15 激闘のトーナメント戦
ついに残りの1回戦の幕が上がりワグモカズキ、オリバーも激闘をくりひろげるがその結末は果たして?!
トーナメント戦が遂に始まり第1試合アリシャコルデーとマリーの試合はとても白熱したものだった。周りの反応もとても盛り上がっており第2試合にも期待と興奮がひきつがれていた。それは先程対戦の終えたマリーとアリシャも同様でワグモとオリバーも緊張しながらの4人での観戦となっていた。マリーは運ばれてすぐに意識をとりもどし心配損したとオリバーと共に戻ってきていた。いくら意識を奪うだけの攻撃であってもここまではやく戻ってきたのは流石のアリシャとワグモもマリーの元気さに少しひいていた。そして遂に
準備が整いハル先生が
「第2試合!!グラッツVSカリアーナ!試合!開始!!」
始まると同時にカリアーナは自身のホウキにまたがりグラッツの周りを飛びはじめた。それに対しグラッツはいつもの本を持っておらず両手をポケットに入れたまま自身の周りを飛んでいるカリアーナを観察していた。お互い睨み合い状態が続く中、先に痺れを切らしたのはカリアーナだった。カリアーナはグラッツに対し
「ねぇ、これ楽しい?」
「…………。」
「女の子が話しかけてるのに無視とか…あなた絶対モテないでしょ。」
「…………。」
「ウザっ!!」
カリアーナはグラッツの反応に苛立ち、グラッツの正面の空中で停止し手を上にあげた。すると背後から無数の紫色の魔法陣が出現する。だがグラッツは変わらず無表情のままだ。カリアーナはそれにまた苛立ちをおぼえグラッツに
「氷魔法。乱れ氷柱⋮纏い毒、やれ」
カリアーナがそう唱えると魔法陣から無数の紫色をした氷の氷柱が姿をあらわし一斉にグラッツに向けて放出された。グラッツはポケットの中から手をだし握っていた手をひらける。手の平には何かの種のようなものがいくつか転がっておりグラッツは片方の手のそれを前方に放り投げ唱える。
「木の精よ俺に力を」
直後、種だったものにヒビがはいり内側からかなりの太さの木が荒れ狂うように出現しグラッツの前で盾のような形を作り氷の氷柱から身を守った。するともう片方の手の種をカリアーナの方に放り投げ唱える
「木の精よあの小うるさい魔女を捕えろ。」
「なっ?!誰が小うるさいよ!」
カリアーナは攻撃を防がれたがあまり気にしておらず。それよりも次に自分を襲ってくるであろうものを察しホウキですぐさまスピードをあげて移動する。だが空中で種はヒビわれ一斉に四方八方に木が荒れ狂いながら飛び出してきた。それら全てが魔女の行く手を阻むよう動いたり本人を捕らえるように動いたりとしっかりと命令に忠実に動いてるためカリアーナは徐々に追い詰められていった。もちろん逃げながらも氷柱を放ってはいたが先程の盾の形をして守ってた木がすぐさま形を変え氷柱からグラッツを守っていた。カリアーナは木をかわしながらでは大技が撃てず、そして遂に後ろのホウキが木に捕まり減速してしまった。
「くっ!離せ!!!」
カリアーナはすぐさま掴んできた木に氷柱を撃ち切り離すが、その一瞬を見逃さず木は次々にカリアーナに巻き付きく。そしてグラッツは木々達に命令する。
「腕を失えばホウキで思うように動けまいし魔法も厳しいだろう。折れ。」
「え?ま、待って!!嘘でしょ?!」
直後、腕に巻きついていた木から物凄い力がこめられ、両腕からバキッと乾いた音がする。カリアーナはあまりの痛さに涙目になり、苦悶の表情をうかべる。
「嫌ァアアアアア!!」
カリアーナは痛さのあまり叫ばずにはいられなかった。グラッツはそんな魔女をみても無表情のまま。そして木々達に最後の命令をだした。
「もういいぞ。落とせ。」
木々の縛る力が無くなりカリアーナはそのままホウキと共に地面に落下する。
「うう、あ、がっ、、くっ、」
カリアーナは地面に転がり涙を流しながら痛さと闘っていた。ハル先生が大急ぎで駆け寄りカリアーナを抱き上げ
「第2試合!勝者グラッツ!」
と適当に決着の言葉を口にし大慌てで医務室に連れていった。グラッツは特に喜ぶことも無く
「木の精よ、戻りたまえ。」
そう口にすると木々がまたそれぞれ1つの種になるように収縮していき種となりグラッツの手の中に戻っていった。周りの先程までの熱狂は失われていた。その場にいる全員が捕らえた相手をあそこまでやる必要があったのかと疑問と憤怒の気持ちをグラッツに向けていた。それはワグモ達も同じでアリシャは特に次の対戦相手でもある彼に静かな怒りと闘志を向けていた。しばらくするとハル先生が戻ってきた。カリアーナは今は落ち着いていると皆を安心させる言葉をなげかけ試合の続きがおこなわれることになった。次はとうとうワグモの出番だった。アリシャ、オリバー、マリーにそれぞれ頑張れと背中をおされワグモは中央に向かった。そして向こう側には自分の対戦相手クロスベルスターが立っていた。腰に細剣をぶら下げている。そしてハル先生が
「第3試合!ワグモカズキVSクロスベルスター試合開始!!」
戦闘開始の合図が言われると同時にクロスベルスターが細剣を抜いた。ワグモは身構える。相手がこのまま警戒して動かないのであればサイコキネシスでまた振り回す、細剣を使ってなにかしてきそうならばアポートで奪う。ワグモはそんな作戦をたてていたが始まった瞬間にサイコキネシスをかけなかったことを後悔する事になった。クロスベルスターは恐ろしく速いスピードでワグモの懐に入り細剣の横振りを腹に直撃させる。ワグモは痛みのその瞬間までクロスベルスターの動きがみえていなかった。ドスッと鈍い音と共に腹に重い衝撃が伝わる。
「がはっ!!ゲホッゲホ!」
ワグモは腹をおさえ膝をつきなにがおきたのかと考える。前方にいた男が突然目の前に現れ殴られた。考えているとクロスベルスターが細剣をワグモの顔前に向け
「この程度ですか?」
「へっ!上等だ。」
クロスベルスターは細剣を振りおろす。ワグモはすぐさま瞬間移動でクロスベルスターの少し離れた後方に移動する。
「なんと!スピードで私を上回りますか!」
「いいや、とんとんって所かな」
ワグモの額から少し血が流れる。手が少し動いた瞬間に瞬間移動したがそれでも少しカスったらしい。ワグモは原因を探るべく未来視をつかった。そこで視れたのはまたもや相手が高速で動き反応ができてない自分だった。またやられてんじゃんと自分に思いつつも1つの事に気づいた。そう自分がやられる直前にクロスベルスターの細剣と身体にはほんとに少しだが青い電気のようなものが帯びていた。ワグモはそこで納得する。
「なるほどな、そりゃ瞬間移動でも危ねぇわけだ。」
(恐らくこいつは電気のようなものを纏ってそれと同等ぐらいのスピードをだせるってわけだ。ならやる事は…)
クロスベルスターがこちらを向き構えをとる。ワグモは手を前にだし
「アポート」
「は?」
今度はクロスベルスターがワグモのした事に理解できず困惑していた。自身が握っていた細剣を目の前のワグモが握っている。
「なにを??された?」
クロスベルスターは困惑するが、すかさずワグモの目の前に高速移動する。
「どうやったかは分かりませんが、細剣を盗られても私には体術もあるのですよ。」
「悪ぃけどそれはお見通しだ。」
細剣を奪って少し違うが先程未来視で視た通りの攻めにワグモは瞬間移動で今度こそかすることなく後方に移動した。クロスベルスターは驚いている。
「バカな…この私のスピードより速いなどありえない、、」
「確かにその電気からなるスピードは恐ろしく速い。でも俺にはもう通用しない。」
「この数度のやり合いで私の魔法まで見抜きますか。」
「ちょっと裏技みたいな感じだけどね。」
「だとしても。分かったとしても電気を纏いそれに近いスピードの私より速く動くのは見事です。ですが……だからといってあなたが勝つ訳では無い。無理矢理にでも当てさせていただきます。」
「なに?」
ワグモは未来視を使うが流石にこれは無理だとさとる。恐ろしく速いスピードで自身の周りを移動するクロスベルスター。残像のようなものしか見えない程だった。恐らく未来視で視てからの反応だと先程のようにカスるか当たってしまいジリ貧になってしまう。ワグモは恐らくここで勝負時だと覚悟を決める。そして決勝で使う予定だった秘策をここで使うと決める。ワグモは鍛冶屋で手に入れた刀を抜き水の魔石を押す。クロスベルスターはそれをみて
「水の魔法剣ですか。考え抜いた結果がそれなら少し残念ですよワグモ君。」
「いいや、これで充分なんだよ俺には」
「なに?」
そう言いワグモは刀で水の斬撃を飛ばすのではなく大量の水として回転して放出した。辺りに水がまきちらされる。クロスベルスターは
「確かにこれならかわしようがないが、笑止!ただの水遊びとはバカにされたもの!」
クロスベルスターはワグモの背後から突っ込んでいく。だがワグモは背後からくることは水をまきちらしながらの未来視で分かっていた。
「水をまきちらしたのはあんたを逃がさねぇためだよ。後覚えときな、水はよく感電するんだぜ。パイロキネシス!!!」
直後、ワグモから強力な電気が発せられる。火がおきない程度にまで抑えたとはいえ、かなりの威力のものだ。だがそれも辺りにまきちらした水にいい感じに流れ緩和している。突っ込んでいたクロスベルスターはモロに電撃をくらい
「があああああああああぁぁぁ」
身体に耐え難い痺れと衝撃が襲い膝から崩れその場に倒れた。またもや奇っ怪な技で倒してみせたワグモに部屋は盛り上がりを取り戻した。ハル先生がクロスベルスターの意識が失われているのを確認し
「第3試合ワグモカズキの勝利!!!!」
「イヨッシャア!!!」
ワグモは笑顔でガッツポーズをとりアリシャ達の所に戻る。アリシャ、オリバー、マリーに
「水を選んだのはあれのためか。中々にいい策だったと思う。」
「くるくるするかと思いきやまた変なもん使いやがって」
「ワグモ君はほんとに色んなもんを持ってるね〜」
と、ワグモはまさかここまで皆が褒めてくれるとは思わず少し照れる。そしてオリバーに
「次だな!!」
「ああ!サクッと勝ってワグモにやり返すよ」
そこまでゆうとハル先生が
「はいはい。クロスベルスターとアリシャちゃんとワグモ君は今から医務室ね。」
「「ええーーー!」」
アリシャとワグモは約束を思い出し医務室に連行されていった。クロスベルスターは言わずもがなで医務室のベットに寝かされた意識は取り戻していた恐らく電気には抵抗があったのであろう。アリシャもしっかりと傷を治すよう寝かされ、ワグモはお腹にアザだけかと思ったが意外と額がパックリいってたようで同じく処置をされ寝かされた。3人はラストのオリバーの試合が気になるが安静と言われ、ここにいることを強制されたので酷く残念がりそして3人は医務室にため息をつき
「「「はぁーーーー、ラスト気になるなぁーーー」」」
「うるさいわね!!!!!」
と、一足先にここに運ばれていたカリアーナの涙声に怒鳴られ各々が少し気まづい空気になり黙り込んだ。
そして第1試合最後の試合。オリバーとスズセシリアの準備が完了し始まろうとしていた。ハル先生はお互いがサイドに別れたのをみて
「第4試合!オリバーVSスズセシリア開始!!」
開始直後にオリバーは対魔対物の鎧を装着し対人の剣もだしスズセシリアに突っ込んでいく。
「悪いな嬢ちゃん。一気にいかせてもらう!!!」
「私も負けないんだから!!!水の精よ私の魔法を強化して!」
スズセシリアは両手を前にだし魔法陣が2重になる。オリバーは驚く。基本的に魔法使いは精霊に興味をもたれない。精霊は力なきものに力を貸したがる。もちろん魔法使いにも力を貸してくれるがカリアーナのように氷属性の魔法使いに氷の精が力を貸してくれるとは限らない。水の魔法使いに水の精霊がつくのはこれはとても珍しい。そして何より合体したそれらの魔法は比べ物にならないぐらい強力だ。スズセシリアは向かってくるオリバーに向かって
「水龍二頭!!」
直後、水色の2重の魔法陣から水が物凄い勢いで渦巻いて形どってる2匹の水の龍が飛び出し、向かってくるオリバーに突撃し一気に飲み込む。中は物凄い水圧と洗濯機状態でオリバーは逆らえず二頭の龍と共に壁際まで吹き飛ばされた。結界の壁にぶつかり龍は水となって消えた。スズセシリアは手応えを感じ一息つくがオリバーはその名の通り鎧の効果のおかげでダメージはくらったもののすぐに立ち上がり
「待て待て。勝手に終わった気でいんじゃねぇ」
「嘘、直撃だったのに」
「少しくらった。でもそれだけじゃ倒れねぇ今度こそこっちから…嘘……だろ…」
攻めると言おうとしたが目の前のスズセシリアの行動にそれ所ではなくなった。スズセシリアは先程と同じ構えをとっていた。オリバーを戦慄させたのは手の前の魔法陣の数だった。スズセシリアはオリバーに謝罪する。
「ごめんなさい。舐めてた訳じゃなくて怪我をさせたくなかったから…でもそれって失礼だったよね。これで終わりにする。」
「マジかよ、、、ワグモとんでもねぇ化け物だぜこいつぁ」
「水龍五頭!!!!!」
直後、五重に重なった魔法陣から先程とは比べ物にならないくらいの水の龍が5匹飛び出した。デカさも渦巻く水の勢いも規格外。壁際に追い込まれていたオリバーに回避する場所はなく、ただただ鎧にめいっぱいの魔力を使う事だけしかできなかった。目の前に水龍が5匹自分を睨んで突撃。オリバーの意識は完全にそこで途絶えた。沈黙していた医務室に血だらけのオリバーを抱え込んでるハル先生とアリシャが師匠と呼んでいた男の人、そして泣き叫んでいるマリーが入ってきた。ワグモとアリシャは飛び起きベットに寝かされ先生2人の処置をうけているオリバーに駆け寄る。
「お、おい!オリバー!どうしたんだよ!この傷……まさかトーナメントで?!」
「オリバー殿しっかりしろ!!」
「離れろ!!邪魔だ!!元気ならここからでていけ!そこの女もだ!」
駆け寄るワグモとアリシャそれにマリーを師匠と呼ばれる男の先生が突き放し部屋の外にだし施錠する。全員が唖然としていた。そしてワグモとアリシャは泣いて崩れているマリーに何があったのかを聞いて驚く。
「そんな事が、、」
「オリバー殿、、」
ワグモは改めてこのトーナメントの恐ろしさを痛感した。そこで扉が開きハル先生がでてきた。マリー、ワグモ、アリシャの顔をみて
「結界が無かったら本当に危なかったかもしれない。なんとか安静を取り戻したよ。数日もすれば意識も戻るだろう。」
それを聞いて3人は力が抜け大きく安堵する。そして部屋に入りオリバーに寄り添う。すると師匠の男の先生は何も言わずに出ていった。そこでハル先生も
「心配なのは分かるけど2回戦は3日後に決まったからね。自分たちの傷もしっかり治すようにするんだよ。」
そう言い出ていった。部屋に再び沈黙が訪れる。勝った者、負けて傷ついた者。激闘のトーナメント1回戦の長い1日が終わった。それぞれがここ修練場の卒業の厳しさを改めて実感した日となった。
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