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第五十話:んゅガイジ


「あ、動いたよ」


その言葉に観戦組は窓から中を見る。

地面に叩きつけられた波月は動けそうにない状態。

すると、一撃で壁まで飛ばされた橘は腹を抱えながら立ち上がる。


「ガハッ!ゲフッゲフッ!!」


口元を抑えながら咳き込む。

手を見ると口から吐き出された血液が自身の手を濡らしていた。

霞む目で塁を睨む。

ニカッとした笑顔でこちらに歩み寄る塁。

通った床にはくっきりとした足跡が残されていた。


「ペッ!」


橘は血を吹き出し、すぐに構え霊力を拳に集中させる。


(好敵手…血の味は、久しぶりだな……)


あの弱そうだったやつがこんなになるとは…そういえば人は見かけによらないとあいつが言っていたなと心の中で呟き、塁へ高速移動する。


「があああぁぁぁぁ!!!」


しかし、無意味だった。

この状態の塁は先程までとは段違いな速度とパワー。橘では対処できないほどに。


「ーーーーーッッッッシャァアアッ!!!!」


ッパーンドゴォォォ!!!!


とてつもない威力の蹴りで完全に意識を失う橘。

そのまま観戦席の窓ガラスを突き破り、倒れる。


「きゃあ!」


ガラスで体中から血が流れている。

橘だったもの(生きて入る)はもう動かなかった。

それを見ながらウルトラムキムキ塁はこう言った。


「つい勢い余って◯しちゃった(生きている)♡♡♡♡♡でも僕を怒らせたお前らが悪いんだぞ♡♡♡♡♡♡♡♡◯ね♡♡♡♡♡」


パシャ!


近くに落ちていた弾け飛んだ服の中からスマホを取り出し、ボロボロの橘を背景に自撮りをするウルトラムキムキ塁。

画面には自分の顔に犬の鼻、頭部には犬の耳、そして全体的に白いキラキラが付いたエフェクトをして、顔の横で拳を握りしめたあざといポーズをしている塁。

うなだれている橘を見て美玲は「大文字焼き見たい」と言った。


「うそ…だろ……橘さんがやられるなんて……」


気づけば頭からも血が流れている波月は震える体を動かしうめいている。

それに気づいたのかウルトラムキムキ塁は首を180°回転させ振り向く。


「ヒェ…」


その様子を見た空蹴は恐怖を覚える。

そしてウルトラムキムキ塁は波月に近づき、しゃがみ込む。

ボロボロの波月を眺めて、手のひらをあげる。

そして………。


「くたばれオラァッッッ!!!」


そのまま波月を潰した。


ズギリュゥゥゥッパァァァン!!!!


しかし、塁は止まらない。


「まだまだぁぁぁぁっ!!!!」


ズガガガガガガバギュゴォォン!!!


その様子を見て塁以外の者は顔を真っ青にして絶句する。


「ば、バケモンだ……」


「入んのやめようかな……」


などと皆恐怖していた。

すると、波月だったものが声を上げ、様子が変わった。


「ん………んゅ~♡」


異様に平べったく、そして不細工になった。


「アッ!に、逃げるな!!!」


波月は自身の異能を発動し、ぬるりと塁の攻撃から抜け出し、小さな壁の隙間に入り込み逃走した。

塁は波月に逃げられた。

いや、あの様な面妖な姿に成ったものはもう波月でもない。

潔く負ければ『んゅガイジ』で済んだものを、やつは逃亡した。故にやつはんゅガイジの成れ果てだ。


「はーいストップストップ!終わり終わり!終了!!!」


追おうとした塁の前に立ち、止める空蹴。

それで冷静に成ったのか体が一気にしぼんでいつもの姿になる塁。


「ふぅぅーー………」


大きなため息を吐いて、伸びをする塁。


「終わった?」


ウルトラムキムキ塁状態の時とは全く違う、なぜか爽やかな雰囲気を散らす普段の塁は髪をかき上げながらそういった。


「終わったっていうか、君が終わらせたっていうか……つーか今のなんですか!?」


「ん?ウルトラムキムキフォルム」


「いや、わかんないわかんない」


「良いんだよ分かんなくて」


「はぁ……ま、まぁとりあえず、君の優勝です。おめでとうございます」


「うぃー」


空蹴の言葉に耳を傾けるのすらめんどくさそうな塁。

そんなとき、空蹴はあることを思い出し、塁を引き止める。


「あ、そうだった。塁くん。社長がお呼びです」


「えぇ、僕なんかしたっけ?」


「いえ、お叱りではないです。多分何か連絡事項でしょうね」


だったら良いか。

ん?なんか観客席のほうがうるさいな…。

僕は部屋を出て、観戦席のほうまで向かう。


「やぁやぁ終わったぜ。僕が一番強かったって…」


部屋に入ると橘がボロボロの状態だった。


「あぁ、あの人怒りそうだな……」


めんどくさそうな声を上げ、僕の後ろから出てきたのは空蹴。

あれ、こいつフィールドの修正とかで忙しいんじゃないのか?

窓からフィールドを見ると下っ端の奴らにやらせてる。うわ~。


「お疲れ様です。主」


カゲロウが優雅に頭を下げる。


「おう、疲れた」


僕がカゲロウを影の中にいれると置くから千弘達が走ってきた。


「お疲れ様ー塁くん!すごかったね!」


はしゃぎながら僕に抱きつく千弘。ほぉぉぉぉぉ!!!!!

落ち着け!僕の息子よ!!!

今は賢者タイムだろ!!!!!


「はい褒美」


そう言って僕の右頬にイカ焼きさん太郎を押し当ててくる美玲。

良かった。萎んだ。


「お疲れ様塁君。頑張ったね」


僕の頭を撫でてくる佐倉先輩。この人包容力すご。


「おつかれ。最後のすごかったけど、ちょっとやり過ぎ」


少し怒るように褒めてくる氷室先輩。

へっツンデレか。


「抱いてやるぜ、塁!」


怖い。


「さぁさぁ、打ち上げと行こうやぁ!どこ行く?焼き肉?寿司?」


「あぁ、悪いけど先行っててくれ。僕ちょっと社長に呼ばれててさ。行かなきゃいけないから」


「えー、何したの塁くん?とりあえず切腹しとけば?」


「んな軽いノリで殺されてたまるか。そもそもお叱りじゃねぇし」


「ふーん…ま、早めにねー」


美玲たちは皆で話しながら部屋を出ていく。

さて、さっさと終わらせていくか。

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