第十八話:神絶
「修業の成果だ。一発キメてやるぜ」
塁は自身と同じ程の長さの七枝刀『神絶』を片手で構える。
(千弘に当たらないように調整して……!)
「ホッ!」
塁は一瞬でその場から消えたと思ったら千弘の背後に移動しており、塁の姿が現れた瞬間、千弘の身体を弄っていた蔦がバラバラに切断された。
「っと、キャッチ」
そして蔦から解放された千弘を神絶を影の中にしまい、キャッチする。
(一発キメるとは言ったけど、本当に一発で終わっちまったら強くなったのかよく分かんねぇや)
「大丈夫?怪我とか痛むところとかない?」
「あ、うん。ありがと?」
千弘は困惑している様子で僕に礼を言う。
そんな千弘を可愛いなと思いながら僕は地面に下ろす。
「か、カミロ氏?さっきのは一体……。いい加減答えてくれないと我輩たちも何が何だか解らないままですぞ」
地面に降りて安心で胸を撫で下ろした千弘と僕を見て、中鳶が不安そうに聞く。
「う~ん、もうここまで視せちまったら、秘密は貫き通せないか……分かった。全部話そう」
僕は今まであったこと全てを中鳶と千弘に話した。
しかし、全てとは言ったが本当に全てではない。
僕がカゲロウを用いて変身ができるということ以外、僕の知っていることをすべて話した。
「なるほど…我輩たちが知らない世界がまだ在ったとは驚きですな」
中鳶は地面に胡座をかいて、腕を組みながら感慨深そうな声を漏らす。
「でもお前、前まで鮭フレークのこと鮭の味がするコーンフレークだと勘違いしてたじゃん」
「シャラップ!!次吾輩の秘密を千弘氏にバラしたらゲッターズ飯田のメイクをさせるぞ!」
「あれメイクだったの?」
明らかにマスクじゃん。
「じゃあさっき視えたヤツもモノノケで、こういう暗くて怖い場所に居るせいで視えるようになっちゃったってこと?」
千弘は怖いのか少しづつ僕に近づきながら問う。
「多分?僕も最近視えるようになった質だから分かんねぇ」
「じゃあカミロ氏がさっき出してた黒い剣みたいなのもカミロ氏の異能?」
「あ、それはな……」
僕は思考をフル回転してそれっぽい事を口から出す。
「実は、僕自体は霊力が全く無いんだよね。それを補ってるのが…カゲロウ」
僕は苦笑いしながら自分の影に声をかける。
すると、影がズズズっと伸びて紅く鋭く光る二つの眼が開く。
「おい人間、ハーゲンダッツを寄越せ」
「得体は知れないけど、一応僕の式神みたいな奴、カゲロウ。こいつの異能が身体の形やら硬さやら重さなんかを変えられるってやつらしくて、それで……」
僕がまた右手を構えると、カゲロウが形を変えて先程の七枝刀『神絶』に変化する。
「こういうやつを創れるってわけ」
「「おお~」」
神絶を再び影の中に戻すと中鳶と千弘が物珍しいものを見る目で手を叩く。
「B長押しで力溜められるの?」
「多分だけど出来ない」
そもそも僕のは七枝刀だし。
「てか、霊力が無いって言ってたけど、それでどうやって視えてるの?えっと…モノノケ?だっけ」
「ああ、それはちょっと前にカゲロウが僕の目に身体を混ぜて来てよ。まぁ要は触手みたいなのを目にぶっ刺されたってわけ」
「痛そうだね」
「ドチャシコ痛かった」
思い出しただけでも両目が疼く。
う”ッ゙!両目が疼く!!
……なんか両目だとダサいな。
「じゃあじゃあ、もしかしたら吾輩とか千弘氏も霊力で肉体を強化したり、チョベリグな異能で無双できたり…!?」
「う~ん、どうなんだろう。異能とか霊力とかは僕縁遠いし、そもそも知識が浅すぎるから何とも言えないけど出来るんじゃない?」
「っしゃぁ!遂に来たぜ吾輩の俺TUEEEEEE!!」
まずは痩せろと僕は思う。
「おいてめぇら。キャッキャウフフしてるのはぁ良いが、構えたほうが良いぜ。客人だ」
僕達がしていると影の中からカゲロウが唸る。
その声で僕と中鳶、そして千弘の三人が周囲を警戒する。
「少し遠いが、気配がする。いや、気配というよか匂いだな。不味そうな匂いがプンプンするぜ」
その時、僕の耳に入ってきた音があった。
「足音…こっちか」
ひたひたと裸足で歩くような音が聞こえ、僕はゆっくりと音の元へと歩みを進める。
「さっきみたいに僕が居ない時に襲われると怖いから、なるべく僕から離れないで」
「きゅん、カミロ氏かっこいい」
「死ね」
そんな事を言って入るが、中鳶の手は震えている。
なんだよ、ちゃんと怖がってんじゃねぇか。
「3…いや4か?」
「よく聞こえるね。僕達何も聞こえないよ」
「う~ん、昔から耳とか目とか良かったからなぁ…ッ!居たぞ…!」
曲がり角を曲がった瞬間、右側の廊下の奥に3体ほどの人影が視える。
その人を目を凝らして視ると、セーラー服を来た首の長い人形のモノノケ。
そのモノノケは血色の悪い肌に、顔の半分から上が切断されたように存在せず、その代わりに檻のような黒い鉄格子で内側にある脳みそのようなものを覆っていた。
「んだ、あれ……」
僕が小さく呟いた瞬間、その女子高生は目が無いのにも関わらず、こちらを見るような素振りを見せ、唯一ある口が歯を見せながらニヤリと嗤った。
「げひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!!」
そして、その3体のモノノケは腕と指をギュギュと伸ばして僕達へゲラゲラと嗤いながら獣のように走ってきた。
そして、その3体の一番奥。
そこにはその女子高生型のモノノケとは少し違ったモノノケが居た。
「嘘…なんで、悠くんが……」
そのモノノケを視た千弘は恐れが染み付いた瞳をしながらそう言った。




