第三話:すごく痛かった
なぜか僕はベンチに寝かせていた女子学生にぶん殴られて3~4m吹っ飛ばされた。
殴られた右頬からはシュウシュウと白い煙が出て、普通に殴られたのによくYouTubeとかで見る1000度の鉄球を当てられたように熱いようであった。
いやまぁ当てられたことないから分かんないけど。
「クッソ痛ぇぇ!!」
僕が両手を地面について苦しんでいると、氷室さんが驚いたような声を上げる。
「嘘…異能…!?」
「んな?そういや、どこだここ」
ベンチから体を起こした僕を殴った野蛮女はヨダレを垂らしながら周りを見渡す。
「あ、あなた…異能が使えるの…!?」
「んな?い、異能?伊能忠敬?」
「なんか聞いたことのある返答ね…」
「ていうか、ここどこですか?それと、なんだお前!今私を食い殺そうとしたな!」
野蛮女はベンチの上に立ち上がって僕に指をさす。
「ぐごごぉぉ!ぐげぇ!!」
「おら!観念しろ!」
野蛮女は僕の首に思い切りスリーパーホールドをかける。
「ちょ、ちょっとストップストップ!」
それを制する氷室さん。
閑話休題。
「なるほどなるほど、つまりは化物が私を助けてくれたと?」
「「そういうこと」」
「なるほどねぇ…ま!ご苦労さん!」
野蛮女は僕にグッドサインを立てる。
「ぐごごぉぉ!ぐげぇ!」
僕は野蛮女の首にスリーパーホールドをかける。
閑話休題2。
「それで、あなたさっき異能使ってたわよね?あなた、異能力者なの?」
「異能?ってのはよく分かんないんだけどさ。とりあえず、お二人の名前を教えていただけない?」
「ああ、そうね。私、氷室鏡花。こっちは…たしか累くんだったっけ?」
「そっすね。神白累です。小さい女の子が好きですが、ロリコンではないです」
「何言ってんのよあんた」
「何でもないです」
「? まぁいいわ。で、あなたの名前は?」
氷室さんはよく分からないような顔をした後、野蛮女へと向く。
野蛮女は「人間?」と言いたげな顔をしている。
「私は朝倉美玲、一年生さ」
「工藤〇一、探偵さ」みたい。
「そういや、お二人も蓬野高校の人?制服同じだし」
「そうね。そういえば、うちの制服着てるわね」
言われてみれば、氷室さんは僕と同じ蓬野高校の制服を着用している。
「なーんだ、二人とも新入生ってわけね。じゃあタメで良いや」
「私二年生よ」
「えぇぇ!?」
まずい!よくわかんないけど、漫画とかじゃ先輩にタメ聞いたら島流しにされるって…。
いやだ!火炙りはいやだ!
「そんなことしないわよ。まぁ、二人が新入生ってことは分かったわ。けど、どうして廃館にいたの?」
「「道に迷ってました」」
「二人そろってバカってことね」
失敬な。
僕は不可抗力だと思えば不可抗力に聞こえなくないぞ!
「ん?でも、道に迷ってて、なんであそこに入るわけ?」
すると美玲が話し出す。
「私、あんまよく覚えてないけど、なんか近所の人が道教えてあげるって言ってあそこ入って…この後はよく分かんない」
なるほど、そこのタイミングで捕らわれたと。
「僕は道迷ってたら、こいつ見つけて、道を聞こうとしたらあそこに入ってったから…」
「なるほどね。仕方ないっちゃ仕方ないけど、知らない人の家に入る意味が分からないわね」
「お腹空いてたんで…」
そう言って顔を少し赤くしながら頭をかく美玲。
「だとすると、あなたモノノケが”視えてた”ってこと?」
「モノノケ?」
ここら辺は面倒くさいから、カット!
「へーそんなのいるんだ。…まぁ多分そうだと思いますよ。最近からなんでか変なのが視えるようになったんで」
「後天的な覚醒かしら…珍しいわね」
そこで、僕は手を挙げる。
「あのー、モノノケっていわば幽霊みたいなもんですよね。それって普通じゃ視えないんですか?」
「そうね。私が知らないだけかもしれないけど、生まれつき霊力が視える基準を満たしていないと普通の方法じゃ視れないわ。まぁ、いわゆる心霊スポットだとか、そういう場所では時折視えることもあるけどね」
「なんで?」
「そういう場所って人間も幽霊とかそういう類のものが居るかもって意識するでしょ?もちろんモノノケは常に人間を認識して意識している。そうすると、互いが互いを意識し合って、『共鳴』が起きるの。そうすると、時折視えるようになる事があるわ。これは心霊スポットだけに限るものじゃないの。例えば暗闇とか、人が住み着かないような山奥とか。『意識』や『認識』っていうのは、モノノケ(彼ら)にとって大きな意味を持つのよ。その者の存在を確かなモノにするっていう効果があって、視えるようになるのもこれが原因なんじゃないかって言われてる」
へー、じゃあ心霊スポットとかの映像で映るのも気のせいとかじゃないんだ。
「というか、氷室…氷室先輩って先天的に視える人なんですよね?そういう知識とかってあんまり詳しく知らないんですか?聞いてる感じ、触り程度~みたいな気がして」
「私含め、大抵の人が怪異側(こっち側)の知識を詳しく知らないわ。あまり確実な知識なんかが確立されていないの。そもそも視えるって人自体少ないしね。あなたは今までにモノノケが視えるって人見たことある?」
僕はしばらく考え、昔のことを事細かに思い出す。
「ないですね。小学校の頃の奴はホラ吹いてましたし」
「そういえば、さっき言ってた異能って?」
美玲が僕も忘れていた脱線した話を戻した。




