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異反者  作者: 二代目とくとくかい
第一部:慚愧服膺篇
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第六十二話:変な空間

 累は今、何も無い、真っ暗な空間に居た。


「どこやここ」


累はあたりを見渡すが、全てが闇に塗りつぶされており、光を全く反射していない。

一瞬、拍骸の幻想か、結界の中に閉じ込められたのかと思ったが、あの空間には崩れた建物があったはずだから、おそらく違うだろうと考えた。

特にすることも、行く当てもないので、累はただこの空間を歩くことに決めた。


コツ、コツ……


自身の足音だけが響く。

それ以外の音が全く聞こえないので、耳を澄ませば、自身の心臓の鼓動する音や、血液が流れる音までクリアに聞こえてきた。


「キリねぇな……」


どれくらい歩いたかわからないほど歩いた。

本当に歩いているのかも定かではなかった。

なぜなら、この空間自体が光を全く反射しておらず、上下の感覚すら怪しいからだ。


「どうするかなぁ……」


累は仕方なく地面に座り込む。


(確か…このままじゃ全員死ぬって思って、完全顕現して……それで拍骸と戦ってたと思うんだけど……う~ん、あんま覚えてないや)


この空間に来る前の事を事細かに思い出そうとする。

意識が薄れるほどの激戦だった。

そんな時、嫌な考えがふと、累の脳裏に浮かんだ。


「僕は…死んだのか……?」


累は静かに呟いた。

心のなかには不安と後悔が渦巻いていた。

あの時逃げていれば、あの時生半可な気持ちで関わっていなければと、今更考える。

だが、すぐにそんな事を考えた自分自身の頭を、勢いよく拳で殴った。


「んなこと考えたって仕方ないべ!今はこの状況をどうにかするかだ。……どうしようもないかもだけど」


累は勢いよく立ち上がり、気合を入れる。


「ん?」


すると、今殴った傷とその衝撃で出た鼻血が目に見える速度で治癒して、もとに戻っていることに気づく。

赤くなっていた頬の皮膚が、まるで巻き戻し映像のように元通りになっていく。


「うぇえ!何これ!?」


累は先程まで少し赤くなっていた頬を触る。


「どうなってんだマジで……」


累の中に、本当に死んでしまったかもという考えが、より一層深く生まれる。

そんな時、累の背後から音が聞こえた。音というより、声だろうか。

累はその音の方向に振り向く。

するとそこには、上を見上げる人影が立っていた。

累はその存在に気づくと、喜びと共に全力で走り出す。


「第一村人を発見!!取材だぁ!!!」


しかし、何故だろうか。

走っても走ってもその人影には近づけない。

近づけないどころか、どんどん遠ざかっていっているようにすら感じた。


「おーい、君ーちょっとこっちに来てくれないかー!!大丈夫、お兄さんロリと僕のことを養ってくれるヤンデレのお姉さんには優しいよ!!」


累は大声でその人を呼ぶ。

するとその人は、ゆっくりと塁の方へ振り返った。

その人は累の記憶にあった。

全身を黒いローブで覆い、顔がよく見えない。

その人は累の顔を見て、微かに微笑み、こう言った。


「カゲロウだっけ……彼をちゃんと使ってるみたいだね。良かったよ。でも、私が会ったときにはもうその使い方だったから、当たり前といえば当たり前か」


累はその人の言っていることがよく分からなかったが、声からして女性、それも自分よりも年下の少女だと分かった。

なぜ分かったのかはわからないが、なぜだかそう理解できた。

その少女は累に向いて再び微笑む。


「私はいつも見ているからね。まだ死んじゃ駄目だよ」


その少女は静かにそう言って、どんどん離れて闇の中に消えていった。


「ちょっと!ここどこなのぉ!!」


累はその消えゆく少女に向かって叫ぶ。

すると背後からゴゴゴゴ!という、地の底から響くような音が聞こえ、振り返ると黒い波が押し寄せて居た。


「ちょっと待って僕浮き輪持ってな――!」


と逃げようとするも、呆気なく累はその黒い波に飲み込まれた。


      ◇


「お目覚めかな?」


僕は目を覚ますと眩しい光とともに全く知らない男の顔が映る。

その男は光のない目で僕のことを観察するように見てから「うん、視たとこ落ち着いてるね」と何処かに声を掛ける。


(なんだ…ここ……?それに誰だこいつ……)


僕は今いる部屋を見渡してみる。

少し広い部屋に無機質な白いコンクリートの壁や床。

僕はその中心にあるベッドの上で横になっていた。


「あの…ど、え…っと……どうなって…るんすかね」


僕は若干吃りながらその袴を着た男へ問う。


「あれ、記憶もないのかい?大丈夫、ここはクレイルの本部さ。おっと、記憶がないとすると、僕の名前も知らないか。僕は傍切。本業は探偵で、時々クレイルやその他の異能力者とかに力を貸している者さ」


傍切と名乗る男は僕に名詞を差し出す。

そこには『傍切探偵事務所』や『傍切』、その他住所や電話番号が書かれていた。


「えっと…傍切さんは……」


「傍切で良いさ。敬語ってのは好かないからね」


「ああ、そう…じゃあ傍切」


「なんだい?」


傍切は僕から少し離れた所に椅子を置いてそこに腰掛ける。

どこから出した…?

背中でよく見えなかったな……。


「えっと…僕、拍骸…蓬野高校の校庭で戦ってた黒いモノノケに殺された?ときから記憶が曖昧で……」


「その少し後まではよく分からないが、安心してくれ。あのモノノケは祓われたよ。君の手によってね」


「僕…?傍切じゃないのか?」


「…どうしてそう思うんだい?」


僕は首を傾け、傍切を見据える。


「だって…お前、滅茶苦茶強いだろ…?」


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