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八番隊見学

 僕はアルベールさんに言われて僕は美玲たちの元へと足を運ぶ。

やはりまだ周りの視線があるな。

僕は面倒に思いながらも人の間を縫って部屋の角まで着いた。


「いやー、前より結構減ったけどまだ多いな。通りづらいわ」


僕は頭を掻きながら口を開く。


「なんか喧嘩でもしてたの?だめだよ喧嘩は。自分も相手も良い思いしないでしょ」


戻って早々、佐倉先輩からのお叱りを受ける僕。


「いやいや、僕は止めに行ったんですよ。けど相手が逆上して襲いかかってきたので仕方なくっていうか……というか、結局アルベールさんがその場を納めたし」


僕がそう言うと佐倉先輩は眉をひそめ訝しむ。


「本当に?」


「本当ですよ」


「そうかなぁ…」


なんか僕への信用なさすぎない?


「マイメロだからよく分かんなぁい」


「あ、始めるみたいだよ」


……無視された。

地味に悲しいな。

僕はちょっとしょんぼりしながら部屋の壁の上部についている窓を見上げる。


「あ、あー、聞こえてるかな?」


とマイクテストをしている空蹴。

大丈夫だったようでアルベールさんをマイクの前に立たせる。


「えー、皆よくぞここまで来てくれた。そして、おめでとう。君たちは、死への恐怖を乗り越え、この試練を真に勝ち抜いた者たちだ。

皆にこの姿を見せるのは初めてだね。では自己紹介をしよう。私は、異能力者管理組織クレイルの社長、アルベール・ヴィクター・ルーフェンだ。

感謝する。そして、心から敬意を表したい。君たちの瞳には、一瞬たりとも消えることのない闘志が宿っている。それは、生への執着、そして自分自身の力を信じる心だろう。死を覚悟しながらも、一歩も退かずにここに立っている。その勇気こそ、私たちが未来を託すべき真の力だよ。

君たちの力は、もはや組織に管理されるべき危険な力なんかじゃない。人類の未来を切り開くための希望そのものだ。

さあ、恐れることは何もない。君たちがここで示した強さは、決して揺るがないものだ。これより先、君たちの人生は、その手で掴み取った力によって大きく変わるだろう。その変化を恐れず、世界と向き合ってほしい。君たちこそが、これからの秩序を築き上げる者となるのだからね」


なんか集会で長々と話す校長みたいだな―と思いながら、僕は美玲と手押し相撲をしながら適当に聞いていた。

佐倉先輩はその様子を見て呆れて、千弘は眠そうにしながらもしっかりと聞いている。

分かるぞその気持ち。学年集会とか寝るためのイベントなのに謎に正義感出してくる生徒とか教師とかに毎回起こされるんだよな。関係ないから爆睡かますけど。

稽太は端で瞑想している。

坐禅だっけ?


「では、あらかた話し終わったから本日の内容に移ろう。この後君たちには数人の班に別れてもらい、第八から第一までの部隊を見学、又は体験し、希望の部隊を決めてもらう。ある程度の希望は受け付けるが、人数オーバーや実力不足などで入れないこともあるからそこら辺は理解してほしい。班は大体5~6人。班が完成したら係の者が誘導し、説明をするから…まぁさっさと始めてしまおうか」


アルベールさんは「かいさーん」と言い、その後この場にいる者達同士で班を作り始めた。


「さて、班ってここでいいよね」


「だね、ちょうど人数揃ってるし」


僕達で話し合っていると氷室先輩が扉から出て、近づいてくる。


「班はこの中で決まってるわよね。じゃあ行くわよ」


先輩は僕達が揃ってると分かると、入ってきた大きな扉から出て長い廊下を歩く。


「先輩が説明役なんすか?」


空蹴かと思った。


「空蹴さんはあれでも第4部隊の隊長だからね。第4部隊の部屋で見学者を待ってるのよ」


あれって…。

あれか。


「前から気になってたけど、空蹴って第4部隊隊長とか言うご立派な肩書を持ってるけど、そんな強くなくない?僕でも倒せたし…(割と偶然だが塁はカゲロウの霊力がもっとあればイケたと思っている)」


「人にも色々とあるように各部隊にも専門性があるのよ。空蹴さんを筆頭にする第四部隊は情報収集とか戦闘前の詳細な状況把握が主任務。そもそも戦闘向きじゃないのよ」


はえーそれぞれの部隊で特色があると。

たしかに空蹴の異能は使い勝手良さそうだ。


「他はどんな感じなの?」


「他は…まぁとりあえず見学で説明するから着いてきなさい」


僕達は言われるがまま先輩の後ろを歩いた。


             ◇


「最初はどこから行くんすか?」


僕が氷室先輩に聞くと氷室先輩は口を開く。


「そこら辺はあなた達に任せるけど、どうする?普通に第八部隊から第一まで見ていく?」


「そうするか」


「わかったわ。じゃあ第八部隊から」


「思ったんだけど、第八部隊から第一部隊って実力順なの?」


「ううん、実力というより個々の異能や霊力の総量によって分けられる部隊が変わるの。大八部隊は結界術に秀でた部隊で、第七部隊は情報分析や支援に特化した部隊、第六部隊はモノノケ特化の部隊、第五部隊は特に特化している部分はないけど、殆どが人間以外で構成されているわ。第四部隊はさっきも言った通り隠密や偵察などに特化した部隊、第三部隊から第一部隊までは戦闘に秀でた部隊ね。と言っても少しタイプが違うけど。まぁ大まかなところはここらへんね。何か質問なんかはある?」


「はい!」


僕は大きく手を挙げる。


「はい、塁くん」


「第五部隊についてなんすけど、人間以外ってことはモノノケってこと?大丈夫なの?」


「ええ、一応人間に有効的なモノノケも存在するわ。視たことない?」


僕は少し考える。

今まで会ってきた奴らは全員漏れなく僕のことを殺そうとしてきたからなぁ。

そこで僕はある一人の顔が浮かび上がる。


「あ、師匠とか?」


そう言うと氷室先輩は「うーん…」と唸る。


「ちょっと違うけど、大体同じね。モノノケは殆どが個々の特徴を持っているけど、人種のように彼らにも彼らの種族があるのよ。よく聞くのだと、天狗とか鬼とか妖狐とかね。彼らは珍しく同じ種族が複数いるからね」


「第五部隊には居るの?」


そこで佐倉先輩も質問する。


「鬼の子なら居るって聞くけど、天狗とか妖狐とかはあまり人と関わろうとしないの」


はえー。大変だな。

僕と先輩たちで話し合っているとちょうど第八部隊の専用訓練場に着いた。

クレイルでは部隊ごとに一つか二つの訓練場が与えられ、そこで各々の異能や実力を鍛えていくという。

目の前に現れたのは、一切の装飾がない、無機質な白い壁だった。それは、ただの壁ではなく、空間そのものが異様な静けさと冷たさを放っているように感じた。そして、その白い壁の中央に、分厚い鋼鉄製の巨大な観音扉が鎮座している。デザインはシンプルだが、純白の空間の中では異様に重々しく、扉の表面には、見たこともない複雑な結界符のようなものが無数に刻まれていた。デカい金庫の扉みたいで、いかにも「ここから先はヤバい」って雰囲気がムンムンしている。


「ここが第八部隊の専用訓練場よ」


氷室先輩はそう言ってポケットの中からIDカードを取り出し、扉の横にある機械にかざす。

すると、グオォンと低く重い駆動音が響き渡り、扉がゆっくりと内側へ開き始めた。

扉が開いて中へ足を踏み入れると、目の前には想像を絶する光景が広がっていた。

空間全体が、外観と同じくすべてが白で統一されている。壁も床も天井も、継ぎ目が見えないほど滑らかで、まるで巨大な白い箱の中に放り込まれたような感覚だ。

部屋の中心には巨大な釘があり、そこには変な呪文のようなものが書かれている。

それ以外にも床や天井に札が貼られていたり、小さな釘なんかも床に散らばっている。


「うわぁ…最初の部屋はある程度人が居たからアレだけど、少ないとなんか気持ち悪くなりそう」


「わかる~俺も最初そう思ったわ~!」


僕がそういった瞬間、部屋の中心にある巨大な釘の裏から男が出てくる。

黄金色に輝く髪にワックスを付け、髪型をバチバチにキメ、その上に丸いサングラスをかけている。

目はキリッとしていて、身長も高く、耳に銀色のピアスを付けている。

端的に言うとイケメンだ。


「おっと、自己紹介がまだだったかな?俺は――」


「この人は大八部隊隊長の創城陣さんです。異能は『断片領域』。自分を中心とした空間の一部を切り取り、特定のルールを適用した結界を張ることができます」


「俺の自己紹介が……」


ちょっとショボンとしたデフォルメ顔になる創城さん。

が、すぐに仕切り直し元の顔に戻る。


「大体鏡花ちゃんに言われちゃったから、あんま言うことないけど、創城陣だ。よろしくな。異能も言われちゃったから特に言う事無し!ハイ、質問ターイム!!」


場を仕切っているところと、デカい声で陽キャ感が漂ってくる。

僕達はそのテンションにちょっと引き気味だったが、美玲が手を挙げる。


「はい、そこのかわい子ちゃん!」


創城さんが美玲に向かって両手で指を指す。


「えっと…あそこのデカい釘って何スカ?」


「ああ、アレね。アレはこのクレイルを隠すための釘さ。俺の異能の効力を付与してある。隠形に近いかな。クレイルには他にも二つくらいあるよ。1つ目はこの隠すための釘、もう一つは土地の安定を固定する釘、もう一つは邪を断ち切る釘。それぞれ別のところにあるんだ」


「はえー」


聞いといてあんま興味なさそう。

僕自身もそんなに理解できなかったし。


「さぁ、俺からも質問だ!この中に結界術や結界に近いものを張れる人はいるかな?簡単なものでもいいよ」


「…………」


皆、黙ってしまった。


「僕はそもそも異能があるのかないのかわかんないし…」


苦笑いで答える千弘。


「私も同じく…」


佐倉先輩も。


「俺も結界術は専門外だな。親父ならできるかもしれんが」


「私も自分の異能についてはよくわかんないし」


美玲と稽太もできそうにない。


「そっかぁ…」


またデフォルメしょぼん顔になる創城さん。


「あぁ、その…結界っぽくはないけど、要はバリア的なこと?」


「できるの!?」


うぉ、食い付いたな。


「まぁこんくらいだけど……」


僕は指をスッと二本上げる。

すると、足元の影が蠢き、全員の足元を包み円状に広がる。

そして、広がった先に無数の太いトゲが出現する。


「これは…」


創城さんはその広がったトゲを凝視して少し触ったりしている。


「『叢棘(そうきょく)』っていう技です」


「なるほど…複数のモノノケには有効そうだね」


「はい、もうここらへんで良いわよね。次行くわよ次」


氷室先輩が割って入り、僕は叢棘を解除する。


「えーもうちょっと居てもいいじゃん!」


「こっちも他の部隊を見なくちゃなので急いでるんですよ。それにこの中でまともに結界術を使える人なんて居ないんですから」


「ぶー!」


なんか後ろで暴れているが僕達は氷室先輩に連れられ、第八部隊専用訓練場を出た。

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