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異反者  作者: 二代目とくとくかい
第一部:慚愧服膺篇
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第二十話:誰しも秘密はある

 壁に大穴が空き、そこから細かな壁の破片がパラパラと落ちる。

腕に纏われた黒い鎧は静かに影の中に戻っていく。


「怪我、無い?」


僕はさきほどの少年が飛んでいく様を睨みつけた後、すぐに千弘たちに振り返る。

腰を抜かしたのか中鳶は地面に力なく座っていた。


「吾輩は大丈夫ですが…千弘氏?」


千弘は怯えたような表情で脚や手を震わせ、僕の声が聞こえていないような様子だ。

僕はすぐに千弘に駆け寄り、肩を叩く。


「おい、大丈夫か千弘」


「ひっ、あ…う、うん。だい…じょうぶ。大丈夫だよ。うん」


そうは言いつつも、千弘の眼にはまだ混乱と畏怖の色が見える。


「さっき…あの学ランのモノノケの姿視て、『悠くん』って言ったよな。…何か、知ってんのか?」


「ッ…いや、その……」


千弘は一瞬僕の眼を怯えたように見て、すぐに反らす。


「まぁまぁカミロ氏。千弘氏もこの状況をまだしっかりと飲み込めていないのですよ。吾輩もまだ心の臓がバクバクいって、足も力を抜いたらすぐにフニャフニャになりそうですし」


「………そうだな。すまん千弘」


「い、いや大丈夫…です。ごめんなさい…」


中鳶の言葉で僕は千弘の肩から手を離し、千弘に謝る。


「敬語。いらねぇって言ったろ。ほら、もうあのバケモンもいねぇんだ。安心しな」


「そうですぞ千弘氏。さっきのカミロ氏の戦い視たでありましょう?いやー凄かったですな。殆ど見えなかったけど」


「そりゃそうよ。パンピーは僕の動きを目で追うことすら出来ないのだよ」


「フッ、吾輩をそこらのパンピーと一緒にするとは…カミロ氏は甘いですぞ」


「パンピーだろどう見ても」


僕と中鳶が戦いの後だと言うのにくだらない話をしているのを見て安心したのか、千弘は少し微笑む。


「ごめんね。変な空気にしちゃって。それに僕の秘密のことも……塁くんは話してくれたのに、僕だけ話さないなんて卑怯だよね。ちゃんと…お話するから………」


「まぁまぁ千弘氏。そんなに焦って話をしようとすると精神も安定しませんぞ。ゆっくりでいいですから、話せるようになったら話してくだされ」


「…うん、ありがと」


まぁ僕もまだ秘密にしてることあるんだけどね。

気まずいので目をそらす。


「さてと、にしてもさっきの奴らがモノノケと言う物なんですかな?」


「ああ、そうね。多分そう」


「多分?」


「いや~僕も実践は初めてだから、よく分かんないけど、多分そうだと思う」


「適当ですな……」


中鳶はため息をついて、僕を呆れたように見る。


「まぁでも、取り敢えずあのレベルしか出てこないなら僕が居れば安全だと思うから、このまま探索を続けよう」


「そういえばスマホは?無かったの?」


千弘が僕の近くに駆け寄りながら聞く。

むっほほ。


「う~ん、それがね…。スマホどころか、机とか椅子も無かったのよね~」


先輩が言うには、結界を降ろしている術者の意識を飛ばすと結界が解除されるらしい。

だからさっきの奴らが術者かなーって思って倒したのに、結界は一向に降りる様子を見せてないんだよな…。


「そうなると吾輩たち…ここで………」


「………ま、まぁ!内側とか外側からも壊せなくはないらしいから、いざとなったら僕が全力でぶん殴って壊すよ」


ほぼ無理らしいけど。


「じゃあ取り敢えずは校内の探索と、その結界を張っている術師の討伐が目的ですな」


「そうだな。じゃあ早速行くか。さっきのくらいならどうにかなるけど、一応離れるなよ」


「キャッ、カミロ氏かっこい!」


「死ね」


    ◇


「ラストは…ここか………」


あれから一時間…とかそこらが経った。

しかし、結界を降ろしている杭や術師は未だに見つかっていない。

そして僕達が行き着いた最後の場所は体育館であった。

ここを探して駄目だったら、いよいよ結界サンドバックをするしかなくなる。

お願い!出てきて!


「開けるぞ…」


そんな事を考えながら僕は体育館の重い扉を開く。

ぎぎぎぎと重い音を響かせて開いた扉の先に広がっていたのは真っ暗な空間。


「ビンゴっぽいな」


「カミロ氏そんなカッコつけなくて大丈夫ですぞ」


「うるせぇ言ってみたかったんだよ『ビンゴ』って」


暗闇は体育館の堆積以上の大きさを誇っており、まるで無限に続くようであった。

そしてその果てしなく広い空間の中心に、座り込んでいる者が居た。


「誰だ…さっきの学ラン…とはちょっと違うような………」


その男の子は小さな声で啜り泣いており、目元を手で擦っていた。


「花粉症ですかね」


「最近の花粉ってそんな強いんだ」


外から見ていてもどうにもならないので、僕達は体育館の中に入る。


バタン!


「は?」


すると、僕達が入って来た扉が急に勢いよく閉じる。

閉じると同時に徐々に薄まっていき、暗闇の一部となってしまう。


「ちょちょちょちょ」


「えっえっえっ」


「これは…」


慌てる中鳶と千弘をよそに、僕は中心の少年を視る。

すると啜り泣く少年の周囲の地面から血色のない腕が生え始めた。

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