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異反者  作者: 二代目とくとくかい
第一部:慚愧服膺篇
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第七話:鹿骨


「大丈夫ですかね…そろそろ終わってもいいころだと思うんですが……」


結界の外では氷室、美玲、そして謎の男が氷室姉と累の戦いを待っていた。


「大丈夫かな累君」


美玲は謎の男に聞こえないように小声で氷室先輩に聞く。


「お姉ちゃんが相手だから…正直勝てるかどうかは分からないけど、累君のあの動きを見た感じ、しばらくは耐えられるくらい強いと思う。だから大丈夫よ」


氷室は心の中で(下手したら、お姉ちゃんを超えるくらいに…)と呟いた。


「そうなんだ。ていうか、あの人誰?」


美玲は結界を眺め、氷室姉を心配する謎の男に指をさす。

すると、指をさされたことに気がついた男が美玲に向き直す。


「おっと、そうでした。自己紹介がまだでしたね。僕…私の名前は空蹴将仁(からけりまさひと)と申します」


「おう、分かってんじゃねぇか。まったく最近の奴は目上の人に敬語も使えないやつからなー。あ、私は美玲ね」


美玲は敬語で自己紹介をしてきた空蹴に腕を組んで偉そうに答える。


(あ、あんま関わっちゃいけないタイプの人かも)


「で、二人はどういう関係?(つが)い?」


美玲は速攻で話題を切って、とんでもないことを聞いてくる。

そのせいで二人は思考が停止したように固まる。


「ちょっと僕、氷花さん見てきますね」


「おい、待てや。番いかって聞いてんだよ」


空蹴が何事もなかったかのようにその場を離れようとすると美玲が裾を掴んで詰め寄る。


「いやっ…初対面で…そういうことはッ…!」


空蹴はそれを無視してそのまま行こうとするも、なかなか動けない。


「まぁまぁ、良いじゃん。アレか?体だけの関係ってやつ?氷室先輩も隅に置けないね~」


「私っ!?」


「あ、もしかしてさっき結界(あの中)入ってた人と?そういや、どことなく誰かに似てたような……」


美玲は掴んでいた裾を放し、空蹴は勢いのまま地面に倒れる。


「いや、空蹴さんは独身だし、さっきのは私のお姉ちゃんね。誰かに似てたって私しかいないでしょ」


「じゃあさっきカっちゃんが言ってた氷花さんって氷室先輩のお姉ちゃんなんだ」


「カっちゃん?」


空蹴が起き上がって復唱する。


「うん、カっちゃん」


美玲も同じように口に出しながら、空蹴に指をさす。


「あ、空蹴(カっちゃん)?」


「だからそうだって」


「はぁ……。え、僕もう行っていいですか?」


「? 良いけど」


空蹴は内心で(面倒くさいなこいつ)と思いながら結界まで歩いて行った。


「………行ったわね。はぁ、にしても本当に大丈夫かしら。累君もお姉ちゃんも」


氷室は空蹴がある程度離れてからため息をついて独り言つ。


「僕は大丈夫っすけど、お姉さんはよく分かんねぇっす」


「そう…ん?」


氷室は首を後ろに回す。

すると、そこには結界内にいるはずの累の姿があった。


「え!?ちょ、いつ戻ったの!?」


「今さっきですけど」


氷室は驚きながらも累に尋ねる。


「あ、そ…そう。えっと…色々聞きたいことあるんだけど、とりあえずお姉ちゃんはどうなったの?」


「なんかしばらく体が痺れて動けないらしいですけど、命に別状はないらしいっすよ。大きい怪我もなさそうでしたし」


「つまり…勝ったってこと?」


「フッ…」


累は小さく笑いながら髪をかき上げ、よく分からないポーズをとる。


「ああ、うん。勝ったのね」


「へー累君ってこういう見た目してたんだ。ちゃんと人間だね」


氷室先輩が冷めた表情で累の意図を読み取る。

すると、美玲がひょこっと顔を出して累の頭から爪先までをじっくりと眺める。


「そりゃ人間だし」


「そっか、ちゃんとホモサピエンスか。それでねー聞いてよ。氷室先輩とカっちゃんって番いらしいよ」


「ごめん、ツッコミどころ多すぎるから一つづつ言ってくけど、話題転換で『それでね』は接続詞としてあってるのか?それとカっちゃんって誰?」


「さっきの男の人」


累は(あ、あんま関わっちゃいけないタイプの人かも)と考える。


「ていうか、番いってどういうこと?今のJKってそんなお盛んなの?」


累は氷室先輩に切り替える。


「なわけないでしょ。勝手に一人歩きしてるだけよ。それより、あんたどうやって結界抜けてきたのよ」


「え?普通に抜けれましたよ。セキュリティがばがばでしたよ」


累は平然と答える。


「ガバガバって、累君も隅に置けな――」


ニヤニヤしながら累の言葉に反応する美玲を累は適当に押しのける。


「変ね…創城さんの結界だから、生物なら抜けられないと思うんだけど………」


氷室先輩が顎に手を当て、ブツブツと独り言を呟きながら考え事をしていると美玲が「ねぇねぇ」と累の肩をつつく。


「ん?なんだ、ウンコか?」


「ううん、それは朝済ませたから良い。それよりさ、学校ってどうするの?もう結構時間経ってるけど」


「「あ」」


後日談というか今回のオチンチ――――ごめんなさい普通にやります。

その後、結局入学式には間に合わず、僕と美玲は学年主任に苦笑いされ、学生証やら何やらを貰って帰宅した。

氷室先輩は色々な先生にすんごいペコペコしてた。

僕と美玲がそれを真似してたら、すごい怒られた。

やれやれ、短気な女はモテねぇぜ?


    ◇


「な、なんですか。この有様は……」


空蹴将仁は結界内の光景を見て絶句する。

巨大な氷塊の数々に、ボロボロな民家、そして、最も巨大な氷塊のすぐそばには体を震わせながらゆっくりと立ち上がる氷室氷花の姿。


「だ、大丈夫ですか!?」


「くッ…!そろそろ…体が上手く動かせるようになってきた…わね……」


空蹴はすぐに駆け寄り、氷室の肩を持つ。


「何があったんですか…?」


「油断した……。それに、鹿骨(あいつ)…奥の手をまだ隠してる……」


「それだけ…強かったと……?」


「…………」


空蹴が体を支えながら聞くと、氷室は残っている霊力を沸々と逆立たせる。


「あいつは間違いなく災禍級には分類される……!逃げられたからには、また何かをするかもしれない…!鹿骨と黒い翼…この特徴を『クレイル』で回して……!」


「……分かりました」


氷花は右手の拳を強く握りしめた。

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