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こいつが顧問とか終わってんな

翌日、僕は教室で美玲と指スマをしていた。


「チッチの、11!…クソガアアアァァァ!!!」


「フワッハッハッハ!残念だったな。チッチの0!!」


「ぐぎゃああぁぁぁ!!!!!」


「何やってんだお前ら」


「え?」


指スマをしていると灰田が話しかけてきた。


「知らないの?指スマだよ」


「いや指スマは知ってるよ。明らかに普通の指スマじゃ聞かない数字が出てきたから…」


「ああ、普通の指スマじゃ大抵10ラリーで終わるだろ?だから全部の指含めてやってんだ」


「そろそろ足の指も足そうかなって思ってるよー」


僕の説明に美玲が付け足す。

灰田は「そんなんあるんだ―知らなかったなー」と完全にヒゲを剃りきれていない顎を擦る。

すると、何かを思い出したように声を出す。


「あ、そうだ。神白に言っとくことがあったんだった」


「言っとくこと?」


なんだろう。お叱りか?

ならば今ここで此奴を…いや、お叱りとは限らんか。とりま話を聞こう。


「おう、お前部活入ってないんだってな。ずっと前に聞いてたんだが、言うの忘れてた」


「……………」


バレた。


         ◇


「えー本日は足元の悪い中、お集まりいただきありがとうございます」


僕は昼休み、いつメンに集まってもらった。もちろん立入禁止の屋上に。


「あのね…私は目を瞑ってるけど、本当は立入禁止なのよ?他の生徒や教員の人に見られたらただじゃ済まないわよ」


僕を睨みながら言う氷室先輩はなんやかんやで来てくれる。


「私もだよー。ここじゃない場所で話したいんだけどな―」


ニコニコしているがちょっと目が笑ってない佐倉先輩。

こわい。


「僕もちょっと……」


優しい千弘もちょっと困っている。


「まぁここは気持ちがいいからな。仕方ない!」


「で、話ってなんなのさ?」


腕組をしながら頷く稽太と麩菓子を食ってる美玲。

今のところこの二人だけが味方だ。

僕は少し気まずい雰囲気を感じながら咳払いをして話し始める。


「えっとですね…僕、部活に入ってないんですよ。それがうちの担任にバレまして、部活に入れって言われて……」


「それで、私達に何を頼みたいの?」


氷室先輩はジト目で僕を見上げる。


「そうか、つまりは部活を紹介してほしいと?だったら俺の空手部に来い!」


稽太は何かを察したように大声で僕を空手部に誘う。


「いやーね…その…今更途中入部ってどうなんかな…って思ってしまってですね」


「ふむふむ」


「だって…途中入部してきたせいで他の部員と絡みにくくなったりするとやだし…」


「なるほど?」


「そもそも僕部活みたいな集団活動というか…上下関係が厳しそうなとこ苦手というか…」


「ほうほう」


「故に!部活に入らずに済む方法を皆に考えていただきたい!!」


「入部しろアホ!!」


「ごふッ!!!」


先輩が飲みかけの緑茶のペットボトルを僕の脳天目掛けて投げつけ、クリーンヒットする。

そのまま地面に倒れる。


「待って待って待って!!だってさ、よく考えてみてよ!全く僕を知らない奴らと急に関わったって、そいつらはそいつらですでに友人関係は成立してるだろうから僕なんかが入っても仲を掻き乱すか、いらんやつとして追い出されるかの二択なんだよ!そんなん僕のHeartが耐えられん!」


「要はただの甘えね」


「そうだね」


僕の熱弁を一切意に介さず二人で話を締める佐倉先輩と氷室先輩。


「あのー…」


そのタイミングで千弘が手を挙げる。


「その、部活に途中から入るのが嫌ならもう作っちゃえば?部活とか」


「それはキツイわよ。設立申請書類の作成と提出に教員の方々からの承認や構成員の確保も必要だから、新たに部を作るのは難しいし、時間もかかるわ」


千弘の意見に氷室先輩からのお言葉。さすが生徒会長。

言われた千弘は少ししょぼんとする。

その顔を見て佐倉先輩が助け舟を出す。


「で、でもいい考えかもしれないね。部までとは行かずとも同好会として活動を開始すれば時間は確保できるし」


「同好会か…」


氷室先輩は顎に手を当て、考え込む。


「新しい同好会が出るのはもう数年ぶりになるわね。といっても聞いただけだけど。でも、うん。できると思うわ。大抵の部活は元は同好会からスタートだし。けど、ちゃんと構成員と活動内容を考えなきゃよ?」


「ふっふっふ…そこなら任せといてくださいよ。今のを聞いていい案が思いつきましたぜ」


「いい案?」


僕はドヤ顔のままスマホを取り出した。


          ◇


「で、僕を呼ばれたと」


困り顔で僕達を見つめるのはクレイルの第4部隊隊長空蹴将仁。

少し息切れをして、汗もかいている。

何故こいつがここに居るのかと言うと、さっき僕がメールした内容が原因だ。

画面に映るのは『モノノケ出現、屋上に一体』の文字。

送信先はこの前交換した空蹴将仁。


「すごいね塁くんの召喚魔法」


「だろ」


「ぶっ殺しますよ?」


血管が浮き出た顔で歪んだ笑顔を作る空蹴。


「はぁ…で、話は大体わかりました。同好会の作成にあたって、僕を通して手っ取り早く済ませようということですね?」


「そういうこと」


「ふむ……まぁでも断ることはないですね。条件を飲むのなら」


「条件?」


「ええ」


空蹴は人差し指を立てる。


「条件は一つ。あなた達異能力者だけを入部させること」


僕はそれを聞いて片眉を上げる。


「どういうことだ?」


「簡単な話です。僕は、蓬野高校の異能力者、つまりあなた達をメンバーとした即席のチームを創りたいと思っている」


「チーム?」


「ええ。骸の声との戦いになった時、戦場となる可能性が最も高いのは、あなた達がいるこの学校です」


空蹴は真剣な眼差しで僕を見据える。


「もしそうなった場合、この学校の敷地や構造に慣れている異能力者がいると、我々クレイルにとっては非常にありがたい。そして何より、僕が顧問となれば、クレイル本部との情報共有が手っ取り早く、確実に行える。あなた達は、そのホームグラウンドの防衛戦力となってほしい」


彼の言葉を聞き、僕たちは顔を見合わせる。この場の全員が異能力者であるため、特に異論はなかった。


「チーム、ですか…悪くないね」


と佐倉先輩。


「じゃあ、活動内容は『異能力者による地域ボランティア同好会』とか適当に書いとけば良いんだね」


と美玲。


「流石に駄目だろ。審査外だわ」


皆が納得する中、氷室先輩が一つ疑問を口にした。


「分かりました。ですが、同好会を設立するには顧問が必要です。そこはどうするおつもりですか?」


「フッ…」


突然空蹴が気味の悪い笑顔を浮かべる。

キモ。


「まだわからないんですか?僕があなた達の顧問になるんですよ」

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