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師匠は3DSが好きらしい

先輩に言われて、大人しく待つことにした僕。

暇だったので家の庭を歩き回って池の鯉見たり、木になっているミカンをつついたりする。

遅いな―。

ていうか。


「いつまで睨んでんだよ」


「永遠にだ」


先程から僕が少しでも動いたり、なんなら動かなくても僕のことを監視するように睨んでいるには氷室先輩のお姉さん。


「貴様は鏡花に何をするかわからん。だから私がここで見張っているのだ」


そんな格好で言われても……。

可愛らしいパジャマに身を包んで、腕を組む。


「そういや、あんた名前は?」


「貴様に名乗る名などない」


「じゃあ辻斬り……」


「氷花よ。氷室氷花」


先輩のお姉さんと話していると、ちょうど氷室先輩が出てきた。

氷室先輩は、清涼感のある水色のノースリーブニットを身につけていた。鎖骨が美しく見えるVネックのデザインで、彼女の澄んだ瞳の色と相まって、大人の女性らしい上品さを感じさせる。ボトムスには、涼しげな白のワイドパンツを合わせ、その立ち姿は凛としたクールな雰囲気を漂わせている。

随分キメてきたな。


「その…どう?」


顔を赤らめながら体を傾ける氷室先輩。

めんどくさいし触れんとこ。


「さ、行きますか」


「………」


なんだろう背中に感じる殺気が増えた。

師匠がいる神社は結構近いところにいるから、そこまで時間はかからないだろう。

僕と先輩と氷花さんの三人で先輩のご実家を出る。

ん?三人?


「って、なんであんたまで着いて来てんだ!」


「さっき言ったろう。貴様が鏡花に何かしないか見張るんだ」


そう言って氷花さんは腰にかけた刀を握る。本当に辻斬りみたいだな。


「大丈夫よお姉ちゃん。塁くんはそんな事しないから」


「ソウソウ!ナンモシナイヨ!」


うげ、目つきが悪くなった。


「っけ!まぁ好きにしろ」


僕は少し足を早めて歩く。


「…ねぇ、これから何するの?」


「あいつの師匠に会いに行くの」


小声で話す二人。


「なんで?」


「あいつの剣術、私達のと似てるのよ」


「どういうこと?うちのは秘伝のでしょ?」


「私もよくわかんないわよ。けど、その剣術を教えてる師匠がいるらしくて、その人に会いに行くの」


「そろそろ着きますよ」


神社が近くなってきたので、口を挟む。

二人も会話を止め、足を早める。


「ちょっと面倒くさい人なんで、そこら辺は考慮してください」


「あ、はい」


なんで敬語になってるのか。


「ここっす」


「え、ここって………」


神社につき、僕は鳥居の方を指差す。

すると、二人は鳥居の横の社号標に書かれた文字を見て驚いている。

なんだ?

そこに書かれているのは『氷室神社』の文字。

あれ?氷室……?

そのタイミングで奥から、白いワンピースを着た巨乳の女性が走ってくる。


「塁坊~!!!」


そして、思いきり僕に飛びつく。


「ゲフゥ!!」


一瞬倒れそうなったものの、なんとか足に力を入れて体制を戻す。


「ハーゲンダッツの在庫が切れた~!買ってきてぇ~!!」


「師匠、お客」


「よ?」


そこで師匠はこちらを蔑むような目で見ている二人に気づく。


「あんた…一人で何してるの?」


「やっぱり、こいつは変態か精神異常者ね。帰りましょう」


え、どういうこと?


「師匠、どういうこと?師匠が視えてないってこと?」


「視えてない?何言ってるの?」


先輩が眉をひそめる。


「そりゃそうじゃろうて。だって儂、視せてないもん」


「じゃあ、視せてあげてよ。このままじゃ僕変態になっちゃう」


「強ち間違いではないだろう」


「大間違いだわ。変態だとしても変態という名の紳士だよ」


そこで師匠は僕から降り、目を閉じ「仕方ないの…」と言う。

そして、先輩の瞳に師匠の姿が移る。


「え1?だ、誰?いきなり?」


先輩は戸惑っている。


「モノノケ?」


氷花さんは刀を抜き、構える。


「止めておけ。(わっぱ)……」


パチン!


「ッ!!」


師匠が指を鳴らすと、氷花さんの刀が手から消え、師匠の手に移る。

氷花さんは混乱している。


「な、何をした!?」


「何って…取った」


「取った……?」


うわーなんか三人でバチバチしてる~。

めんどくせぇ…。僕もうさっさと帰りたいんだけどな。疲れたし。


「はい!喧嘩終わり。師匠もやり過ぎですよ」


仲裁仲裁。


「そうじゃの。からかい過ぎたわい」


師匠は氷花さんから取った刀を適当に投げ渡す。

氷花さんは「おっとっと…」と刀をなんとかキャッチする。


「まぁ良いわ。入れ」


師匠はそう言うと、いつもの幼女の姿に戻る。

そして、僕もその後ろを歩くと師匠が僕の方へ小走りでトトトと走って、僕の肩へ乗り、肩車をする。

うーんやっぱ師匠はロリじゃないとね。

最高だぜ!グヘヘヘ。


「のぅ~ハーゲンダッツ買って来てくれんか?」


「え~もうなくなったんですか?僕もそんなジャンジャン金出せるわけじゃないんですよ?結構高いし」


「え~」


師匠と話す僕を見て、先輩たちは渋々着いてくる。

とりあえず話ができる場所を用意するためにお社の戸を開ける。

そこに広がるのは、ハーゲンダッツのゴミが散らかった床に、起動済みの3DS、そして冷房ガンガン。


「ったく……カゲロウ!」


僕は冷房を止め、3DSを閉じ、カゲロウは床に落ちてるゴミを片付ける。

そして、部屋の隅に立てかけてあるちゃぶ台を真ん中に置く。


「さ、じゃあ対話の場は用意しました。僕は帰りますね」


僕は回れ右して帰ろうとする。

しかし、先輩が「ちょっと待って」と言って僕の襟首を掴む。


「なんすか?」


「説明役が必要でしょ。残りなさい」


「え~、僕ゲームやりたい…」


「だめ」


「……はい」


帰るのは遅くなりそうだ。

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