第十一話:自己紹介とかやってらんないね2
自己紹介、それは僕にとって地獄であった。
次々と自分の紹介を済ませていく話したことはまだないクラスメイト達。つってもまだ三日くらいしか経ってないけど。
みんな「はい、次の人ー」って言われると、「うわ、次俺かよー」とか言っておきながら淡々んと話している。へーゲーム好きなんだ。なんのゲームだろう。
自己紹介順番No,1はやはり相倉君だった。
こいつの名前は『あ』と『い』が連続で来るから勝てるとしたら相浦くん(ちゃん)か、めちゃくちゃだけど亜居宇江尾くん(ちゃん)しかいないだろう。いや、なんだよ亜居宇江尾くん。
No,2は相沢さん。さすがに女子をちゃん付けして呼んでいいのは小学生低学年までかアルティメットイケメンしか許されないと恐竜の時代から決まってんだ。
ほんで次はうちらの朝倉さん。
好きな食べ物は美味しいもの、嫌いな食べ物は不味いものだそうだ。うん、シンプルでいいね。
そして数人進んで、今僕の前の席のやつが自己紹介で立ち上がった。
まずいですよっ!
あー、どうしよう。つーか今の時代自己紹介って。
いや、今更こんなこと考えたってしょうがないか。
もう、吉良吉影の健康的な自己紹介でもしようかな。
「はい、次のやつー」
ついにこの時が来てしまった。
腹くくれー僕。あ、腹くくったら腹痛くなってきた。
「え、えとー、名前は神白塁で………」
と名前を言いだしたとき………。
「え、お前神崎トオルじゃないの?」
灰田凪、まだ僕のことを神崎トオルだと思っていたようだ。
◇
ハハハハハ前方後円墳は鍵穴の形ー。
地球は立体じゃなく平面ー。
空を飛んでいる鳥は実際は政府のドローン。
………はぁ、死にたい。
精神が狂う。
SAN値下がる。
SAN値が下がって一時的発狂をしていた僕だが、何とか自分の自己紹介を終わらせた。
時間が長く感じるとかそういう次元じゃなかった。長すぎて白骨化するかと思った。
とにかくみんなの視線が痛かった。グサグサ串刺しにしてくる視線の数々。イタチの月読思い出した。
し・か・し、終わてしまえばこっちのもんだぜ。
スゲーッ爽やかな気分だぜ。新しいパンツをはいたばかりの正月元旦の朝のよーによォ~~~~~~~~~~ッ。
とまぁ、最近だとこういうジョジョネタがわからなかったり、ジョジョネタを毛嫌いする連中も増えてきたからここらへんで終わらせておこう。
いや、しかし、なぜジョジョネタが嫌いなのかね。オリジナリティにかけるから?みんな擦ってて形骸化したのかな。
ま、少なくはするが、止めはしない。
とりま、終わった勢として、後の下自民たちの紹介を見るとするかえ。
「え、えっと、ぼぼぼ僕の名前は鈴木洋介です。す、好きな食べ物はカレーライス。好きな漫画はワピースと鬼殺の刀です。えっと不束者ですがよろしくお願いします!?」
落ち着け。
お前は誰と結婚するつもりだ。
いや、けど僕も傍から見ればこんなんだったのかな。あーなんか終わったのに恥ずかしくなってきた。
「よーし、次行くぞー」
「ああ」
他のクラスメイトの描写がなかったからここら辺からは新キャラか。
なんか高校生っぽくないくらいのイケボ(クール系)で返事をしたのは………うわ、キm――。
う”ん”!う”う”ん”!いけないいけない。
えー、仕切りなおすと、その返事をした生徒はまさ絵にかいたような主人公といった見た目だった。
サラサラとした質感のなぜかモミアゲが長い黒髪、面長の顔立ち、んで紅い目。
「橘煌だ。まぁ、あまり馴れ合うことはないだろうが一応言っておこう。よろしく」
さぁ、次は僕が落ち着く番だ。落ち着け、落ち着け。だめだ。ここは教室だ。手を出すな。
深呼吸深呼吸。
「すうううぅぅぅ」
「はあぁぁぁぁぁぁぁぁ」
よし、ある程度落ち着けた。
うんイタい。
なんだよこいつ。氷属性?教室が一気に北極と化したぞ。
なぁーにが「一応言っておこう。よろしく。フッ」だ。ぶちころs。
おそらくこいつは主人公に憧れちゃった系の男の子なんだろう。うんうん、わかるよ?僕も少し前まではそういうのかっこいいと思ってたから。全国の男子が憧れちゃうものだからね。
けどね?そういうのって、よく考えてみるとめちゃくちゃイタいんだよ。
無自覚系、最強クール系、自称実力隠し系(隠しきれないorなんやかんやでバレる)、戦闘狂系、ETC………。これら諸々がよくよく考えたらイタい部類である。
なんだよ無自覚って周りの反応みりゃわかるだろ。
最強クール系は周りに女寄ってくるくせに興味無いねみたいな反応。ざけんな発情しろ。
実力隠す努力もしてねぇのに隠そうとすんな。
戦闘狂…そういうのはそういうキャラがやってくれ。
と、このようにこいつらはイタい。結局は同じ結末だ。もう少しさー独自性を持たせよおぜ?
それに髪型だってなんなんだよ。全員同じような髪型だし、モミアゲ長いし(ここ重要)、みんな現実世界に居ればキモイ髪型の部類じゃん。異世界だから髪型が整えられないって言うならせめてモミアゲくらいは切れ。キモい。
まぁいろいろと言ったが、これらは全部僕の自論だから「へーそっかー」で受け流してくれて結構だ。別に他人に押し付けようとはしない。だから君たちも攻撃はしないでくれよ?それじゃあ過激派ヴィーガンと同じだぜ?
「……お、おう。そうか…座っていいぞ」
灰田も引いてんぞ。
「ああ、そうするとしよう」
そう言ってポケットに手を突っ込み席に座る橘とやら。Shine。
「じゃあ、次行こうか」
おそらく、こいつ以上のやべぇ奴はもう出ないだろう。ハハハハハ。あ、やべフラグ。
「次のやつは……」
「うむ、儂じゃな」
ん?儂?気のせいか………。
立ち上がった女子生徒は高校生にしては少し小柄でJKというよりJCに近い。少女という表現がしっくりくる華奢な体格だ。サラサラの黒髪はどことなく深紫色に近く、ゴスロリが似合いそうなツインテールだ。。
そして日焼けというものを知らなそうな真白の肌。橘と同じような深紅の瞳。
うん、キャラデザは好みだ。特に髪色。ガハラさんみたいで。
「やれやれ、随分と個性派揃いのクラスに入れられたもんじゃな。ん?ああ、そうじゃったそうじゃった。自己紹介とやらをしなくてはならんのだな。忘れておったわい。やれやれ、この年まで生きていると細かいことは忘れてしまう。儂の名は鏡野冥。見ての通り…普通のニンゲンじゃ。もっとも普通なのは見た目だけだがな」
カッカッカと可愛らしい声とは似つかない笑い方をする。
お前もかよおぉぉぉぉ!!!
ゴキブリみたいだな。一匹出たらあと数匹いるっていうしな。出てきてもおかしくないよな。
さっきの衝撃で割と慣れたけど…こいつは………多分戦闘狂キャラかな?
うーん、まぁ戦闘狂キャラはイタいっちゃイタいけど橘よりかはマシだな。
「趣味はそうじゃの………強者との戦い?」
前言撤回。橘よりヤバいかもしんない。
「まぁ貴様らのような塵芥どもには興味はない。儂への貢献によっては下僕にしてやらんこともないぞ」
周りを見ると僕だけでなくほかのクラスメイトまでもが唖然としていた。
美玲は特に興味なさげに焼きそばパンで米を食っている。
洋介はその他のクラスメイトと同じ。
橘はというと……どこか面白そうなものを見る目をしていた。
そしてその目はどことなく紅く光っていた。
◇
休み時間になった。
地獄のような自己紹介の時間が終わり、教室中に生徒たちの解放された声が響き渡る。そういえば副担任とやらは結局来なかった。そもそも休みらしい。僕もようやく一息つけると安堵したのも束の間、ふと視線を感じて橘の方を見てしまった。
橘煌は、やはりというべきか、周囲から明らかに浮いていた。彼の席の周りには、誰一人として近づこうとしない。誰もが遠巻きに、しかし好奇の目を向けている。まるで動物園の珍獣を見るような視線だ。一方の鏡野冥も同じような状況で、彼女の周りにも人垣はできていない。むしろ、彼女が発する謎のオーラに、皆が遠ざかっているようにも見えた。
「はぁ……」
僕は深くため息をつき、隣で焼きそばパンを米と一緒に食べる美玲に話しかけた。
「なあ美玲、あの橘ってやつ、どう思う?」
美玲はモグモグと口を動かしながら、パンを噛み砕く音を響かせた。
「んー?あっちの子(橘)はなんかイケメンだけど、ちょっとキメすぎかなーって感じ?なんか、ナルシスト?」
「だよなー」
厨二病でもあるがナルシストでもあるって感じだ。
「じゃあ、あっち(鏡野冥)は?」
「んー、可愛いとは思うけど、なんかちょっと変わった子だよねー。でも、クッキーとかあげたら喜んでくれそうじゃない?」
美玲は本当に純粋な目でそう言った。彼女の頭の中には、人類の序列なんて概念は存在しないのだろう。ただ「クッキー」という共通言語があるだけだ。
「……お前、本当にクッキーで解決しようとするなよ」




