表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/100

第十話:自己紹介とかやってらんないね


「ねぇ知ってる?キリンって一日20分しか寝ないんだって」


「へ、へぇ…そうなんすね」


先輩と一緒に電車に乗り、先輩と一緒に駅から学校までの道のりを歩いていた。

しっかし、この人見た目のわりに結構饒舌だな。

さっきからずっと話してるし、それも雑学とかくだらないおじさんギャグとかだけだ。

もしかして、今までは猫被ってたってこと?いや女性は皆猫被ってるってどっかで聞いたことあるし当然っちゃ当然なのか?

あ、校門だ。


「じゃあ、僕はこの辺で失礼します」


「あ、うん…またね」


どこか少し寂しそうな先輩なのであった。

なるべく駆け足で自分のクラスまで向かう。

ドアを開け自分の席の方を見ると、隣の席の美玲が幸せそうにケバブを頬張っていた。

こいつホントいつもなんでも食ってるな。何も口にしてないときなんか初対面の時しかないぞ。



「あ、塁君じゃん。おはよー」


うわ気づかれた。


「あ、うん………お、おはよー」


適当に挨拶して流す。最初の方は陽キャ女子的な立ち位置かなーとか思ったけど(いやまぁ陽キャ女子なんだけれど)先生が話してる最中にも何かしら食ってるからなこいつ。

それを気づいても注意しないあいつ(灰田凪)もヤバいんだけど。

この前なんか………。


『おい、何食ってんだお前』


『⁉ いえ、ふぁんにふぉ』


『いや、ガッツリ食ってんだろそれ。ケソタッキー?これは許せんなぁ』


『…ごくり。 そこを何とかお許しを!!』


『じゃあそれ一口頂戴』


………………なんてこともあったしな。

陽キャっつうかこいつほぼ不良だろ。

はぁ、清楚系の性格にしようかなーとか思ったけど、筆者がいっぱい食べる系の暴食キャラがいた方が面白そうだし、便利だろっていう軽薄な考えで設定したけどこいつは失敗だな。

許さんぞ暁ぃ!


「どったの、そんな朝ご飯にめちゃくちゃ脂っこい食べ物が出てきて胃もたれしてる時の人みたいな顔して」


「なんで知ってる!?」


「そりゃ顔見れば分かるよ。なんか顔色青いし、いや、青いというより薄汚い。今朝顔を洗わなかったな」


「ドラ○もんかお前は」


このネタが分からないやつはggrks。


「そもそも、胃もたれって何なのさ。私いくら脂っこいもの食べてもお腹すいてくるのになー」


「どういう仕組みだよ。ていうかJKがそんな脂っこいもの食うか?…いやお前は食うか。でもカロリーとかヤバいだろ。」


「ふふふ、知ってる?揚げ物はね、熱を加えてるからゼロカロリーなんだよ」


「それこそどういう仕組みだよ」


ムシャムシャとケバブを食いながら喋る美玲。

ツッコむのめんどくさかったけどそれどこで買ってんのさ。すっごい気になるんだけど。


「あ、おはよう二人とも。今日は早いんだね」


後から声が聞こえ振り返ると洋介が後ろ側のドアから教室に入ってきた。


「ッフ、今日は電車で来たからな」


「そっか、いつも自転車とかなの?」


今日聞かれるの二回目の質問が飛んできた。

しかし、もう慣れた。人間一度過ちを犯すと罪の意識が薄れるんだな。


「…うん」


「そっか、それよりすごいもの食べてるね美鈴さん」


「うん、スパイス効いてておいしいよ!」


「…へ、へぇそうなんだ。でも朝からだとちょっと重くない?」


「揚げ物は熱を通してるからゼロカロリーなんだとよ」


「へぇそうなんだ。知らなかった」


おい、冗談を鵜吞みにするなよ。こいつ詐欺とか会いやすそうだな。


「まったく、これだから最近の男の子というのは………」


やれやれ的な雰囲気出してるけどお前の理論は間違っているぞ美玲。

くだらない挨拶。くだらない話。くだらない時間。こういう物を僕はどこか楽しんでいた。

中学ではきっと運がなかっただけなのだ。きっと。


          ◇


「それでねー思いっきり噛みついたら食品サンプルだったんだよねー」


「どうしてそんな極限状態になるまで飯を食わなかった」


家を出た時は土砂降りだった雨が、いつの間にか普通の雨粒に変わっていた。それでも、分厚い雲は太陽の光を遮り続け、教室の中は薄暗い。天井の蛍光灯が、いつもより強く、白く輝いているように感じる。窓の外から聞こえる雨音が、教室を満たす生徒たちのざわめきと混ざり合う。

そんな空間で、僕たちはまるで物語の一ページの、それもほんの片隅に小さく写り込んだような、ありふれた学生だった。

とまぁ、なんとなくそんないい感じのことを言ってはいるが普通にちょっと薄暗い教室でくだらない話をしている情景をそれっぽく書いただけなんだけどな。

前回の話からそこまで経ってないし、ゆうて10分くらい。


「おーし、お前らー席に着けー…って言いたいけど大体座ってんな……おーしお前ら一回立って話てろ。そんでもっかい俺が入ってくるから」


ほとんどのやつらがめんどくさそうな顔をし、立って話をしだす。


「おーし、お前ら席に着けーHR始めるぞー」


「「「うぃー」」」


「これがやりたかったんだよ、これが」


満足げに目を細める先生。なんだこいつ。


「さて、HR始めるつったけど特にやることがないんだよなー……どうするか」


クソである。


「あーそうだそうだ。自己紹介がまだだったな」


「何言ってんの先生。自己紹介はこの前やってたじゃん」


と、美玲。


「違う違う。あれは俺の自己紹介。今からやるのはお前らの自己紹介。いやー忘れてたわ」


!?

クソが!やんねーのかなーとか思ってたけど今更思い出すのかよ。

そう、何を隠そう僕は自己紹介というものが苦手だ。

何故かって?陰キャな諸君にはわかるだろう?

普通に人前で話すのが無理なだけだよ!!!!

こういうことを言うと「えーでも、美玲や洋介とは普通に話してるじゃん%#$9’”!+*」とか言い出すウンカスみたいなやつがいるだろうから言っておこう。別に僕は人と話すのが苦手なわけじゃあないんだ。(これは”僕は”のことだから普通に人と話すのが苦手な人もいるからそこらへんも配慮してあげよう)しかし特定の条件下だとキョドってしまう。

それは、『人前』と『初対面』だ!

どうしてもこういう場面だと考えが極端になったり、ネガティブな思想になってしまうからな。

あー絶対今、みんな僕のこと心の中で笑ってんだろうなあとか、ここでミスったら死ぬ!みたいな……なんというか、もう…死にたくなる。いや死にたくはないけど。

とりあえずヤバい。しかし、逃げることはできない。


「あ、あと副担任の自己紹介もやるぞ。まだ来てねぇみてぇだけど…まぁそのうち来るだろ。じゃあ出席番号順になー」


「え、せんせー!その副担任って女っすか?」


とクラスの陽キャ。


「はっはっは、残念だったな。副担任は男だ。クソがッ!!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ