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第二部隊見学

結局、勝者は美玲であった。


「っへ!てめぇらジュース奢れよ!あとマンション」


それは普通に無理である。


「貴様のせいだぞ神白塁」


「僕のせいもあるかもだけどお前にも非があるだろ」


「ない」


「あるって。9 : 1くらい」


「1割もない」


「いやいや、お前が9」


「俺が!?」


「2人ともいい加減立ちなよ。すんごい事になってるよ」


呆れ顔で僕たちを見下ろす美玲。

美玲の言う通り、僕たちは今、すんごい事になっている。

僕は上半身がうつ伏せで、下半身がぐるりと回転し、顔のすぐとこまで来ている。

ウルトラ反っている。

橘は僕の逆である。


「やれやれ、あれだけイキっていたのに、その程度ですか」


溜息をつきながらどこか嬉しそうな表情の美玲。

僕たちの目には殺意が籠る。


「というか、最後の方あれなかったら僕の勝ちだったし」


「俺もだ。こいつにぶつかったらか倒れたが、あのまま行けば俺が1位だった」


「それは無い、僕の勝ちだった」


「いやある、俺の勝ちだった」


「僕の」


「俺の」


「じゃあ私の〜!」


「「それは無い。もっと無い」」


「ちぇ!そこは『どうぞどうぞ』でしょうが!」


ここでダチョウ倶楽部するほど僕たちは馬鹿じゃないぞ。

僕と橘は砂を払いながら立ち上がる。

すると飛鷹さんが感心した顔で近寄ってくる。


「いやー凄かったねー。正直うちに欲しいくらいだよ。どう?本当に入る気ない?」


「僕は入ってもいいかなーとは思ってますけど、他の隊も見てから考えないとだし、それに入る隊決めるのってアルベールさんとかですよね?だからまだ何とも……」


「神白塁がそういうのならば俺もそうしよう」


「ほんじゃら私もー」


「そうかぁ……」


ちょっとしょんぼりする飛鷹さん。

僕は少し気まずくなる。


「ま、まぁ考えておきます…」


「ほんと!?やったー!じゃあよろしくねー!」


そのあとも少しなんやかんやあったが、第三部隊の見学は終了した。


      ◇


「次は二番隊っすか?」


僕たちは第三部隊専用訓練場を出て次の見学場である第二部隊専用訓練場に向かっていた。


「そうよ。多分あんたにぴったりな感じだと思うわよ」


「僕にぴったり?」


どういう意味だろう。

僕は少し考えたが、すぐに着いてしまったから考えるのをやめた。

外観はほかの隊と特に変わらなかったが、異様というか、特殊というか、どちらにせよ先程の先輩の言う言葉に僕は納得した。

扉が開き、中へ足を踏み入れた瞬間、耳をつんざくような金属の衝撃音が響き渡った。

目の前に広がっていたのは、訓練施設というより、まるで最新鋭の巨大なジムだった。

広大な空間には、見たこともない複雑な構造をした筋力トレーニング器具が大量に設置されている。

それらは一般的なジムにあるバーベルやマシンよりも遥かに大きく、異能の力に耐えうるよう設計された高負荷の設備であることが一目でわかった。

部屋の一面は、床から天井まで続く巨大な鏡になっており、訓練する隊員たちの姿を映し出している。

そして、そこにいた隊員たちは、一目見て異様だった。

彼らは、日本人だけでなく、彫りが深く体格のいい外国人らしきメンバーも多数おり、肌の色や顔の作りは様々だったが、全員に一つの共通点があった。


それは、その筋肉だ。


皆、薄手のトレーニングウェア姿で、その下にある肉体は、まるで彫刻家が作り上げたような完成度を誇っていた。

一つ一つの筋肉が隆起し、動くたびに黒光りする油を塗ったかのような艶を帯びて波打っている。

彼らが発する霊力や異能よりも、この純粋なフィジカルの迫力が、この部屋の全てを支配しているように感じた。


「な、なんじゃこりゃ……」


僕は目を輝かせながら全体を見回す。


「鉄の楽園じゃあねぇか……!!」


「お、来たか氷室」


僕が思わず本音を漏らすと、とてつもなく身長が高い男の人が話しかけてきた。

見た目はおよそ30代後半といったところで、顔全体には、彼が歩んできた過酷な道を示すかのようにワイルドに整えられた濃い髭が張り付いている。

彼の体は、まさに筋肉の塊という言葉が相応しく、身長は優に2メートルを超える巨体だ。常人なら動くことすら困難なほどの分厚い筋肉が全身を鎧のように覆っており、その皮膚の表面は、訓練場の隊員たちと同じく黒光りするような艶を帯びていた。

その服装は、自身の肉体を見せるためか、あるいは動きやすさを最優先しているためか、シンプルな黒のトレーニングウェアだった。ノースリーブのタンクトップからは、規格外の太さの上腕が露わになっており全身から強者のオーラがビンビンに放たれていた。


「お久しぶりです海良木さん。すみません最近来れてなくって」


「良い良い、そもそもお前は一番隊の隊員だ。それで、こいつらは前に社長が言ってた見学者か?」


低い声で笑いながら氷室先輩と話すかいらぎ?さんは僕たちのほうを見て反応する。


「最近来れてなくって……?」


美玲は少し怪しげな目線を氷室先輩に向けている。

やめろ。多分だけどそういう意味じゃない。


「む?むむ?」


僕たちのほうを見た海良木さんは特に僕に目線を集中させ、少し前のめりになる。

すると突然目を見開いて、笑顔になる。


「お前はあの時の!!」


(え!?何!?ラブコメ展開!?いやだよこんなおっさんと!!)


「あの時のいい筋肉の男か!!!」


(まじか!まさかBLじゃなくG〇Yのほうだったか。すまんがそっちも無理だ!僕はあくまでノーマルだし、ゲイ役ならすでにゲイタがいる!!!)


「えっと……いい筋肉の男?」


僕が恐る恐る声を出すと、海良木さんは「おっと、すまない」と一度引いてから咳払いをする。


「俺の名前は海良木銅修(かいらぎどうしゅう)。この第二部隊の隊長を務めさせてもらっている者だ」

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