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爆弾アイス派?おっぱいアイス派?

橘はため息をつき、話し始める。


「先刻も言ったように、俺には前世の記憶がある。俺の前世というのはこの世界とは全く異なる、要は異世界というものだ。そこは魔力というエネルギーを皆が持っており、魔法というこの世界で言うところの異能を使用していた。ここらへんは、ほとんどこの世界と変わらないが、一つ違うものがある。この世界での異能は一人一つあるのが基本だが、あちらの世界の魔法は様々なものがあった。それも皆が使えるな。よくあるファンタジーものを想像してもらって構わない。そこで、俺は魔王というものをしていた。魔族というこの世界で言うモノノケの長のようなものだ。魔王である俺は最強だった。しかし、不意打ちで勇者と名乗るとても強く狡猾なヒューマンに首を落とされてしまった。そして、死んだと思ったら気がつくとこの世界に転生というものをしていたのだ。だが、何故かあちらの世界で使えた魔法がこちらの世界でも使えた。だから俺の異能は皆の使う異能と大体同じだが少し違い、そして使える数も違う。そういうわけだ」


「ほーん」


長々と話す橘の話を最初の5秒くらい我慢できた美玲は耳を小指でかっぽじっている。


「…………」


「? どうしたの?」


少し息を荒くしている僕に氷室先輩が声を掛ける。

声をかけられた僕は勢いよく立ち上がり叫ぶ。


「すげー!!!異世界!異世界!僕ずっと憧れてたんだ異世界というものに!本当かどうか怪しいけど、なんか信憑性を感じた!すげー!!!!」


「お、おお……」


なんでお前がちょっと引いてんだ。


「異世界ってやっぱりダンジョンで冒険してレベル上げとか、ギルドで薬草採集の依頼を受けたりするのかなー!!!」


興奮気味に橘に質問すると橘は眉をひそめた。


「いや、大抵のダンジョンは封鎖されているか、冒険者用のレベル上げ施設としてスポーンした瞬間罠にかかり、瀕死状態になるようにれてるし、薬草は家庭菜園で皆育てているから集めてくる必要は無いぞ」


「……」


僕は膝から崩れ落ちる。


「なんで……なんでだよ…集めろよ………」


「ど、ドンマイ…」


氷室先輩が僕の肩を叩く。


「だ、だったらお前の魔法?異能?を見せてみろ!かっこよくなかったら殺す!!!」


「うぇ?あ、ああ」


僕の気迫に負け、橘は再び立ち上がり空に向かって手をかざす。

そして……。


「サンライト・フレア!!!」


橘が叫ぶと手の先から魔法陣が浮き出て、そこから太陽のような眩い光を放ち、炎のビームがものすごいスピードで飛んで行き、空に浮いている雲を散らす。


「すげー!!他の!他の!」


「フッ…良かろう。サンダーレクイエム!!アクアランス!!サイクロンバースト!!」


サンダーレクイエムという魔法は校庭の上空に複数の魔法陣を創り、そこから雷を落とすというもの。

アクアランスは橘の後方から無数の魔法陣を描き、水の槍のようなものを発射するというもの。

サイクロンバーストは周囲に小規模の竜巻を発生させるというもの。


「かっけー!!でも、やっぱり雷が一番かっこいいわ!」


「確かに強力ね。普通の異能力者じゃ一人一つが一般的だから…この手数だと…下手したら社長とかよりも強いかも……」


「いや、そうでもない」


氷室先輩の意見を思いの外否定する橘。


「俺の魔法は確かに強力だが、発動までが少し遅い。だから、神白のような単純に反射神経が良いやつには避けられたり、発動前にねじ伏せられたりする。勧誘された時、一瞬その社長というものを見たが…あいつには勝てそうにない」


「まぁ実際に負けてるしな」


「なんだ貴様やるのか?」


「へっ!負け犬根性極まれリだな!」


「使い方違うし…」


僕と橘が睨み合ってる中で氷室先輩は小さく呟く。

すると、美玲が手を挙げる。


「ねぇねぇそろそろ行かなきゃじゃない?」


「なんで?まだギリギリ時間あるぞ」


「だって今日短縮だから5分早いよ」


「「「「「あ」」」」」


その後、ギリギリ皆間に合ったようだ。


         ◇


 放課後、僕と美玲は補修のため別教室に残されていた。

生徒は僕達だけでなく、他のクラスの生徒達もいる。

僕は死んだ魚の眼で窓から空を見上げる。まだ外は明るいままだ。

はぁ~めんどくさすぎてそれ以外の感想が出てこないよ。帰りたい。

美玲は5~6時間目で手持ちの食料を食べ尽くしてしまったため、お菓子を食べているがなんだか物足りなさそうな顔をしている。

僕の方はというと、問題に目を落とすも俄然やる気が出ない。

なんだよ心情把握って。

僕は特に何も考えずに「メロスは多分激怒した」と書いた。

そして、暇になったので美玲の方を向く。


「何食ってんだお前」


「フルーツの森」


「なにそれ」


「ほい」


美玲が見せてきたお菓子は丸いクッキー生地の上に、色とりどりのグミ?ドライフルーツ?がちりばめられたお菓子。

あ~懐かしいなこれ。爪楊枝で刺す感じのやつか。

昔これ食ったら奥歯持ってかれたっけ。

いや、それはさくらんぼの方か?


「これってさくらんぼ以外にあったんだな」


「知らなかったの?情弱だね~」


「一般的にはさくらんぼのほうが知名度あるだろ」


「あ~、さくらんぼね~。あれねー量結構減っちゃったからな~」


そう言ってまるで焼き鳥のように大量のドライフルーツを爪楊枝で串刺しにし、口の中に放り込む美玲。


「そうなの?僕が知ってるのって18個くらいのなんだけど…」


昔の記憶を頼りに指を折って数える僕。


「今は12個だよ」


「マジか!」


6個も減ってるじゃん。

なんか悲しいな……。


「あ」


「ん?」


最後の一粒を食べた美玲は次の駄菓子に行こうとするも、様子がおかしい。

カバンの中をガサゴソと漁るもなかなか出てこない。

すると突然スマホを取り出し、画面を高速で数回タップする。

何してんだこいつ。

最後に強烈な一撃をスマホに叩き込み、スマホを机の端に置く。

そして両腕を椅子の背もたれにかけ天井を仰ぐ。

大丈夫かこいつ……。


「センセーイ!先生って彼氏居ますかー!?」


あ、こいつ食料がなくなったから関係ない質問で暇つぶしを始めたな。

美玲が先生と呼んだのは教卓の後ろに座りながらパソコンで作業をしている教師。

一年9組の担任、桜木 詩織先生だ。

彼女は、誰もが振り返るほどの美しさを持っていた。

いや、どちらかというと可愛い系だから可愛さか。

ふんわりとした黒髪は肩まであり、少しだけタレた優しい目元が知的な雰囲気を和らげている。その清楚で愛らしい美しさは、まるでアイドルか、物語に出てくるお姫様のようだった。

その美貌ゆえ、学年では蓬野高校で一二を争うほどの美人と言われている。

美玲が質問したことにより桜木先生はパソコンから目を離し、美玲の方を向く。


「えー、彼氏?ちょっと恥ずかしいな…」


「お、この感じはいるんですね?」


何故か先生もちょっと乗り気である。

照れた様子がとても可愛らしい。

美玲はセクハラをするおっさんのようで気持ち悪い。


「えーでも…うーん…内緒!」


「なーにぃ!?じゃあ今まで居たかとか」


内緒と言われても美玲はめげずに質問を続ける。


「そりゃ何人かはいるわよ?」


「なーにぃ!?どんな人?」


「ごめん美玲その『なーにぃ?』ってやつやめろ。やっちまったなぁ!が無いとムズムズする」


「あぁごめん。やっちまったなぁ!」


そういうことじゃないんだよなぁ…。


「で、で、どんな人?」


美玲が攻め、桜木先生は少し押されている。


「えぇ…それもちょっと…。個人情報だし…」


「いいじゃんそんくらい教えてもさぁ。言わないんだったら彼氏がいるか居ないかぐらい言ってよぉ…ねぇ?」


なんか北斗の拳のモブにいそうな喋り方をしている美玲。

桜木先生はモジモジとしている。可愛いな。


「もう!わかった。わかりました!居ます!居ますよ彼氏!」


「ほっほー!やっぱりね。その見た目で居ないわけないもんね。で、どんな人?」


居るか居ないかを聞いてたのに更に先を聞いてきたやがったなこいつ。

先生も、もう戻れない場所に来てしまったので特にためらわず言う。


「えっとね…かっこよくて、優しくて、あとちょっと抜けてるところかな」


照れたようなニヤケ顔をする桜木先生。

確か今年で25歳と言っていたが、まるで僕達と同じ年齢に見えるくらい可愛かった。


「抜けてる…?ネジとか?」


「いやいや、そっちじゃなくて。ちょっと天然っぽいっていうか、私が居ないと駄目な感じなのよね~」


「つまりはヒモってこと?」


「おい止めとけ。相手はアレでも幸せそうなんだ。ヒモと認識させると破局の火種になりかねん」


ちょっと鈍感なんだよこの人は。


「う~んでも、間違ってはないかもね。ご飯とかもいっつも私が用意してるし」


もうヒモと認識していたわ。

その上で、養ってるパターンだ。


「そういう男とは別れたほうが良いっすよ」


「でも、とっても優しいのよ?」


優しくてもヒモはヒモだ。クズはどこまで行ってもクズなのである。


「あ、いけない。ほら、まだ問題終わってないでしょ!早くやっちゃいなさい!」


「「はーい」」


僕と美玲は強制的に手元の問題に取り組まされる。

しかし、不意に美玲の方を見ると先生にバレないように机の下でスマホを見て小さく呟いている。


「お、もうそろそろ来るな…」


「?」


何だと思っていると突然教室のドアが開けられ、見覚えのない男が入ってくる。


「すんませーん、Uber◯atsでーす。ご注文の商品お届けに参りましたー」


Uber◯ats!?誰だそんなん頼んだの。


「はーい」


お前かよ!

美玲は笑顔で席を立ち、Uber◯atsの人の方へ歩いていく。

つか、よく入れたな。

先生はポカーンとしている。

荷物を受け取った美玲はハイテンションで席に戻り、置く。

マックかよ。臭ぇわ。

そこでポカーンとしていた桜木先生が動く。


「ちょ、ちょっとだめでしょ!補修中よ!?何平然と食べようとしてるの!?」


「え、だめなの?」


灰田ならいけたけど、桜木先生は無理だな。目の前で食うのは。


「これは没収します!」


そう言うと先生は美玲のビッグマックを取り上げる。


「あああ!!!!」


目の前で親を殺されたような反応をする美玲。

というかマック没収って何だよ。


「お願いします!食べさせてください!お願いしますぅ!!」


「駄目です!」


足元にすがりつく美玲の言葉に耳を傾けない桜木先生。


「頼むからさぁぁーーー!!!!!」


「藤原っぽく言ってもだめです!」


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