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過去の夢

この世には存在してはいけない「モノ」がある。

それは世間一般的には幽霊や妖怪などほぼファンタジーのようなもので大抵のものは信じない

しかしそれは存在する。それは異能力者からは『モノノケ』と呼ばれている。

そのモノノケを祓うのが僕たち異能力者の役目だ。

いや”僕以外”の異能力者の役目だ。

なぜ”僕以外”かって?

簡単なことだ。

僕は異能力者ではない。

僕は神白家という代々モノノケを祓う異能力者を輩出してきた家系に生まれた。異能力者とは霊力という異能力者特有のエネルギーのようなもので身体能力の強化や肉体強度の上昇、多少の五感の強化、軽症の治癒などいろいろな使い道がある。その霊力を持って生まれてきたものを異能力者と呼ぶ。異能力者は生まれつき皆不思議な力を持っておりその力を『異能』と呼びその能力は皆様々だ。例えば炎を操ったり、巨大化したり何でもありだ。

しかし僕は神白家に生まれたのに生まれつき霊力がない。

だからモノノケも見えないし、祓えもしない。

もちろんこんな僕が神白家で普通に育てられるわけもなく醜いアヒルの子状態だ。

けれど僕はあきらめきれなかった。

僕には夢があったのだ。

小さいころ姉さんに読み聞かせてもらった僕のずっと昔のご先祖様の話だ。


「神白風舞」


かつて異能力者の頂点とも呼ばれたすごく強い人だ。僕はこの話を聞いてからこの人のようになりたいと思った。この人は力があるのに威張らず皆に知られず陰で人々をモノノケから助けていた。そのせいで皆からは受け入れられなかったがモノノケとの大きな戦『終末大戦』で活躍し、最強の異能力者と呼ばれるようになったそう。

僕はこの人に共感した。僕が皆から蔑まれるのと同じようにこの人も皆から否定されてきた。だから僕はこの人のようにいつかみんなに認められるくらい強くなろうと決心した。


しかし霊力がない僕に何ができる?


どれだけ頑張っても霊力は増やすことができない。

なら増やせるものを増やせばいい。

強くなるために増やすもの。そう、それは”筋肉”だ。

僕はこの人の話を聞いた時から僕も強くなろうと日々肉体改造に明け暮れた。

頭の中で右ストレートで想像のモノノケを殴り飛ばすイメージをしながら死に物狂いで努力した。時には体中の血管という血管から血が噴き出すまで、時には手足がもげそうになるまで、血反吐を吐きながらも努力し続けた。

しかしどれだけ肉体を鍛えようとモノノケにはダメージを与えるのは不可能だった。

そもそもモノノケが視えないんじゃどうしようもない。


どうしたらいい。どうしたら僕は風舞のように強くなれる?


そう僕が僕自身の無力さに打ちひしがれていると、ある日僕の目の前に黒いローブを着た人が立っていた。

その人は僕にこう言った。


「君、力が欲しい?」


その声は可愛いような美しいような声だった。そしてその声でまるでアニメの裏ボスみたいなセリフを僕に投げかけてきた。


「欲しい」


僕は即答した。なぜならそこに希望があるから。理由なんて大抵曖昧なものだ。


「いいよ、あげる」


そう言うとそのローブの人は懐から何かを取り出し僕に手渡す。

その人に手渡されたものは”マフラー”だった。とても黒くすごく嫌な感じがした。けれどこの時の僕は何かを感じた。とても言葉では言い表せない何かを…。

そして僕は力を得た喜びでいっぱいだった。そんな僕にそのローブの人は一言だけ言い放った。


「やっぱり君はいいね。あ、そうだった。あげる代わりに………」


なんだろう。興奮で最後の方、何を言ってるのかよく聞こえなかった。何を言ったんだろう。

気が付くとローブの人は僕の目の前から消えていた。

一言お礼を言おうとしたのに…。

しかし、その時僕は心に誓った。

僕はこれで最強の異能力者になる。



                      ◇


 すごい懐かしい夢見たな。


僕はあの時から何年かたってもう高校生だ。異能が使えないなら勉強も頑張ろうと自頭は悪いが頑張ってそこそこの学校に進学することになった。正直マグレ。

今日はその学校の入学式だ。ちなみに学校から家は割と距離がある。なぜなら僕の修行のためにある程度の距離を歩きたかったからだ。

目覚めたてで目がしょぼしょぼしているとものすごい勢いで階段を駆け上ってくる気配に気づいた。


(まずい、この気配は姉さんだ)


「塁くんー!起きなさい。いつまでもお姉ちゃんのモーニングキッスがあるわけじゃないのよ!」


遅かった。大体気づいた時には姉さんは僕の部屋にノックなしで入ってくる。

姉さんは僕がまだ座っているベッドに飛び乗り僕に抱き着いてくる。


「もうしょうがない子なんだから」


そういうと姉さんは僕に唇を近づけてくる。

僕はそれを割と本気で阻止する。


「姉さんおはよう。大丈夫もう起きたから」


「えーでも……」


何がでも……だよ。


「もう僕も今年で16だからね?」


そういうと姉さんは頬を膨らませて僕にジト目を向けてくる。


「昔の塁くんはもっとかわいかったのに…最近はお姉ちゃんに冷たくなった」


「はいはい時間の流れは残酷だねー。さてと、朝飯食いに行こ」


「お姉ちゃんにあーんしてー」


「やだ」


まったくこの人は将来神白家を継いで頭首になるってのに子供かよ。

こう見えて姉さんはめちゃくちゃ強い。生まれつき霊力が多くほぼ霊力切れを起こさない。霊力の濃度も高く霊力を込めた拳は強力だ。おまけに異能も強く発勁という霊力の波動みたいなのを飛ばせるシンプルだが応用性の高い異能だ。

とりあえず朝シャワーを浴びて制服に着替え朝ご飯を食べる。ちなみに僕は朝シャワーを浴びる派だ。朝シャワーを浴びると目が覚めて頭がすっきりする。

さてと今日は入学式だから早めに家を出るとするかな。

僕はあの時ローブの人からもらったマフラーを首に巻いて玄関に向かう。


「大丈夫?ちゃんと荷物持った?忘れ物ない?ハンカチとティッシュ持った?道に迷わない?」


「姉さん、何度も言うけど僕もう16歳なんだよ。ちゃんと自分のことは自分で管理できるし、今更道になんて迷うわけないでしょ」


「でもお姉ちゃんは心配なのよ。車には気を付けるのよ」


「へいへい」


「行ってきまーす」


「いってらっしゃーい」


まったく姉さんのお節介には手を焼くよ。

もう高校一年生だってのに道に迷うわけないじゃないか。

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