕は千弘と別れ、蓬野高校メンバーと帰宅した。


それから数日、千弘は学校を欠席した。


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