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オカルト研究同好会

 それから数日、空蹴と氷室先輩が頑張ってくれたようで僕達の同好会が認証された。

そのため、僕達は認証された放課後に僕達が活動する教室に集まっていた。


「ちょっと埃っぽいね」


パタパタと空気中の細かい埃をはらう千弘。

夕日が少しだけ差し込む教室は元々美術室の備品を収納していた教室らしい。

普通の教室よりは狭いが、6人が入るにはまだ広い。


「おー、すげー。落ちたら死ぬね」


窓から上半身を出して下を見る美玲。

ここ三階だからな。


「地域に伝わるオカルトや未確認生物(UMA)に関する情報の収集と研究、UMAや都市伝説に関する文献を読み解き、真偽について討論という形です」


「具体的に情報の収集とかってなにするんだ?」


「地域の古い神社仏閣や廃墟の探索を行い、資料の作成・発表や、文化祭などで、研究成果をまとめた展示物の作成・発表ですね」


「なんか思ったよか普通だな。クレイルとか変わってくる感じだと思ってた」


僕が独り言を言うと、空蹴は「そこら辺は大丈夫です」と言う。


「これはあくまで建前ですので、本命は潜伏しているモノノケおよびアサルトの活動に関する情報収集や、緊急時の学校内防衛体制の構築、モノノケが集まりやすいパワースポットなどのパトロールなどが目的です」


「なるほど」


「あの…」


そこで佐倉先輩が手を挙げる。


「私達、そのアサルトっていう組織について概要だけで詳しい情報などは知らされてないんですけど…」


「そうでしたか。では今ここで説明してしまいましょうか」


空蹴は細かく説明を始めた。

まず、アサルトというのはクレイルと敵対関係にある異能力者集団組織であり、戦闘員は皆異能力者であるということ。ここらへんはクレイルと特に変わりはない。

違うところというのはアサルトはモノノケだけでなく一般人にも危害を及ぼすということだ。

アサルトの目的は異能の解放と進化。

異能力者が社会に隠れて生きることをよしとせず、むしろその力を積極的に解放し、人類を次の段階へ進化させるべきという考えだそう。そのため、何度か一般人を襲撃する事件が何件か起こっている。

しかし、最近はそれよりも邪魔をしてくるクレイルなどの異能力者を削ぐことに専念をしているとか。

大体の概要はここらへん。詳しい内容は少ないのであるだけ話してくれた。


「まず、アサルトにはTRIGGER(トリガー)BULLET(バレット)という幹部が存在します。BULLETは4人、TRIGGERは6人の合わせて10人の幹部です。と言ってもTRIGGERは仮の幹部で本命の幹部はBULLETの4人です。取り敢えず今はこの10人の中で情報がある者を伝えておきます」


空蹴は人差し指を立てて話し始める。


「まずは一人目、TRIGGERの一人でアサルトの狙撃手『ガンスリンガー』。本名は不明です。こいつの異能は分かっていませんが超遠距離からの狙撃を得意としています。特徴は両目を完全に覆う遠視スコープを常に付けていて、一目見ればわかります。二人目も同じくTRIGGERで、サイボーグの双子です。こいつらは二人で一つのようなモノで、連携がとても洗練されていて一人ではまず相手になりません。その上、頭も回るのでとても厄介です。異能は無く、霊力も一般人より少し多いくらいですが、身体を改造されていて普通の異能力者と何ら変わらない、それどころかそれ以上の身体能力を有しています。とまぁ、TRIGGERはこれくらいです」


結構我が強いな…。

僕が思うにガンスリンガーって人はよくわかんないけど、双子のサイボーグの方は絶対二人で同じ言葉言ってきたりするな。


「ちょっと待ってください。サイボーグってなんですか?」


佐倉先輩が頭が追いついていないような顔をしながら空蹴に聞く。

空蹴は真面目な顔で答えた。


「それについてはこれから話す人物が深く関わっています。その人物というのはBULLETの頭脳『レリック』です。レリックはアサルトの頭脳役を担っており、サイボーグ二人もこいつによって作り出されたものです。レリックの強みはその圧倒的なまでの知力。今まで何度そいつに我々のセキュリティが破壊されたか……そして表には絶対に出てこないので強さも未知数。ですが幹部になっている以上、強さも兼ね備えているでしょう」


「そんなのも居るの……」


不安そうに僕の服を掴む千弘。可愛い。


「そんだけ?後は居ないのか?」


僕は千弘の頭を撫でながら空蹴に聞く。


「いえ、TRIGGERはもう一人。こいつだけ、異能が分かっています。名前は九重刀自鼬鼠(くじょうとうじ いたち)、本名です。異能は『自己加速』。自身の動きを加速させるというシンプルな異能です。しかし、その練度が凄まじく、相対したものは皆目で追うことすらできないほどです。それだけでなく刀さばきも一流で、その速度と剣術で多くのものが殺されています」


「僕わかんないけどさ、異能って鍛えられんの?霊力は無理って聞いたけど…」


「そこがそいつの凄いところよ」


氷室先輩の解説も参加した。


「異能は霊力と違って鍛えることは不可能ではないの。ただ問題は、そう一長一短にはいかないところね。私も昔からずっと異能を鍛えてるけど、ほんの数十センチ広くなるだけだった。でもそいつは過去の書類を確認すると、昔より圧倒的に疾くなっているの。そこまで昇るのにどれだけの時間と労力を重ねてきたのか……」


なるほど、できなくはないけどムズいよ―ってことね。


「というか、そんだけ時間がかかるってことはそいつ何歳なの?」


美玲も空蹴に質問する。


「詳しい年齢はわかりませんが、おそらく50は超えてます」


「ジジィじゃねぇか」


「歳はそんなに関係ありませんよ」


「そうかぁ?」


「ええ、実際に社長も結構いってますんで」


え、そうなの?可愛い系ショタにしか見えないけど、童顔ってレベルじゃねぇぞオイ。


「確か今年で300歳ぐらいって言ってたっけ…」


「ジジィじゃねぇか。つかありえんだろあの見た目でその歳は嘘松。それにその歳までいったら人間じゃねぇし」


「ええ、人間じゃないですよ」


「ふぉえ?」


僕は間の抜けた顔と声をあげる。


「あれ、知らなかったんですか?社長は人間ではなく吸血鬼ですよ」


「え…でも、初めて会った時窓からちょっと日が差し込んでたし…」


「そこら辺は僕もよくわからないので社長に聞いて下さい。というか、この後聞いて下さい」


「この後?」


「ええ、今日から蓬野高校オカルト研究同好会は活動を開始し、本日の活動内容はクレイルでの部隊編成です」


空蹴はニヤリと歯を見せながら笑って言った。


       ◇


 僕達オカルト研究同好会の初活動はクレイルに行き、部隊編成をすることだそうだ。

前回来たときと特にすることは変わらず、本部に行き、エレベーターに全員で乗り込み、地下へ降りる。


「そういえば、どうしてここにクレイルの本部があるの?」


千弘は首を傾げる。


「なんで?」


「だって、本部ってことはいろいろな事をするはずでしょ?だったら東京みたいな利便性が高い都心の方が良くない?これだけ重要そうな組織なんだから、交通の便や情報が集まりやすい場所のほうが活動しやすいと思うんだけど……」


「簡単なことですよ。東京はアサルトの縄張りです。詳しい場所なんかはわかりませんが東京にはアサルトの本部、小基地などが多数存在します。ですので仕方なく、都心に近い埼玉に置いているのです」


なるほど。

そういえばここ埼玉って設定だったな。

揺れる鉄の箱の中に「チーン!」と高い音が鳴り、ドアが開く。

そしてこの間通った道を歩き、人が多く集まっていた広場の前へと着く。


「塁くん…」


「着ないぞ」


美玲がまたも世紀末ファッションを僕に渡そうとしてきたから、それを華麗に回避する僕。


「じゃあ僕達はここで」


空蹴と氷室先輩は一緒には入らない。だってもう入隊してるし。

扉を開け、中に入るが前回よりも人数が結構減っている。

大体三分の一くらいしか居ないな。


「フッ…やはりお前も来たか…」


その中でも一人面倒そうなのが口元を歪ませる。

橘だ。

僕が面倒くさそうな顔をすると美玲達が「角っこの方言ってるね―」と二人にさせられる。やめろ。


「あぁ、お前も居たんだ」


「当たり前だ。俺はお前を超えるためにここに入り、そして強くなる」


「ほっか、ガンバレヨ―」


僕は適当に相槌を打ってその場を去る。


「なっ!おい待て!」


後ろでなんか言ってるけど無視無視。

部屋の角の方へ向かっていると部屋の中心から大きな音が聞こえる。

怒号や殴られる音、蹴られる音。

喧嘩かぁ?

ったく、僕も行こー。

軽い足取りで中心に近づくとなんだか見覚えのあるというか前に蹴った奴の顔が見えた。


「アッハハ―…お兄さんたちどうしたのぉ?怖い顔して。一旦落ち着こ!ね?」


とか宥めるように言って入るが、シャベルのようなものを大柄な男の首元にかけているのは天宮だっけ?

彼女の周りには2~3人のチンピラが倒れていた。

その中にはクレイルの者と思しきスーツの人も倒れている。

やってんなぁ…。


「おい、そこら辺にしとけよ」


「はぁ…まだ出てくるの?弱いくせに…良くやるねッ!!!」


天宮は手にしたシャベルを僕向かって勢いよく振る。

それのすぐ後にガン!!という鈍い音が聞こえる。


「って…」


「…あ」


僕は天宮のシャベル攻撃を腕で防ぎ、天宮は僕の顔を見て真っ青になる。


「よぉ…久しぶり」


「あ、あんたは…!」


天宮は僕の顔を見た途端、後ろへバク転をキメて距離を取る。

そしてもう一度シャベルを構える。


「止めとけよ。僕に負けたの忘れたのか?」


「あの時はどーも。私も油断してたからやられちゃったけど、今回はそう簡単にはいかないよ?」


「かかってこいよカメムシフナムシダンゴムシが」


塁と天宮が高速で距離を詰めるその最中、両者の身体に何か柔らかいものが当たった。

その瞬間、塁と天宮の位置が入れ替わっていた。


「ッ!!」


「どうなって…!」


両者が混乱している中、一人が静かに、そして優雅に言った。


「さぁ、始めようか。話を」


二人の間に立つのはスーツをきっちりと来た小柄な少年。

アルベール・ヴィクター・ルーフェン。


「あ、アルベールさん。ちっす」


「誰…?」


天宮は混乱と驚愕で声を漏らし、塁は適当に挨拶をする。


「やぁ、塁君。すまないが、喧嘩はやめてほしいかな。言ったろう?人員が足りていないんだ」


「すんません」


僕は少し丸くなりながら謝罪をする。


「そういうあんたは誰なのよ?それにこいつとは同意の上で殺ってんの。邪魔しないでくれる?」


天宮はアルベールさんの顔を知らないのか、失礼な態度を取る。


「分かったら引っ込んでてよ。それとも…あんたから……ガっ!!!」


シャベルを構えようとした天宮の頭上に空蹴が現れ、強めの蹴りを天宮に入れる。

どっから出てきた?


「社長の御前です。無礼な態度は弁えるようお願いします」


天宮は地面に力なく倒れ、空蹴は静かに地面に着地する。


「ちょっとやりすぎだよ。空蹴」


「……すみません」


少し目を細めるアルベールさんに根負けし、空蹴はそっぽを向きながら謝る。

やっぱ空蹴って結構強いんだよな。

僕ほどじゃないけど。


「さ、君も行きたまえ。話を始めるよ」


アルベールさんはそう言って腕を後ろに組み、部屋を出ていった。

空蹴もその後ろに着き、部屋を退出する。

あー、分かりづらいけどあそこに扉があんのね。

僕はうつ伏せの天宮を一瞥してから周りを見る。

周りの連中は僕と天宮を凝視していた。目立ったけど、悪い気分じゃないな。


「なんだぁ?何か用でもあんのか?ああん?」


僕がガンを飛ばすと連中は目を逸らし人だかりも次第に薄れていく。

僕はポケットに手を突っ込んで美玲の方へ向かった。

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