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数秒先の未来見れるって強そうだけど、微妙だよな


「未来視ぃ?」


「ああそうだ」


なにそれめっちゃつえーじゃん。

そう思うしかなかった。


「じゃあさ、宝くじとか競馬とかのギャンブル当て放題じゃん!」


「そうなってくれたら俺も嬉しいんだけどな…」


あ、この感じはなんかデメリットもあるって感じか。

いいぜぇ聞いてやるよ。


「まず俺の異能『焦点観測』は意識を集中させた特定の対象、例えば物とか人とかだな。に限定して、その対象が辿る未来の軌跡を最大で約10秒間観測する異能だ」


ははーん視れる時間があるわけね。

そりゃ宝くじは無理だわ。


「この能力は、対象自身が持つ要素によって引き起こされる未来のみを視覚化できる。運動神経、思考パターン、既定の物理法則とかだな。……つってもよく分かんなそうだな」


うん、僕もよくわかんないのに美玲が理解できるわけない。

すると星野さんは首をコキコキ鳴らしながら指をクイッと曲げる。


「まぁ鯛も鮃も食うた者が知るってことだ。面倒くさいからいっぺんに来い」


そう言う星野さんを見て、僕と美玲は顔を合わせる。

そして一気に星野さんへ向かって攻撃を開始する。


「ドゥラ!!!」


まずは美玲の右ストレート。

それを予測したかのように美玲の動く前に避ける軌道に入る星野さん。


「ッ!!」


そして美玲の左脇腹に掌底を喰らわせ、美玲を吹き飛ばす。


「ゴゲェ!!!」


「僕も居るんだけどな!!」


そこで僕も参戦する。

思いっきりジャンプして星野さんの視界から一気に外れる。


(よし!多分だけど未来を見れるのは視界に入っている物のみ。ってことは視界外から攻撃すれば…!!)


「まぁ、そう来るよな」


「ッ!!」


「オラアァァァ!!!!」


そこで吹っ飛ばされた美玲が思いっきり飛び蹴りを星野さんに叩き込もうとする。

しかし、星野さんはそれも軽々と避け、美玲の足を掴み僕の方へと投げつける。


「どけえぇぇ!!!」


「僕が言いたいわハゲェェ!!!!ドゥビ!!!!」


僕と美玲は互いに空中で衝突し、一度少し上昇する。

が、やはり重力には逆らえず二人で一緒に落下する。


「あ!!」


落下している最中、僕の眼に写ったのは地面に靴を置く星野さんの姿。

設置し終えると星野さんはそこから少し離れ、右足を伸ばす。


「カッ!!!」


「ごへぇ!!!」


僕は置いてあった靴に額を強打し、美玲は後頭部を地面にぶつけたかと思ったが、星野さんが伸ばしていた足の先がクッションとなり、そこまでではなさそうだ。


「大丈夫?一応女の子だから怪我しないようにしたけど…」


「ぐおぉぉ…!!ココアも美味しいのにぃ……!!!」


「大丈夫そうだね」


僕は声も出せずに額を手で覆い、うずくまっている。


「てか塁くん重すぎ!全然動けないんだけど!!!」


まぁ筋肉力が異次元だからな僕。


「まぁこれでわかったよね。俺は未来が観測できるから大体の攻撃は意味ないよ。隊長任される人たちは大体皆霊力多いから、俺も割と多いんだよ。だから観測できる未来に追いつけるだけの速度と技量もある」


僕達はよろよろと辿々しい足つきで立ち上がる。


「累くんもココアは美味しいと思うよね?」


「僕もどっちかって言うとバニラかな。ココアちょっと苦いし」


「だよねー分かる」


僕と星野さんは気が合うようだ。

にしてもすげぇな。僕達が落ちる場所まで見えてるとか。


「正直、その異能が最強っぽいけどなー」


僕が頭をかきながら言うと星野さんは「そうでもないよ」と否定した。


「社長や一番隊、二番隊の隊長、副隊長らは起こり得る可能性が一秒とか二秒とかでも多いんだ。ああ言ってなかったけど、観測できるっつっても一つの未来だけじゃないんだ。観測区間が伸びるほど、映像は不鮮明になり、複数の可能性の残像が重なって見えるんだ」


「「どゆこと?」」


「そうだなぁ……例えば、お前…えっと……」


「塁です」


「そう塁。お前って50m走何秒だ?」


えっと、確か……。


「3.42」


「速いな……まぁそんぐらいの疾さだと10秒以内に結構な可能性が観測可能だ。俺に突進する可能性、その子と同じように右ストレートを打ち込んでくる可能性、逆の左、右蹴り、左蹴り…と様々だ」


「………」


そこまで言ったら右肘、左肘、交互に見て♪も言えよって思ったが僕は口には出さない。


「正直お前一人の方が怖かったな。お前の未来は1秒先でも6つあった。そん中でも一番可能性が高いものへの対処を行っただけだ。俺は」


「………」


ちょっと嬉しいなこういうの。

僕だけ特別みたいな感じの雰囲気。嫌いじゃないね。


「アルベールさんとかも多いの?」


僕はちょっと調子づいて聞くと星野さんは平然と答えた。


「ああ、大体一秒間に78くらいだな。といってもその全てに俺は反応できないから負ける可能性しか観測できねぇけど」


聞くんじゃなかった。

つーかどんだけ強いんだよあの人。


「と言っても本気でやられたら一つに収束するけどね」


「一つに収束?」


「ああ、確実な可能性は一つに収束するもんだ。例えばそうだな…空腹のライオンの檻の中に赤ん坊をぶち込むとするだろ?するとどうなると思う?」


僕はひっかけかなと思い、少し考えて結論を出した。


「…食われる」


「そう。他の可能性なんて必要ない。殺す。前足を赤ん坊に振り下ろすという選択肢しかないのなら、可能性も一つだけしかない。社長なんかは俺を殺そうとすれば一つの動きだけで十分なんだ」


そんな強かったんだあの人。

今度からちゃんとした敬語で接しないと首飛びそう。


「けど、別の可能性もある」


「別の可能性?」


「第三者からの介入だ。俺の焦点観測は見ようとした対象の可能性しか見えないからな。さっきのライオンの話だと、急に檻の中に銃持った男が入ったらライオンは殺られるだろ?そういう予測できないような事は観測できないんだ」


「じゃあアルベールさんにぶっ殺される可能性が見えても他のもっと強いやつが助けてくれたら未来も変わると?」


「そういうこと。けどあの人相手にできる奴なんてほとんどいねぇけどな。でも一秒で6つの未来が観測できるやつなんてほとんど居ねぇからな。お前も十分すげぇよ」


あ、好き。

こういうアドバイスをしつつ褒めてくれるタイプの人って良いよね。


「私はー?」


美玲が声を上げると星野さんは表情を変えずに答える。


「うん、お前も凄いと思うがもう少し動けると良いな。とりあえず考えなしに動くのはやめよう」


「はい…」


美玲がしょんぼりしながら肩を落とす。

っへ!

すると星野さんは左腕につけている時計を確認し、少し慌てた様子になる。


「っと、すまんな。ちょっと用事があるから出るわ。後は…えっと、あ!そうだ。あそこにいるツンツン頭の奴に聞いてくれ。じゃ」

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