イキがるだけの強さじゃ、ワシはに勝たれへん!
「では、第一部隊の案内をしようか」
僕たちは黒谷さんに言われ、第一部隊を案内されることになった。
そのため、黒谷さんの後ろをついていこうとすると、ちょうどそのタイミングで第一部隊専用訓練場のドアが開かれる。
「んあ?」
振り返るとそこには、信じられない光景が広がっていた。
「理様、寝癖が立っておりますよ」
そう言って男の頭を優しく、そしてどこか好意のある視線で見つめながら髪の毛を触る青髪のメイド服を着た女の人。
胸元をさらけ出すような格好で、男の左側に立っている。
パイオツはデカい。
「ご主人!ここ、すんごい大きいね!」
はしゃぎながら中心の男の腕を掴んでいる少し身長が小さなピンク髪の女の子。
かわいい系と美人系の中間のような見た目をしている。
こちらも胸を強調するようなぴちぴちの服が見え隠れしている。
パイオツはデカい。
「ちょっと、ご主人様の隣は私。どいて」
はしゃぐピンク髪の子を退かして右側を取ろうとする紫髪の少し褐色な女の子。
パイオツは…普通。
「ちょっと、何勝手に決めてるのよ。理様の隣は私よ」
後ろで二人を窘める金髪の女の人。
これも胸を強調っつうか当てている。
パイオツはデカい。
「ははは、みんなそんなに取り合ったって俺はどこにも行かないよ」
そして中心で気色の悪い笑みを浮かべながら皆を宥めるのは。
「「理様……♡」」「ご主人……♡」「ご主人様……♡」
波月理である。
(僕は何を見せられているのだろう)
心の中が殺意で満たされる。
奥底ではなく、表面まで殺気で満ち溢れている。
おそらく僕が大怪獣とかなら、町をいくつか壊滅させるほどに。
すると波月はこちらに気付いたのか、僕の姿を見てあきらかに目つきを悪くする。
「お前は…!」
僕のほうも波月を見下すように顎を突き出し、波月を睨む。
「? ご主人。誰ですあいつ」
ピンク髪の子が僕のほうを指さして波月に質問する。
すると波月は少し声のトーンを落として機嫌が悪そうに答える。
「こいつだよ。さっき言った僕のことを卑怯な手で痛めつけたクソ野郎は……!!」
「「「「こいつが……!」」」」
波月が方眉をあげて僕を睨みながら周りの女たちに僕について言った瞬間、その四人の女たちは僕に敵意を向ける。
「まぁまぁ、俺はそんなこと気にしてないさ。凡才が天才に勝つためには卑怯な手を使うしかないのさ。つまりこいつは皆の前で「自分は卑怯な手を使うことしかできません」と喧伝しているようなものだね」
こちらを嘲笑うように四人に言い聞かせる波月。
「おいおい、黙って聞いてりゃ好き勝手言いやがって。あの時の姿が卑怯な手だぁ?あれは僕の本気の状態だ。卑怯も糞もねぇよボケ。そんなに負けを認められないんだったら異能でも使えばいいじゃねぇか」
僕が波月に少し近づいて言うと、周りにいた四人が一斉に武器を抜く。
「おい下郎。理様を愚弄するな」
「そうだぞ。これ以上ご主人の侮辱は言わせん」
「ご主人様の悪口言うやつは…殺す……!」
「死にたいようね。身の程知らず」
武器を体のあちこちに向けられた僕は両手を軽く上にあげる。
(そんな一斉に来るんだ…ちょっとびっくりしちゃった)
しかし僕は焦らずに静かに笑みを浮かべる。
四人は眉をひそめ、「何が可笑しい」と言う。
「いやぁ…そんなに武器近づけていいのかなって思ってさ」
「「「「!?」」」」
「カゲロウ」
僕が一言そう言うと、足元の影が広がり、四人が手に持っていた武器をすべて奪い取る。
「っな!!」
「これはっ!?」
と四人は想像通りのリアクションを取る。
一方僕は。
「ったぁ!っもう、取るときはもうちょっと慎重に取ってよ!ちょっとほっぺ傷ついたじゃん」
「すんません」
ちょっとしょぼくれながら武器を影の中に飲み込むカゲロウ。
武器を奪われた四人の女たちは悔しそうに波月のもとへ戻る。
「ご主人、申し訳ございません。武器を奪われてしまいました……」
「いいさ、卑怯な手を使ったとはいえ、一度俺に勝ったんだ。そう易々とやられるわけがない」
「ってめぇさっきから卑怯な手とか言ってるけど、普通にイキがってたから負けたんだろうが!!なぁーに自分の敗因押し付けてんだよ」
僕は心の中で(イキがるだけの強さじゃ、ワシはに勝たれへん!)と言う。
分かんねぇ奴は電王の9話見てこい。
「っは!忘れるな。今の俺は異能の使用を制限されてないんだぞ?その状態で君に勝機はあるのかな?」
「っへ!やってみろよボケが!」
僕が威勢よく言うと波月は「ふっ…」とキモイ笑い方をして言い放った。
「ま、今の俺が異能使ったら周り巻き込んじゃうし、止めとくよ」
「いや出せよ。そもそもそんな強い異能じゃないだろ多分。前に僕がつぶそうとしたら紙っぽくなってただろ?あれじゃねぇのかよ」
「神か…それも悪くないね」
「言ってねぇよ」




