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第二十三話:美玲の異能?



生徒の間を潜り抜け、美玲の視線からも逃れ、僕はやっと校舎裏までたどり着いた。


「よし、ここらへんまで来たらいいだろう」


僕は額から流れ落ちる汗を拭いながら周囲を見渡す。

よし、居ないな。

にしてもここら辺ジメジメしてんなー。

お、キノコだ。

懐かしいなー。昔小学校の帰り道の茂みにちっちゃいキノコ生えまくってて引っこ抜いて遊んでたっけ。


「あ、主…………」


「うわっ、びっくりした!」


人気のないところ且つ、薄暗いからいきなり地面から声が聞こえたからマジビビった。


「なんだ、カゲロウか。声カッスカスやな」


「霊力……」


こいつは昔っから霊力の管理が苦手だから、ああやって自立型に成るとすぐ枯渇するんだよなー。

そういえば説明していなかったが、千弘のトラウマ領域展開みたいな空間でカゲロウが変身していたのは、いつもの形状変化の応用だ。

カゲロウの異能は自身の形状変化と硬度調整。毎回変化させる事に霊力を消費する。

その形状変化で一回人型に変化させて、関節なんかをすごいスピードで変化させることによって、曲げたり動いたりしてるように見えるだけで実際には結構複雑らしい。わかり易い例で言うと寄生獣みたいな感じ。見てないやつは見てこい。面白いから。

それプラス、霊力を開放して焼き払ったりしてたから、まぁそりゃ霊力なくなるわなって。

そのせいであの姿に成ると毎回この状態になっちゃうから、あまりやらせていない。

あの姿になった後はいつもそこら辺にいるモノノケを爆食いさせて霊力回復をさせている。


「つっても、ここらへんいるかなー」


「奥に…二体ほど……雑魚が…」


「よーし、わかったわかった」


茂みをかき分けて奥に行くと猿みたいなモノノケが二匹いた。

二匹のモノノケは、まぁ僕の経験も浅いけどただの雑魚って感じで小さい。

ショウガラゴみたいな見た目してる。

二匹のモノノケは互いに毛づくろいみたいなことをしてる。可愛いかもしんない。

こちらに気づいたモノノケは、「キーー!」と声をあげ、歯をギラつかせながらこちらに威嚇して来て、一匹が僕の方へと飛びかかってきた。

瞬間、僕の影から黒い手が出て、モノノケの首根っこを掴む。

掴まれたモノノケは「キーーー!!」と苦しそうな声を上げながら暴れまわる。

その暴れているモノノケを掴んでいる手に鋭い牙が生え、口に成る。

そして、モノノケを噛み砕きながら喰らっている。


バキッ!グシャ!ベキベキッ!!


「うわー、グロ」


最初は抵抗していたけど、食いちぎられていくについれて体がだらりとしてきて。最後の方は死体を喰っていた。

丸呑みしたとき、もう一匹の方は先程までの抵抗の意思は捨てたように恐怖に染まった顔をしていた。

そして次の瞬間には全力で逃げ出した。

それに合わせてカゲロウも腕を伸ばす。

足元から伸びる数本の手がモノノケを掴みこちらへ引き戻す。

暴れまわりながら奇声を発するモノノケ。

なんか、ごめん。


「キエエエェェ!!」


と最後に金切り声を上げて飲み込まれるモノノケ。なんか、色合いといい、捕食シーンといい、はたから見るとカゲロウと僕が悪役みたいに見えるかも知んないなー。


「どう?少しは戻った?」


「まだ、少し足りませんね。雑魚二匹喰った程度では……」


「そうだよね~、食べるんなら質より量だよねー」


「うんうん」


ん?

違和感に気づき、ギギギと首を後ろに向けると、そこには満面の笑みを浮かべた美玲が立っていた。

なるほど、次の獲物は僕か。


「ぎゃああああぁぁぁ!!」


「オラッ!吐け!オラ!」


スリーパーホールドを決めらる僕。

あ、ちょっと胸が当たってる。


「はぁはぁはぁ…」


少しして話してもらえた僕であった。


「な、なぜこの場所が!?」


すぐに飛び起き、戦闘態勢に入る僕。


「中鳶っちと探してたら、偶然見つけてさー。いやはや、こんなところにいたとは」


「まだ探してたのかよ」


「当たり前じゃん。まだ磔刑にできてないし」


「渡米しちゃってるよ。刑変わってるし」


「何言ってるの塁くん。磔はロシアだよ!」


「そうだっけ」


「そうだよ」


まぁ、場所なんてどうでもいいでしょ。


「だから何度も言うけど、あいつは男で、僕とあいつは防球ネットの裏で頭をぶつけて気絶してただけで、何もやましいことなんかしていない!」


「はぁ……塁くん。私はそんな子に育てた覚えないよ?」


ため息をつきながら肩を落とす美玲。


「育てられた覚えもねぇよ!!」


その時、僕の目に写った。

美玲の背後に先程カゲロウが喰ったモノノケと同じ種類のモノノケが突進してきていた。

そのモノノケは先程のよりも数倍の大きさを持ち、体もゴツい。

もしかしたら、あいつらの親分かもしれない。

そいつは美玲の方へ猛突進して来ている。


「ッ!!美玲!」


瞬時にカゲロウで空絶を創り出し、攻撃しようとした。

しかし、その必要はなかった。


「んな?オラっ」


後ろを振り向いた美玲がモノノケの顔面を掴んだ。


「ファッ!?」


そして、掴まれたモノノケは「ぐぎゃああぁぁ…!」と唸り声と断末魔を上げながら、掴まれているところから蒸発していく。


「え?は?え?」


「なんだぁ?この雑魚め」


あれ?こいつモノノケ触れたの?というか、視えたの?いつから?


「えっと…美玲さん?」


「あ、なんかお腹空いてきた。じゃーねー」


腹の虫を鳴らしながら走り去っていく美玲。


「どういう事?」


僕はカゲロウに問いかけた。


「ああ、言ってませんでしたっけ。あの娘はもともとモノノケ視えてますよ」


「二度目のファッ!?」


「あの娘に初めて会ったとき、普通に蜘蛛男と一緒に入ってったでしょう?」


「あーそういえば……いや、だとしてもあの力は何なのさ?モノノケ蒸発してたぞ」


「あれは、普通に異能ですね」


あいつ異能も持ってたのかよ。


「まだ無意識下ではありますが、なかなかに強力ですよ。自身の霊力を型に流し込み、陽の氣を発生させてますね。陽の氣はモノノケには有害なんですよ。近くにいるだけでも結構デバフがつくくらいには。ですがさっきも言ったように無意識なので常に異能を発動させているから疲労や空腹が伴います。まぁ霊力はそこまで消費していないようなので大丈夫だとは思いますが、そのせいでいつもなにか食べているんでしょうね」


「なるほどね。だったら、なんであの蜘蛛は大丈夫だったんだろ」


「あのときは珍しく何も食料を持ってなかったでしょう?」


なるほどね~。

あ、そろそろ休み時間終わりそう。


「やべ、急がねぇと」


僕はダッシュで教室の方へとは強いて戻った。

その刹那、カゲロウはずっと気になっていたことを考えた。


(磔刑はロシアじゃなくてローマでは?)


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