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鬼の子

「おほん!私はクレイルの大八部隊隊長、久我山奏です!異能は『百獣使役』!動物を操ることができるのです!」


にぱっと可愛い笑顔で言う奏ちゃんに僕はそんなわけないだろと言う目線を送る。


「……信じてませんね?」


「え?いや、そんなことは……」


「信じられないのなら……どうぞ!」


奏ちゃんは肩にかけている小さな斜めがけカバンからカードを取り出す。

渡されたのは保険証であった。


「ん?なんだこれ」


そこに書いてあったのは1998年生まれの文字。

えっと…つまり………。


「え!?27!?嘘ぉ!!!」


「これで信じましたか?」


顔が固まっていると奏ちゃんは僕の手から保険証を取って鞄の中にしまう。


「そんな…いや……まさか……!!」


「最初は私も信じられなかったわ。けど、本当に27なのよ。この見た目で」


「この見た目でとは!?」


氷室先輩の言葉にすごい反応する奏ちゃん。


「どう見たってないすばでぃのお姉さんでしょ!」


ナイスバディかは人にもよるが一般的にはナイスバディじゃないだろ。


「はぁ…まったくこれだから最近の若者は…ぶつぶつ……」


ゴニョゴニョと何か言いながらしゃがみ込んでしまう奏ちゃん。

しょげちゃった。

どうしようかと悩んでいると、僕はあることを思いつく。

僕はおもむろにポケットの中を弄り、手のひらに小さく丸い物体を取り出し、奏ちゃんに差し出す。


「あの…良かったらいります?」


差し出したのは美玲が暴れた時用の飴玉。


「わーい!やったー!!」


それを受け取った奏ちゃんは嬉しそうに飛び跳ねる。

その様子を見て僕は改めて氷室先輩に聞く。


「本当に27歳?」


「のはずよ」


奏ちゃんは飴玉を舐めているとそれを見守る僕達の視線に気づき、また咳払いをして隊長感を出す。


「おっほん!ではまず貴方がたの名前と異能を聞きましょうか」


美玲たちもこっちに来たところで奏ちゃんは僕達に問う。


「神白塁、異能はなし。というか霊力なし」


「朝倉美玲、異能はよくわかんないけどなんかモノノケ倒せる。お腹すいた」


何いってんだお前。


「えっと、東雲千尋。同じく異能なし。好きな食べ物はサヤインゲンのごま和え」


美玲に釣られなくて良いんだぞ千弘。


「寺岡稽太だ。異能に名は持たんが、シンプルに霊力のエネルギーを自由に操れる」


名前無いんだそれ。


「佐倉琴音です。私も異能は無いです。よろしくお願いします」


一番まともと言ってもいい挨拶であり、面白みのない挨拶をする佐倉先輩。

一通り言い終わった後に皆の視線が氷室先輩の方へ向けられる。


「何よ。私は良いでしょ。そもそもクレイルの隊員なんだから」


「そういえば僕氷室先輩の異能詳しく知らないんすよね」


「私もー」「ぼくもー」「俺は特に興味ないが聞いておいて損はないだろう」「じゃあ私も」


「あんたら……」


氷室先輩は頭を抱えながらため息をつき、話し始める。


「じゃあ改めて説明するわね。私の異能は『索敵』。半径200m圏内の「霊力」又は「生命反応」を探し出すことができる。けど、微弱過ぎる反応はできないわ」


先輩は概要だけだが、端的に自身の異能について説明した。

僕と美玲でも理解できるほどに。


「ほんで、奏ちゃんの『百獣使役』ってのは?」


「奏ちゃんって…まぁ良いですけど。私の百獣使役も結構シンプルですよ。こうやって――」


少し顔を赤らめながら説明をは始める奏ちゃんは、人差し指と親指で輪っかをつくり、口に当て口笛を吹く。

すると周りにいる犬猫達が一斉に奏ちゃんの方を向き、こちらに走ってくる。


「わわわ、何だこりゃ」


足元を小動物たちが埋める。


「ああこらこら。ピー!」


もう一度口笛を鳴らすと、皆その音に反応し、少し離れたところで整列をする。


「こんな感じで動物を自由に操れます。操れないのは特に無いですが、」


うーん、これ結構強くね?

昔、師匠との修行で熊と戦わされたことあったけど、力めちゃくちゃ強かったからな。

倒したけど。

確かにこれだけ強力な異能なら隊長にもなれそうだ。


「私の異能はこれくらいで……次は、うちの子達を紹介しましょう!おいでーヒヅキちゃーん、タケルくーん」


奏ちゃんは部屋の隅で筋トレをしている二人を呼ぶ。

呼ばれた二人は筋トレを中断し、小走りでこちらへ来る。


「紹介します!うちの隊の力役、鬼の叢雲緋月ちゃんと荒神猛くんです!」


緋月ちゃんとやらは奏ちゃんの横で腕を後ろに回して直立している。

身長が高く、その場にいるだけでとても威圧感がある。

まず目を引くのは、腰の上まで真っ直ぐに伸ばされた艶やかな黒髪のストレートヘア。

整えられた前髪の間からは二本の鋭い角が生えており、その角は、周りの肌の色よりも一段と濃い、深紅の色をしている。そして、全身を覆う肌は、微かに赤みがかっていて、その姿は鬼を彷彿とさせた。

さらにレディースの女番長が着るような、刺繍の施された特攻服風のセットアップを着こなしていて、モデルのような高身長と相まってとても雰囲気がある。


「んだぁ?人間じゃねぇか。うちの隊は殆どが人間以外で構成するんだよ。人間みたいな貧弱な生物はお断りだ。ヒョロっちいしよ」


口調とは裏腹に、少し高い声で睨んでくるのは猛くんとやらか。

猛くんは「触るな」と言わんばかりの荒々しい雰囲気を放っていた。

額のちょうど中心から生える一本の短い角が前髪を押し分けていて、その前髪の隙間からは鋭い目つきの瞳が覗いていた。

口を開けば、通常の人間とは異なる鋭いギザギザの歯が見える。

その威圧的な態度と凶悪な外見に反して、彼の身長は驚くほど低い。

高身長の緋月と並べば、その体躯の小ささが際立ち、まるで吠え猛っているが、どこか頼りないチワワのように見えてしまった。


「おいおい聞いたか?美玲。僕のことをヒョロっちいだそうだ」


「止めてあげなよ塁くん。きっとボケてるんだよ。ツッコんであげよう?」


「「ゲヒャヒャヒャヒャヒャ!!!」」


僕と美玲は猛のその態度を見て、汚い笑い方をする。

すると猛も目つきをさらに鋭くし口を開く。


「んだとゴラァ!人間ごときが舐めてるとぶっ飛ばすぞ!!」


「やってみろよヴァーカ!」


僕が猛を見下すように見てると僕の顎に拳がクリティカルヒットする。


「がぼげぇ!!」


そのまま僕は壁まで吹っ飛び、地面にうなだれる。

あれ?何が起こった?

ぼやける目で先程居た場所を見ると拳を握りしめる緋月の姿が見える。


「番長を愚弄するな!!」


緋月が僕に向かってすごい剣幕で叫ぶ。

最近僕吹っ飛ばされ過ぎじゃない?

僕は腕だけを動かし、頭に2~3回掌底を食らわせ、立ち上がる。


「乱闘かぁ?いいぜ殺ってやるよ」


僕が飛びかかろうとすると、間に割って入ったのは猛。


「おい!邪魔すんな!俺の戦いだ!!」


「む…しかし……」


「うるせぇんだよもう!いい加減俺から離れろ!いっつもガキ扱いしやがって!」


「が…ガキ扱いなんて…そんなこと……」


「もう良いわ!」


そう言って猛はその場から足音を鳴らしながら去る。

僕はその様子を黙って見ていた。

すると突然緋月が僕の方を凄い目つきで睨む。


「お…お前のせいだ!お前のせいでこんなことに!!」


「いや、なんでなんでなんで?」


明らかにお前がガキ扱いしてることにキレてんだからお前のせいだろ。

それに最初に喧嘩売ったのは猛だろ。

しばらくの間、緋月はどうしたら良いのかわからない様子だったが、すぐに猛の方へ走っていった。

僕も奏ちゃんのところまで戻る。


「何だったんスカ?あいつら」


「うーん…思春期?」


そっか思春期か。

確かにガキ扱いしてる感はあったしな。


「姉弟とかなんすか?」


「ううん、幼馴染なんだって。昔はよく猛くんが緋月ちゃんを守ってたらしいんだけど、時が経つにつれて緋月ちゃんの方が大きくなって、いつしか猛くんが守られる側になっちゃってたらしいよ。それが気に食わないんだって」


生意気な野郎だ。

緋月ちゃんは結構顔立ちが良いから、自分を守ってくれる不器用幼馴染ってところか。

イイネ。

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