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異反者  作者: 二代目とくとくかい
第一部:慚愧服膺篇
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第十六話:結界


「――きて。累君!起きて!」


「ハッ!という間にすぐに沸く、ティファール!」


僕は誰かに体を揺さぶられ、目が覚める。


「そこって『あっという間に』じゃないの?」


「そういうこともある」


目が覚めたら、すぐ隣にすぐにツッコミを入れられる美少女……ではなく男の娘。

しかし、僕はすぐにその異変に気付く。


「あれ?なんだ?どうなってんだこれ…」


そう、周囲の空を見渡すと、一面真っ暗。

まるで夜のようだが、夜ではない。

僕はそれに見覚えがあった。


「これって……あの時と同じ………?」


あの時とはまさしく、氷室先輩の姉、氷室氷花さんに殺されかけた時に僕たちを閉じ込めていた結界である。

しかし、何故今こんなところに?


「考えてる暇ねぇか。取り敢えず中鳶……は居るな、よし」


僕は起き上がって、すぐ目の前で寝ている中鳶に近づき、体を揺らす。


「おーい起きろ中鳶。いつまで寝てんだ?」


「ムニャリンポス………ぬは!ここは誰?何処は私?」


「そういうのは記憶喪失になった時に言うことだけど、色々と入違ってるぞ」


僕は先ほどのように中鳶の手を握って、中鳶を立ち上がらせる。

中鳶も同じように、周囲の光景を見て、「な、何が起こっておりまする?」と声を漏らす。


「さぁ……僕も正直、何が何だか分からないんだけど………とりま、あの結界(かべ)まで行ってみよう。この前はすんなり通れたから」


「この前?…まぁ分かったでやんす」


生憎、結界とここはすぐ近くだから、何事もなく出られそうだ。

僕たちは少し歩いて、結界の壁まで辿り着く。

しかし――。


「あれ、出られるのでは?」


中鳶が結界に手を当てるも、結界はそれを拒むように、中鳶を通さない。


「えぇ?この前は通れたんだけどな………」


「けど実際、通れないね。この壁………」


千弘君も同じように不安そうな顔で、壁に触れるも、壁は一切通そうとしない。


「………仕方ない。何かあるかもしんないから、ここで静かに待っておこう」


その前に、氷室先輩に電話で連絡を………。

僕はポケットを弄る。


「あれ?」


「どうしました?カミロ氏」


「スマホ……教室に忘れたかも」


僕はいつも右のポケットにスマホを入れると決めている。

それが無いということは、教室の机か、それ以外の場所にあるということだ。

カバンにはいれない。

探すのが面倒だから。


「何か必要なんですか?」


すると、千弘君が僕に問う。

可愛いな。


「えっと…ちょっとこれ類の専門家っていうか、知り合いの詳しい人に連絡しときたいんたいんだけど……仕方ない。取りに行くか」


僕は結界から離れ、教室にスマホを探しに行こうとする。


「え、ちょちょ。カミロ氏?吾輩たちは?」


「危ないかもだから、ここに残っとけ」


「えーっと…怖い」


「んな?」


「怖いっす。吾輩、ホラゲーとか見る専で、やるのは無理なんすよ」


そういえばこいつ、ホラー映画とかも見たがらなかったな。

しかし、何が起こるか分からないし………いや、ここに残して何かあるよりは僕の近くに置いて、守る方が良いか。


「まぁいいや。じゃあついて来な。なるべく離れるなよ」


「おっほカミロ氏かっちょうぃ~。惚れそうでゴザル」


「行こうか千弘君」


「え?あ、はい」


「カミロ氏?」


僕と千弘君は一緒に僕の教室まで足を進めた。

あと中鳶も着いて来た。

校舎まで歩きながら、僕は周囲を見渡し、耳を澄ます。

学校全体を包む結界の中は前と同じように誰もおらず、校舎の中からも足音がしないので、おそらく僕たち以外の人間はいないだろう。


「そういえばカミロ氏、さっき『この前』って言ってましたよね?この前ってことは今と同じような経験があるのですかい?」


「まぁ、ちょっと前に一回だけな。あの時はすんなり出れたんだけどなぁ………」


「てことは、何か知ってるのですか?吾輩たち、何が何だかよく分からないのですが………」


「う~ん…企業秘密」


氷室先輩からは、なるべく他人には話すなって言われてるから、言わないようにしないと。


「今は言えないけど、何かあったら僕に言ってくれ。出来る範囲でどうにかするから」


「分かったでやんす」


「ぼ…俺も頑張る!」


中鳶に合わせて千弘君も両手をぎゅっと握りしめる。

可愛い。


「なんか、ちょっと怖かったけど、大丈夫そうでよかったです」


千弘君は僕と中鳶の様子を見て、安堵の声を漏らす。


「まぁそうですよな。カミロ氏、ちょっと目つき悪いですしね。けど、ああ見えて割とビビりなんですぞ」


おいてめぇコラ。


「あ、目つきとかじゃなくて、この状況です。すみません」


「あ~なるほど。というか、その敬語止めませぬか?吾輩たち、タメではないですか」


中鳶って見た目のわりに、意外と人と仲良くなるのは早いんだよな。


「えっと…じゃあ、うん。そうする。なら、俺のことも千弘君じゃなくて、千弘って呼んでくれる?」


千弘君は僕たちを上目遣いで見上げる。

僕と中鳶は同時に前かがみになり、「分かったでやんす」と返答した。

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