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なんか美玲って今思うと結構クズじゃね?

 

「へーい、追い込みが足りないぞ―」


僕と美玲と橘はラットプルダウンを行っていた。

正確には、橘と美玲だが。

何故かと言うと、僕はすでに二人を圧倒できるほどの回数を終えたからである。


「ぬおおおぉぉぉぉぉ!!!!」


女子とは思えないほどの奇声を上げてバーを引く美玲。

フォームどうこうは初心者のうちはあえて注意しないのがセオリー。

僕は腕を組み静かに見ていた。


「っはっっはっは!!もう腕が限界なのではないか美玲よ!俺はまだまだイケるぞ!!!」


とか威勢よくほざきながら腕に血管を浮かせ、目の焦点があっていない橘。


「お前も死にそうだけどな」


「黙れ!!!!」


必死だな―。

僕だけでなく美玲にすら負けたらメンツ丸つぶれなんだろうな―。

ちなみに上げている重量は70kgだ。

異能の使用はなし、霊力はありでとにかく回数をこなすというシンプルながら、ちょっと僕に不利かもしれないルールだ。

だが300回目あたりで僕は「あ、これそんな全力でやらんでも行けそうだ―」と思い、500回くらいで止めた。

二人は僕が300回目あたりで大体100行くか行かないかくらいで、結構きつそうだったからである。


「にしてもあなた凄いわね。その若さでそこまで行けるなんて見たことないわ」


「普段どういう方法で筋トレをしてるんだい?」


二人が勝負している間、僕は二番隊の人たちと筋トレについて話し合っていた。


「こうやって…カゲロウ」


僕は少し下を見ながら指をクイッとする。

するといつものようにカゲロウが影の中から出てくる。


「「「おお!」」」


「はじめまして皆様。私、主の式神をやらせてもらってい――」


「カゲロウ、式神、身体を変形させて武器になる異能」


「……です」


「「「へー」」」


カゲロウは少し、しょんぼりする。


「それで、どうやって筋トレを?」


「こうやってですね…全身に纏うと質量を上げられます」


カゲロウは僕の全身に纏わりつき、ラバースーツみたいになる。

大丈夫だ。

ちゃんと服の下にだよ?


「質量を上げられるって?」


「まんまの意味です。ちょっと試してみます?」


僕はカゲロウを眼の前の隊員さん(ダニエル)に渡す。

その時、小声でカゲロウに「最初はなるべく軽めでな」と声を掛ける。


「良いのかい?ありがとう!」


ダニエルはカゲロウを受け取り、カゲロウはダニエルの身体にくっつく。


「では、参ります」


「はい!」


すると、カゲロウが質量を上げ始めたのかダニエルの身体が徐々に震え始める。


「お、おお!!」


しかし次の瞬間、ダニエルは膝をついて地面に倒れ込む。


「だ、大丈夫ですか!?カゲロウ!一回止めて!!」


「は、はい!」


カゲロウはすぐに質量を元に戻し、僕の影の中に戻る。


「はぁはぁはぁ……だ、大丈夫。少し驚いただけだ」


「すみません。うちのカゲロウが……」


「私、そんなに重くしてないんですけど…」


「どんくらい?」


「こんくらいです」


カゲロウは一度僕の腕に纏わり、質量を増す。


「あー、確かにそんなでもないな…」


「それでそんなでもないのかい!?とてつもなく重かったよ!?」


「どうしたダニエル?」


「ああ、隊長。実はカクカクシカジカで……」


「なるほど、カクカクシカジカか。俺も試してみたいな」


「どぅーぞどぅーぞ」


また同じようにカゲロウを銅修さんに渡す。

銅修さんはカゲロウを腕に纏わせる。


「では行かせていただきます」


「うむ、どんと来い!」


またも同じようにカゲロウを纏った銅修さんの腕は震え始め、ドンッ!と一度地面に下がる。


「ぬおっ!」


「ほら、やっぱり重いよ!」


どうしよう。

なんか僕がなろう系主人公あるある『あれ、また僕何かやっちゃいましたか?』をしているような…。


「いや、確かに重いが気を張っていればどうにかなるほどの重さだ。問題…ない!」


銅修さんは腕をグン!と上げ、カゲロウを纏った腕を上にあげる。


「筋トレには良い重さだ。この状態で鍛えれば、より強大な筋肉を手に入れられるだろう。やはり凄いな塁は」


「えっへぇ~そうですかね~?」


「何笑ってんの塁くん。キモいよ」


「ああ、気色の悪い笑みだな」


「おいぶっ転がすぞてめぇら」


美玲達は少し息を切らしながら僕の元へと来る。


「そういや、どっちが勝ったの?」


「こいつがズルした」


橘は頭の後ろに手を回し、右上を見ながら口笛を吹く美玲に指を指す。


「ズル?」


「ああ、「一度休憩して飲み物でも飲もう」と言ってペットボトルを差し出して、気が利くなと思って飲んだら酢だった」


「最低じゃん」


「ああ、つまり引き分けだ」


僕は銅修さんからカゲロウを受け取り、影の中に戻す。


「えーもう行っちゃうんですか?もう少し居てもいいと思うんですが…」


「そうだぜ塁。俺達もっとお前の話が聞きたいぜ!」


「腹直筋はどう育てているの?」


僕や他の見学者メンバーが一箇所に集まったことで、二番隊の隊員達が悲しそうな顔をする。


「おいおい、お前ら。こいつらは次の隊の見学も残っているんだ。そこら辺にしておけ。それにもう二度と会えないわけじゃあないんだ。また会ったときにでも話せば良い。すまんな氷室。行ってくれて構わないぞ」


「あぁ、すみません。じゃあ失礼します」


そうして僕達は、第二部隊専用訓練場を後にした。

部屋を出る後ろで銅修さんが「だが、必ずやあの男をうちの隊に入れるぞ―!!!」と大声で叫ぶ声と、隊員さんたちの「うおおおおぉぉ!!!!」という歓声が聞こえる。

悪い気分ではなかった。

というかめちゃくちゃ気分が良かった。


「塁くん何その顔。キモいよ」


「さっきから辛辣じゃない?」


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