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異反者  作者: 二代目とくとくかい
第一部:慚愧服膺篇
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第三十話:ヤバいのが居る


「…………」


僕は氷室先輩のその言葉に沈黙で返す。

その通りである。

僕は通常、クレイル(ここ)に居てはいけないのだ。

クレイルの隊員になるなんて、ほぼ自殺行為だ。

そんなとこで僕が『鹿骨』だとバレたら、速攻で首を切られてしまう。

文字通りね。


「えっと…どうしたの?二人とも……」


僕と氷室先輩の表情が曇るのを心配そうに見ていた千弘が僕の顔を覗き込むように体を屈める。


「いや、なんでもない。こっちの話」


「……そっか。分かった」


まだ。

まだ言えない。


「さ!そろそろ始める時間よ。皆トイレとか、水分補給とか済ませなさい!」


氷室先輩のハリのある声で皆、各々の準備を始める。


(守るの稽太だけで大丈夫かな……中鳶とか千弘とか、戦いの経験皆無だからなぁ……)


僕は取り敢えずストレッチを始め、心のなかで物思いにふける。


(あ、良いこと思いついた)


そこで僕は名案を思いつき、ストレッチを中断し、千弘の元へと脚を運んだ。


    ◇


場面は代わり、クレイルの隊長達が集まる『クレイルチーム』陣地。


「じゃあ索敵と情報共有が出来る久我山さんを陣地に残し、異能も久我山さんので異論ないですね」


空蹴を中心に海良木、星野、久我山、氷花は円状に並び、作戦会議をしていた。


「ああ、俺はそれで構わないぞ。俺と星野のは殺傷力が高いからな。新人相手に後遺症が残るほどの傷はつけられん」


腕を組んで地面に座る海良木は淡々と告げる。


「俺も。けど…正直ここに残ってたい……」


膝の上に草をモシャモシャと食べるウサギを乗せ、そのウサギの頭を撫でながら言うのは星野。

彼は未だに眠たげな表情だ。


「ところで、新人達(あいつら)の情報って持ってないの?」


その中で一人ずっと不機嫌な人物が居た。

神白累の天敵である氷室氷花である。

その鋭い眼を見て、星野は隣りにいた久我山に小声で問う。


「なんか、いつもより不機嫌じゃない?」


「鏡花ちゃんが男の子といたからちょっと気にしてるんだと思います」


「そっか…シスコンだもんね……」


二人でコソコソと密談をする姿を見る氷花。


「何話してるの?」


「「いや、別に。何でもないです」」


二人は背筋をピンと伸ばして、身の潔白を証明する。

氷花は「? まぁ良いわ」と顔を背ける。

その氷花に空蹴は新人たちの情報が載った書類を渡す。


「新人の情報ですね。大方調べがついていますので、どうぞ」


空蹴が差し出した書類を受け取り、一枚一枚目を通していく。

すると、ちょうど塁のページで書類を捲る手が止まる。


「霊力が…ない……?」


「あぁ、神白くんですか。そうですよね、最初は僕も驚きましたよ。彼、生まれつき霊力が全く無いんですって」


その言葉に海良木たちも反応する。


「霊力がない?それじゃあ一体、どうやってモノノケと戦うっていうんだ?」


「肉体の強化も出来ないんじゃないか…?それだと………」


「入隊すら厳しいんじゃ…」


三人が互いに累について意見を出し合っていると、空蹴が「そうとも限りません」と遮る。


「なんと彼、珍しい式神使いらしいですよ。体の形を自在に変えられる式神を武器のように使ってモノノケを祓うらしいです」


「式神使い?珍しいな。…しかし、それだとしても霊力がないというのは大分デメリットではないか?」


海良木は(そもそもモノノケ視えるのか?)と心のなかで疑問に思う。

その言葉を遮るように試験開始10分前の鐘が鳴る。

その音とともに隊長たちは立ち上がり、陣地の前に立ち並ぶ。


「どちらにせよ、この神白累とかいう鏡花に群がる蟲は脅威には成り得ないというわけね…」


「氷花ちゃん、その言い方は良くないんじゃ……」


    ◇


またも場面は変わり、今度は試験を閲覧する閲覧室。

そこには二人の人物が居た。


「社長、柿の種食べるっすか?美味いっすよ」


「遠慮しとくよ。そもそも私は人間の血液しか飲めないんだ。普通の食料はあまり美味とは思わない」


「あ、そうっしたね。すんません」


アルヴェールに柿の種の袋を差し出すも断られ、謝罪をしながら口の中に柿の種を放り込んだのはクレイル第八部隊隊長、創城陣(そうじょうじん)

金髪で少しチャラく、若く視えるが年齢は30を超えているという。

クレイルの盾のような存在であり、結界術を扱う異能を持った異能力者である。


「そういえば、神白くんたちの学校について、なにか分かったかな?」


「ん?ああ、はい。ちょっと視てきたんすけど、結構やり手の術師っすね。殆ど痕跡が残ってなかったっす」


柿の種のピーナッツを指では弾き、口の中に放物線を描いて入れる。


(突如降ろされた結界…それも精神世界に関与するという器用さ……相当な技量の持ち主だね)


あるヴェールは口元を覆うように手を顔に当て、考え込む。

その様子を見ていた創城が「あ、あと一つ」とアルヴェールに告げる。


「痕跡は殆ど残っていなかったとは言え、一応残ってるは残ってたっす。けど、可怪しい点がありましてね。……見つかった痕跡、二つだったんすよ」


「それのどこが可怪しいんだい?」


「痕跡は二つしか残っていなかったんすけど、その二つとも……」


創城は空になった袋を空に投げる。

その袋は突然現れた四角い平面なゲートのような物の中に入っていく。


「別の人物の痕跡でした」


「…………」


アルヴェールは沈黙する。


「いや、別の”人物" ってのは違うっすね。正確には一人の人間と、一匹のモノノケでした。俺は霊力探知はそこまで得意じゃないから、分かんないっすけど、蓬野高校で以前から見つかっていたモノノケの痕跡と視て良いでしょう」


「………つまり?」


アルヴェールは創城の結界術によって映し出された試験会場の映像を眺めながら言う。


「あの学校には…何かが居るっす。それも超ヤバいのが」


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