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第五部隊


「本当に良かったの?すごい悲しそうな顔してたけど…」


佐倉先輩は氷室先輩の後ろから声をかけた。


「良いのよ。あの人優しくしすぎると面倒くさいくらい絡んでくるから。人に飢えてるの」


「そうなんだ…そういえば、部隊って割には隊員の方々が見受けられなかったけど…」


「第八部隊と第四部隊の隊員達は大体外部の任務で忙しいからほとんどが出ちゃってるのよ。特に大八部隊は全国に出回ってるからね。あの人はここの結界を守ってなくちゃならないからあまり遠くへは行けないの」


だからあの部屋にあの人だけだったんだ。


「でも大変だな。一人でここの結界守んなくちゃいけないとか」


「うーん…一人って言うか…もう一人くらい居るんだけど……」


「もう一人?」


「えぇ…クレイルの隊員じゃなくて外部の協力者なんだけど………」


「どうしたんすか?まさか何かやらかしたとか?」


先輩は少し黙ってからこともなげに口を開いた。


「めっちゃ嫌いなのよねあの人」


「……嫌い?」


一瞬思考が停止した。

先輩が嫌いになるってことは、何かしたのかなその人。


「なんで嫌いなんスカ?その人が先輩になにかしたとか?」


「……私自身になにかされたとかは特にないわ。それに私だけでなく皆その人のこと嫌いだし」


その場にいるだけで嫌われるって可哀想過ぎるだろ。


「まぁでも生理的に受け付けないんでしょうね。何か話しても無視するか別のことしてるかの二択でまともに話を聞くことなんてほとんどないし。気がついたら消えてるし、武器庫から適当になんか盗ってくしでもう大変なのよ」


結構してるなそいつ。

そら嫌われてもしょうがない気もしなくはない。


「さ、そんなクズの話なんて置いといて、どうする?あの感じだとあなた達に相性が良さそうな部隊だけ見て、他は見ずに行くってのもありだけど……」


「うん、それでいいっすね」


「私も―」


僕と美玲はもう殆ど興味をなくしているからさっさと終わらせてもらえるとありがたい。


「分かったわ。じゃあ六番隊に行く?それとも五番隊?正直五番隊のほうが良いと思うけど…」


「たしか六番隊はモノノケ特化の部隊っすよね。どんな感じっすか?」


「あそこはあんたらの雰囲気とは合わないかもね。あそこ皆暗いから」


「じゃあ五番隊で。ちょっと興味あるし」


「分かったわ。その後はどうする?四番隊は――」


「そこは別に良いです」


「あ、うん」


今更空蹴に会いに行ってもつまんないし、なんなら隊長ってことでマウントとってくるかもしんないし。


            ◇ 


「お、ここか」


氷室先輩が立ち止まった先を見て、俺は思わず二度見した。目の前にあるのは、第八部隊の鋼鉄の扉とは似ても似つかない代物だった。

壁自体は同じように白かったが、そこにある扉は全体的に丸みを帯びたデザインで、まるでテーマパークの入り口みたいに可愛らしい雰囲気を醸し出している。しかも、扉の横には小さな看板が吊るされており、そこにヘタウマな文字でひらがなで「だいごぶたい」と書かれていた。完全に幼稚園かどっかのプレイルームだ。


「おい、冗談だろ。ここがモノノケが集まる部隊の訓練場か?」


「隊長の趣味よ。可愛らしいのが好きみたい」


先輩の様子も創城さんのときとは違い、どことなく明るくなっている。

扉が開いて中へ足を踏み入れると、目の前には完全に可愛らしい空間が広がっていた。

足元は明るい色をした木の床で、壁には暖色系のピンクの壁紙が貼られている。部屋の隅には、ウサギやクマのぬいぐるみが飾られた棚まであって、頭がクラクラしてきた。第八部隊の空間が鋭利な白の箱だとしたら、ここは甘いピンクの綿菓子の中にいるようだ。

そして、この部屋は第八部隊のドーム型とは設計が違い、部屋の一部が吹き抜けになっており、その上には二階部分が見えていた。一階から全体を見渡せる開放的な作りだが、そこにあるのはどう見ても訓練用のロープやバーではなく、カラフルなクッションが積まれた小さな遊び場だった。


「わーかわいー」


佐倉先輩は部屋全体を見回して顔を輝かせる。


「なんかちょっと目チカチカしない?」


「わかる」


美玲と僕は特に可愛いには興味ない。

その拍子抜けするほどの光景の中、隊員たちの姿が僕の目に飛び込んできた。

部屋の隅、少し大きめのテレビの前には、ケモミミとふわふわの尻尾が生えた幼女が二人、夢中になってゲームをしている。

何アレ抱きしめていいかな。

そのすぐ横では、額から二本の鋭い角が生えた肌が赤い高身長の女の人が、天井からぶら下がったピンクのウサギやクマが描かれた可愛らしいサンドバッグを、力強く容赦なく殴りつけている。サンドバッグが揺れるたびに、ピンクの壁紙が微かに震えた。

さらに、その傍では、少し小さめの男の子が足に重りを付け、懸命に腹筋を鍛えようとしていたが、完全に限界を超えているようだ。顔は血の気が失せて息が絶え絶えになっており、今にも死にそうな顔をしている。

そして、この部屋で最も目立っているのは、床を縦横無尽に走り回っている小さな小動物の群れだ。ウサギ、犬、猫、リス、ハムスター、ヤギ、鳥のような多くの生物がごちゃ混ぜになって、走り回ったり、寝転がったり、壁のおもちゃを引っ掻いたりしている。その結構な数に、ここは動物園か何かの間違いではないか、と錯覚した。


「わーかわいー」


僕は近くにいる猫に近づき、手をかざす。


ガッ!!!


そしたら思いっきり噛まれた。


「ギャー!!!いっでぇ!!こんにゃろぅ!!!!!」


僕が大声を出すと、速攻で遠くへ逃げる猫。

可愛げのない野郎だ。


「わーー!!」


すると、突然二階の方から可愛らしい声が聞こえたと思ったら、小さい女の子が落ちてくる。


「ッ!!!!」


僕は即座に足だけ筋肉を全開放し、ウルトラムキムキ塁状態になる。


「塁くん!?」


氷室先輩が声をあげるが、僕は無視して爆音を立てながらその少女…いや、ロリの元へ高速で移動する。


「親方!!空からロリが!!!!」


そう言いながら僕はロリをキャッチし、地面にいる動物たちを踏まないように着地する。

僕はウルトラムキムキ塁状態を解き、普通の足に戻す。

関節から白い煙が出ているが、僕はすぐに腕の中のロリを確認する。


「大丈夫かい?怪我とか――ッ!!!!」


僕の目に写ったのはまるで妖精のようだった。


「あ…ありがとござます」


フニャフニャの声を発するの仕立てられたスーツの上着を萌え袖のようにしてしまうほど小さな身体、金色の髪をサイドポニーテールに縛り、髪色より明るい黄金色の瞳。

まさにロリ。

僕はその金髪の少女を顔の上に置く。


「はへ?」


そして思いっきり鼻から空気を吸う。



何故かって?…そのロリの見た目がめちゃんこ好きだったから。



僕の肺の中に少女の匂いが入ってくる。


「ぐへへへ!ロリダ!ロリダ!もっと触らせろ!もっともっと舐めさせろ!もっと吸わせろ!!」


「きゃー!!」


すると突然僕の視界が歪む。

そして鼻血を撒き散らしながら床に倒れ込む


「ぶへぁ!!!!!」


ロリは僕の腕の中からすっぽ抜ける。


「ふぇえ?」


「っとと」


力が抜けた腕からスポッと抜けるロリを氷室先輩が受け止める。


「あー!鏡花ちゃん!いらっしゃい!」


「はい、来ましたよ」


二人とも知り合いなのかすごく仲が良さそうだ。

羨ましい。


「ぐ…ぐぐぐ……」


僕はゆっくりと立ち上がる。


「えっと…大丈夫なのこの人?」


「大丈夫です。ただの変態なので」


「失礼な。変態だとしても変態という名の紳士だよ」


「それっぽく言えばどうにかなると思うなよ?」


ひぃ!視線が怖い。


「ところで、先輩。そのロ…その子誰ですか?明らかにクレイルに入って良いような年齢に見えませんけど…」


「この人はクレイル第五部隊隊長、久我山奏さんよ」


いやいや、そんなわけあるかいな。

どう見たって小学生低学年のロリじゃあないですか。

奏ちゃん?というロリは氷室先輩の腕の中で僕の顔と氷室先輩の顔を交互に見て、「あ!」となにかを思い出したかのように声を上げる。


「忘れてた!今日見学の日ね!」


そう言うと先輩の腕の中からよちよちと這い出て、地面にキュピっと言う効果音を鳴らしながら着地する。

もちろん僕の脳内で鳴っている音なので実際には鳴っていない。

そして、奏ちゃんは全くと言っていいほど皆無な胸を突き出し、咳払いをする。


「おほん!私はクレイルの大八部隊隊長、久我山奏です!異能は『百獣使役』!動物を操ることができるのです!」


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