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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

どうでもいい話

ハゲた話

作者: 穂高貴志

これは、あくまで私個人の体験とその感想です。

新型コロナに苦しめられた方々、そしてその後遺症に苦しんでいる方々には不謹慎、不愉快と感じられる可能性があります。

御注意下さい。

 数年前の話。


 私はハゲた。


 その日、数日前から何やら後頭部に違和感を覚えていた私は、床屋に行って坊主にした。

「……逝ったねぇ」

 床屋が頬笑みながら構えた鏡に映る私の後頭部に、不規則に散らばる様々な形と面積の不毛地帯。

 OMシステムのランダムパターンとでも表現すれば(一部のオッサン達には)伝わるだろうか。

 それは、ハゲ散らかすと云う言葉こそよく似合う風景であった。


 まさか、まさかこの私が。

 メンタルクリニックの医師をして

「チミは〜、チミはアレだね、鬱病にはならないタイプだね」(半笑い)とまで言わしめたこの私が!


 極力平静を装った私は床屋を出ると皮膚科に直行した。


 そこで私は脱毛症に関する幾つかの知識と恐怖を知る事になる。


 1つ、神経性脱毛症とは、暴走した免疫系が自らの毛根を攻撃する事によって起る事。

 新型コロナに於いて脅威となった、所謂サイトカインストームとか言うアレである。

 つまり、私がソレに罹患した場合、脱毛症(ハゲ)が劇症化する恐れが有るのだ。

『まばらに禿げている』状況が『まばらに生えている』状況となる。

 私は、SARS-CoVに対して強烈な殺意と恐怖を覚えた。


 一つ、治療に用いられた塗薬が『尋常性脱毛症治療薬』と呼称されていると云う事。

 ()()()、つまりこの世界には医学的に観て尋常では無い脱毛症(ハゲ)が存在するのだ。

 私は名状し難き存在に戦慄し恐怖した。


 一つ、薬物依存症の陥穽が、想像以上に身近に在る事。

 後頭部の脱毛症(ハゲ)群は、皮膚科にて処方された塗薬等に依って迅速に撲滅されたのだがその際、残った薬を前頭M字部のエッジ辺りに塗布してみたところ、微妙な効果が認められてしまったのだ。

 それまでくっきりと隔てられていた境界線にぽやぽやと、僅かな産毛が。

 私は縋った。

 後頭部原状復帰後も1年以上、結局ぽやぽや以上の進展が無い事に納得するまで、塗薬の処方を請い続ける事となる。

 私は己の弱さに恐怖した。


 一つ、個人情報が保護されていない事。

 脱毛症について調べたのが悪かったのか、塗薬について調べたのが悪かったのか。

 完治から何年も経ち再発も認められていない現在も、それは私を苦しめ続ける。

 発毛剤と育毛剤とカツラに植毛治療機関etc、大量に送り付けられたダイレクトメールやネット広告。

 想像できるだろうか?

 スマホを起動するだけで画面の端々にチラつく脱毛症(ハゲ)の隠喩。

 数年経った今も浮上(ホップアップ)してくる忌わしき記憶。

 私は情報社会の闇に恐怖し続けている。

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