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大体予想した点数より低いのが僕

 じりじりと焼けるような強い日差しが、アスファルトを揺らめかせている。

容赦なく照りつける太陽の下、だらりと垂れ下がった制服のシャツはじっとりと汗を吸い込み、僕は重い足取りで坂道を登っていた。

額から一筋の汗が流れ落ち、顎からぽたりと地面に滴る。

僕はシャツの首元を引っ張り、どうにか熱気を逃がそうと試みるが、熱い空気は容赦なく全身にまとわりついた。


「あ”っ”つ”い”!!」


流石にこの暑さじゃいつものように走っていくのが面倒くさくなってきた。

僕はカバンからノートを取り出し仰ぐが、流れてくるのはヌルい風だけ。

フラフラと坂を登りきり、ようやく学校が見えてきた。

全く、家が遠すぎるというのも考えものだな。


「ん?」


やっと学校につきそうなのに、走ることより面倒くさそうなやつが校門前で立っていた。

奴は真夏だと言うのにまだ冬服で、サラサラな髪が微かな風で揺れている。

そして、全く汗をかいていない様子で腕を組み目を瞑っている。

僕が近くに来るとそいつは僕へ声をかけてきた。


「待っていたぞ神白塁」


橘煌は低い声で僕へ語りかける。

それを僕は「あっちー……」と無視する。


「フッ…無視か…面白い」


橘は僕の後ろを蠅のように引っ付いている。

僕は気にせず下駄箱まで歩いた。


「貴様の実力を軽視していたことを謝ろうと思ってな。お前は強い。霊力での身体強化だけとはいえ、この俺に勝ったのだ。あちらの世界ならば勇者にもなれただろう。おっと、こっちの奴は異世界を知らないのか。すまんな」


なにこいつぶん殴って良い?

暑さによる苛立ちとこいつのウザさが故に拳を出そうか出さないか考えていると後ろから強い衝撃を受ける。


「よっす塁くん!汗ヤバいねー!体ン中にサウナでも経営してんの?」


美玲だ。

あいも変わらず、元気である。

美玲は僕の後ろにいる橘の存在に気づいたのか「あ」と声を上げる。


「お前は!!えっと…えー…誰だっけ?」


「橘だ」


「そうそうタチバナタチバナ!って何故貴様がここにっ!!」


美玲は橘へ戦闘態勢を取る。

橘は余裕そうな表情を崩さずポケットに手を突っ込んでいる。


「ふっ…単純なことだ。俺はもう一度こいつと戦いたい。ここまでの強さを持つものはそうそう居ない。今度は魔法…おっと、こっちでは”異能”だったな。その異能を使って戦いたいんだ」


「なーんだ、そんなことか。フッ…だったら残念だったな。塁くんと戦いたいんだったらまずは私に話を通さないとなんだよ?」


「なに?」


「知らなかったのかい?塁くんは私の舎弟であり、弟子なんだよ。だから親分であり、師匠である私と話を通さないとってこと」


「僕はお前の舎弟にも弟子にもなった記憶はない」


「ふむ、なるほど…」


え?信じてる?


「だったら、お前を俺はこいつにも勝ったことになったわけか…」


「フッ…やってみなヌーブ!」


二人がなんかバトってる間に僕は下駄箱に着き、上履きを履いて階段を登る。いつもより足を早めて。

何故かって?

僕はいつものように涼しい教室を求めているんだ。

あのエアコンが着いている教室を!!


「っふーう!冷気ー!!…あれ」


教室のドアを開けるが全く涼しくない。涼しくないどころか暑いまである。

うん、暑いわ。外より暑い。


「どうなってんだぁ!!」


僕が机に荷物を置くと、洋介が僕に話しかける。


「おはよー。なんかエアコン壊れちゃったみたいだよ。暑いねー」


久しぶりの登場だな。

洋介は赤シートで自身を仰いでいる。


「エアコンが壊れたぁ?」


「うん。もともと調子悪かったらしいけど、ついに逝ったらしいよ」


「マジか…」


僕生きていけるかな。


「困っているようだな」


振り向くとそこには先程美玲とやり合っていた橘が立っていた。

そして横にはバチボコにされた美玲の姿。負けたのか。

こいつなんでこんな汗かいてないんだ?


「てめぇに借りる手なんかねぇよハゲ!」


「おいおい、俺はお前らを助けてやろうというのにどうして拒むのだ?」


「てめぇ初期と性格変わりすぎなんだよ!」


「それは仕方ないだろう。安定しないんだから」


さて、メタい話はここらへんにしといて。


「そりゃ今は困ってるけど、てめぇにどうこうできるもんじゃねぇぞ」


「俺を見くびってもらっては困るな」


何こいつ機械オタクかなんかかの?


「じゃあやってみてくださいよぉ。このサウナ教室を涼しくしてみてくださいよぉ!」


「そうだよハゲ!」


僕と美玲で橘を煽る。

橘はやれやれといった感じで床に指を置き軽くなぞる。

そして勢いよく叫ぶ。


「フローズン・レクイエム!!!!」


するとなぞった部分が光り、魔法陣が浮き出る。

そこから凍てつくような冷気が吹き出し、教室中を包む。


「なッ!!」


「これはッ!!!」


さっきまで砂漠のように見えてた教室が一気に北極へと変わる。

だが、寒くはない。先程までの暑さが緩和され、丁度良い気温だ。


「「涼スィー!!!!」」


僕と美玲は喜びの舞を踊る。

橘は得意げな顔をしている。教室にいる連中は何がなんだかわからないような反応をしている。

こいつの異能か?


「な、何をした!?」


僕が橘に聞くと橘は「フッ…後でな…」と言って教室を去った。


「お?なんだいつもより涼しいな。もう秋か?」


それと同時に灰田が出席簿を持って教室に入ってくる。

灰田は「まぁいいか」と言った感じに前に立ちこう言い放った。


「よーしお前ら席につけー!今日はお前らの地獄、テスト返しだ。震えて座れや」


さぁ本当の地獄のスタートだ。

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