第四十二話:ビフロストってのは虹の橋ね
次の日の放課後、蓬野高校のモノノケが見える組の連中に集まってもらうことにした。
メンバーは僕、美玲、千弘、稽太、佐倉先輩、氷室先輩の6人だ。
氷室先輩はクレイルの隊員ってことで、空蹴と同じような感じだがその他は皆クレイルを知ってたり、知らなかったりといろいろだ。
「2年生組遅いねー」
ちょこんと椅子に座りながら足をブラブラさせている千弘。
「稽太を呼ぶのはちょっと怖いな…」
「ねぇねぇ、そのゲイタって人誰?」
そっか、美玲たちは稽太のことを知らないのか。
「稽太ってのは、ちょっと前に会った異能力者で…ああ、フルネームは寺岡稽太って言うんだけど」
「あ、僕知ってるよ!」
そのタイミングで千弘が可愛らしく手をあげる。
「知り合いなのか?」
「ううん、でも空手部の人でしょ?僕の友達が空手部で、そのゲイタって人がすごいって聞いてるんだ。でも、その人怖いとかヤバいとも聞いてるんだけどそうなの?」
うーん、まぁ怖いっちゃ怖いけどお前らの思う怖いとは違うんだよな……。
「ごめんなさい!ちょっと遅れちゃって!」
そのタイミングで佐倉先輩と氷室先輩が入ってくる。
「おつかれっす。なんかあったんすか?」
「いやーちょっと先生の話が長くてねー。カモノハシは宇宙生命体だって言って聞かないんだよー」
なにそれめっちゃ面白そうじゃん。
「塁くん塁くん、何度もすまないが彼女らは?」
「えっと…二年の佐倉琴音先輩と知ってると思うけど、氷室鏡花先輩。どっちも視えるタチの人」
「なるほどね~」
納得したように自家製のおにぎりを二人に配る美玲。
やめておけ、戸惑ってるだろう。
ちなみに美玲は初対面の相手にいつもこれをする。最初に借りを作っておいて、後々になって倍にして返せと言ってくるというとんでもなくたちが悪い戦法だ。僕もやられた。そして喰われた。
「さて…とりあえず殆ど揃ったかな?」
後来てないのは、稽太だけか。
「全員揃ってない?」
首を傾げながら言う千弘。
「何いってんだ。稽太がまだ来てないだろ」
「え?来てるよ。ほら」
そう言って千弘は天井を指差す。
「へ?」
上を見上げると、そこには天井に張り付く稽太がいた。
「やぁ」
「ぎゃああぁぁぁぁ!!!」
一撃パンチを食らわせて天井から落とす。
「何してんだてめぇ!!」
「うむ、やはりいいパンチだ。ワンチャンイケるかもと思って張り付いていたが無理そうだな」
何狙ってんだこいつ。
鳥肌エグすぎてサボテンみたいになりそう。
「じゃ、じゃあ全員揃ったことだし出発するか」
6人で校門前まで歩いていると、門に寄りかかっている空蹴を発見する。
「やぁやぁ、遅かったですね。さぁどうぞ」
そう言う空蹴の横には小型のバス。大体7~8人くらいが入るタイプのやつだ。
適当に全員挨拶を済ませて中に入り、シートベルトを締めると、車はすぐに発進する。
「ところで、この後何があるの?」
と佐倉先輩が僕に聞いてくる。
「昨日メールしたクレイルってところの本部に行きます」
「ふーん、でも私みたいなのが行ってもいいの?」
そのタイミングで空蹴が口を開く。
「視えるだけでも居てくれたらありがたいんですよ。滅多に居ないですからね」
戦えたらもっと嬉しいですけどね、と付け足す空蹴。
「私は後天的な方なんだよね?でも、そうすると先天的にある人のほうが有利なんだな~」
「そうでもないわよ」
氷室先輩も入ってくる。
「生まれつき異能がない人も時々いるわ。大体三割くらいね」
「え、じゃあ僕みたいに霊力がない人もいるの?」
氷室先輩は少し考えてから「流石にあんたみたいなのは見たことないわね。そもそも霊力は少ないだけで一般人もあるからね…」と言う。
つまり僕はチンパンジーみたいなもんなのか?
「血筋で霊力が多かったり、異能を受け継いだりとかもありますよ。けど、大体世代を重ねるごとに薄れて新しい物になっちゃいますけど」
「俺なんかはそれだな。親父が霊力多いし、異能も俺と似たようなものだ」
なんか僕達『異能とかあんま良くわかんない組』が取り残されてるな。
それにしても、なんかいつもより美玲が静かだな…。
ふと気になって、美玲の方を確認すると美玲は真っ青な顔で口元を両手で抑えている。
まさか……………。
「お、おい美玲?どうした?」
「う”……」
と女子が出してはいけないような声を出す。
それに気づいたのかルームミラーに空蹴の顔が映る。
「は!?ちょ、ちょっと待ってください。この車借り物なんですよ!!僕が怒られますから!!」
「と、とりあえず止まって!そこのコンビニまで………」
僕の言葉を最後まで待たずに美玲の口から下界へ誘うビフロストが放たれた。
今日の教訓は美玲は乗り物に弱い。




