僕は女性キャラが主人公に負けただけで好きになる展開は嫌いだ
次に、というか最後に来たのは第一部隊専用訓練場。
明らかにほかの隊とは違うことがよくわかる。
まず、扉の前に立った瞬間とてつもないプレッシャーが感じられた。
訓練場の中から響く戦闘音、金属と金属がぶつかり合う音や、よくわからない音まで聞こえてくる。
すると氷室先輩は首にかけた専用カードを手に取って少し動きを止める。
「部隊の数字は強さ関係ないって言ったけど、正直言うと、第一部隊はほかの隊とは戦闘能力が圧倒的に違うわ。第二部隊も強いけど、どちらかというとタンクに近い役割。けど、第一部隊は完全に攻撃役。だから今までとは扱いや雰囲気が違うかもしれないけど、そんなに気にしなくていいからね」
「ちょ、お前タッチ返し無しだって」
「タッチ返しありですー」
「なしですー」
「アリですー」
「死ね!」
「死ね!」
氷室先輩はもう僕たちの扱いに慣れたのか「まぁ、その感じじゃ大丈夫そうね……」とため息をつく。
そして氷室先輩はカードキーを機会にかざす。
すると目の前の重厚感のあるドアが音を立てながら開く。
中に入ると相も変わらず広い空間が広がっていた。
「まぁそんなに変わんねぇな」
すると一番前にいた氷室先輩のもとに一人の隊員が走ってくる。
「鏡花、遅かったじゃない。何してたのよ」
「仕方ないでしょ。私が案内しないとみんなわかんないんだから」
氷室姉だ。
やっぱり二人とも美人だよなぁ。
だが、美人という要素だけなら許せるが本性を知ってしまった僕はもう氷室家のお二方にはもう興奮はしない。
最近は千弘に興奮してきてしまっている。
不思議だなぁ。
僕は感慨深い表情で千弘の頭をなでる。
「ん?どうしたの?」
「いんや、ちょっとな……お前が一番ヒロインしてるな~って」
「どういうこと?」
「いや、わからなくていいんだ。この世にはわからないほうが幸せなこともあるんだよ」
「?」
かわいいなぁ。氷室先輩と違って。
僕がそんなことを考えていると氷室姉がこちらの存在に気付く。
「げ…あんたなんでいるのよ……」
「僕に言われても」
「そう、じゃあ帰りなさい」
「無理―サファリパーク」
「富士サファリパークみたいに言うな」
よくわかったな。
最近の子は富士サファリパークわかんないのかなぁ。
ジバニャン分かんないくらいだしそうなんだろうな。
悲しいね。
「塁君、誰あれ?」
美玲が小声で僕に質問する。
そういえばこいつらは初対面だったかな。
「氷室先輩のお姉さんなんだって。僕もそんぐらいしか知らない」
「氷室氷花。ここ第二部隊で副隊長をしているわ。よろしく」
そっけない態度で軽く挨拶を済ませる氷花さん。
美人なのに目つきが悪いからもったいないよなぁ。
「で、何しに来たの?」
「いや、何しに来たのって言われても。見学ですよ見学。アルベールさんに言われてないんすか?」
「見学ぅ?……あ、そういえばそんなこと言ってたわね」
「毎度毎度思ってたけど、なんでみんな忘れてんだよ」
「言われたの二か月以上前だからそんなこといちいち覚えてないわよ」
「銅修さん覚えてたじゃん」
「あの人ああ見えて結構まじめで、いろいろと予定メモしてんのよ。あの図体で早稲田卒らしいし」
すんご。
「じゃあそういうことなんで、見学させてもらいますよー。そういや第一部隊の隊長さんは?」
「隊長なら今飲み物買ってきてるわ」
「ほーん」
じゃあどうすんのさ。
あ、氷室先輩に案内してもらえばいいか。
「じゃあ、私が案内してあげるわ」
「……は?」
「は?じゃないわよ。私が案内してあげるって言ってるのよ」
何言ってるのこと人。
いやに決まってんだろ。
「いや、結構です」
「なんでよ!!」
「初対面で斬ろうとしてきたやつに案内任せられるかよ。自分のこと殺そうとしてきた殺人鬼が、道案内してやるよって言ってるようなもんだぞ。絶対なんか企んでる」
「チっ!!」
舌打ちしたこの人!!
やっぱなんか企んでた!!!
「じゃあもう素直に言うしかないわね。神白塁。あんたに決闘を申し込むわ」
「決闘?」
「そうよ。あんたが鏡花にふさわしいか見てあげるのよ」
何言ってんのこの人。
「ちょ、ちょっとお姉ちゃん…!」
氷室先輩もなんか顔を赤くしている。
はっはぁん、なるほどなるほどイグアノドン。
「どうせあんた僕のこと殺す気でしょ」
「そんなことないわよ」
「だってここ第一部隊でしょ?そしてあんたは第一部隊の副隊長。小細工するにはいい環境だ」
「大丈夫よ。じゃああんたの異能の使用を許可しようじゃないの」
あ、じゃあイケるかもな。
「その代わり!私が負けたらあんたは一生鏡花に近づかないこと!!」
氷花さんがそう言うと氷室先輩が「は!?ちょっと待ってよ!」と氷花さんに叫ぶ。
「僕が勝ったら?」
「まぁ素直に褒めてやろうじゃない」
「僕にデメリットしかないんだけど」
僕が意見すると氷花さんはため息をつきながら腕を組む。
「チッ!じゃあわかったわ。あんたが勝ったら私を好きに――」
「よしやろう。今すぐやろう。カゲロウ準備しろ」




