1 最悪の展開
大きく深呼吸をし大自然の匂いを嗅ぐ。自分が今いる場所は限りなく広い草原、辺りを見渡せば大きな山々が視界に映る。後ろを振り向くとそこにはボロボロの我が家がありそれを見て俺はもう一度前を向きため息をついた。頭の中がパニックを起こしている。上を向き清々しい程の快晴の空を見てこうなってしまった原因を思い一人呟く。
「あぁ…クソ。やっぱりろくなもんじゃねえ…どうすんだこれ…」
時は遡り
俺は和雲和輝、今年で二十歳になる者だ。高校を卒業し会社に勤め一人暮らしをしている。一見ごく普通の人生を送ってるのだろうと思うだろうがここまで普通だと思ったことは1度もないしどちらかとゆうとかなりのハードモードだったと思う。その理由として俺は超能力が使えるからだ。幼き頃から親の心が分かったり友達の本音が分かったりとしていた。その他にもできると確信できてる物があるが他は使う場面がない。小学生の時、自分に対しての友達や先生の心の本音が聴こえており馬鹿だった俺はやたらとそれを指摘しては不気味がられ完全に学生スタートを失敗して中学生では元々同じ小学校の奴らが何人も同じクラスだったのも相まってアイツは呪いの類が使える不気味なやつなんてゆうとんでもない噂まで広がりそれが高校生にも響いてしまい完全なるボッチキャラが定着してしまった。これから脱するべく高校を卒業した後、地元と実家を離れ一人暮らしの社会人になったのはいいがこれがどっこいかなりキツイ。同期や上司会社にいる人達の仕事してる時の心の本音は学生時代の皆よりネガティブなものばかりが多くただでさえ慣れてない仕事場で精神的追い打ちがとんでもなく非常に参っている日常が続いてるのが今の現状だ。そして今日も同じ。机でパソコンを打ちながら時計をみる。
「はぁ。もうすぐか。」
椅子にもたれてそうボヤく。この会社のいい所は定時には帰ってもいいところだ。時計を見つめて心の中でカウントダウンを始める。
(三、二、一…ゼロ!!!)
「すみませんお先に失礼します!お疲れ様でした!!」
「はーーいおつかれさまでしたぁ」
周りからのその別れの挨拶を聞きエレベーターに乗り外に出て走って帰る。いつもはゆっくり歩いて帰るのだが今日は違う。そうそれは覚悟が決まったからだ。今まで読心術しか使わなかった。というよりは読心術は制御しようとしてもあまりに酷い声は聴こえてしまうとゆういらない機能つきだからだ。だがほかは違う。使える確信しかなくどうなるか怖かったから使わなかった。その他にもできるものがあるとゆったが使ったあとの周りの変化などを想像して怖くてできなかった。だが今日は違う今日こそはやってみせる。このまま仕事場にいたら絶対鬱になって終わる。それで終わってしまうぐらいなら自分の可能性をみてからにしたい。俺が使える超能力は全部で10個。っと言っても使ったことがあるのは読心術だけだが。今日は人生を変えるため勝負にでる。そうこう考えて走ってるうちに家に着いた。鍵を差し込みドアを開け廊下を歩きリビングにでる。テレビをつけてバックやスーツを置き目を閉じ大きく深呼吸をし覚悟を決めて目を開く。
「空間転移…漫画とかだと自分の行きたいところなんかにすぐにぽっとでれたりしてるけど…まさかこれも制御できず海の中なんて…まさかな!あるわけないよな!そんな非現実的なことなんて!はははは!」
下唇を噛み震える手のひらをみてもう一度大きく深呼吸をする。
「今まで色んなもんを我慢してきた。理不尽に聞こえる声に信じたかった人達の声に…。もうコリゴリだ。このままありのままの自分を隠し続けてたら俺は人として終わる気がする…。だから最後に。今の俺を!今のこの現状を!!!変えれる何かを得るために!1歩踏み出す!!!誰も俺を知らない最高に自然豊かで俺の超能力が役に立つところ!!!」
今まで1番でかい深呼吸をし叫ぶ
「いくぜ!!!!空間転移!!!」
直後、彼と彼の家を光の線が囲い大きな光に呑まれる。
「あれ??なんで家も?」
そう思ったが最後光に呑まれ目を開けていることが困難になり手で目を覆い目を瞑り
「うおおおおおおおおおおおお」
ヒュウウウウウンと謎の効果音と男の悲鳴が鳴り響いた。空間転移を発動してから時間にして五秒たっていなかったであろう。目を潰すような光と謎の効果音がなくなっていた。それに本人が気づいたのは匂いを嗅いでからだった。明らかに家の匂いじゃない。夏の山を吹き抜ける風のようないい匂い。恐る恐る視界を塞ぐよう顔にかざした手を下にどけ目を開ける。圧巻だった。
「すげぇ…」
そうゆうのも無理ない。目の前に立派な山々が連なっている。一歩また一歩と気持ちいい風が吹き抜ける草原を前に歩く。ここも近くの山のてっぺん近くなのだろうかとふと思う。大きく深呼吸をする。
「スゥーーッ最ッッ高ーーだぁっーーー!!!」
ひと叫びした後に一息つき大自然の匂い嗅ぎながら一度冷静になる。どうしても確認しとかなければならないことがあるからだ。空間転移の直前のことを思い出す。そう家だ。家も完全に巻き込まれていた感じだった。俺は何故か外に居て後ろからギシギシと聞こえてくる不吉な音。最高にハイだった頭が段々と今の状況理解してくる。
「まず、、ここどこの国だ?たしかに自然豊かな所とは言ったが完全に日本ではないよな、、」
そして。後ろを振り向き予測できていた家の状況をみてもう一度前を向き直後とんでもない不安で頭が混乱する。
「どこに空間転移したのかも分からず、家はボロボロ…あれ?これ俺やばくね??」
だがそんな不安もつかの間だった。確かにやばい状況だか俺の望んだ所で俺望んだ1から自分を作れる場所だと理解するには充分すぎる場所だったからだ。むしろ心はワクワクしてきていた。
「とりあえず山をおりながら人を探して情報収集だな!どこの国かさえ分かれば戻りようはいくらでもある!」
そう思い山を降りる準備をするためボロボロになった家に入っていき必要なものをいれるためバックを探すがなにもない。バックどころが机やタンス、テレビといったものがなにもない。まるで新居のように。
「……俺と家を囲んでたもんね。まさか、、中身は全部空間転移できなかったてこと?家と俺だけ?」
そんな器用な事ができてしまうのかと思い、ふと読心術を思い出す。そうだあれも酷すぎものは聴こえるなんていう弱点があった。
「もしかして空間転移も、、何かしらの制限とかがあるって事か?」
俺とした事がなんてことだ。何の考えもなしに突っ込んでしまった結果だ。
風が吹く。風の方によられ草原を歩いていき晴れ渡る空を見上げる。
「あぁ…クソ。やっぱりろくなもんじゃねえ…どうすんだこれ…」
だがなってしまったものはしょうがない。今のこれを受け止めてここからどうするかが重要だ。元々今を変えるためにやった事だ。やる事は変わらない。
「降りるか山を。どこの国かわからねえが昼間みたいだしとりあえず食い物や泊まる所を探しに行かねえとやべぇ。幸いにも今はスーツだ。海外に出張にきて迷った設定でやったら割となにか紹介してくれるかもしれねえ」
とはゆってもかなり高い山だなと思う。周りの山々と同等ぐらいだ。下をみてもどこまで続いてるかわからぐらいボヤけている。だがそれをみてまたワクワクが止まらない。使えると確信しニヤッと笑う。
「よし。使ってみるか三つ目の超能力。瞬間移動を!」
いざという時に使えるものとしか認識して無かったものが空間転移で操作性がつく本当に思い通りになってくれるという便利なものという印象に変わりより強い確信となった今新しいものを使うのになんの迷いもなかった。
「あそこに行きたいと念じるんだ。じーーっと見つめて…」
どうやったら使えるか。そんなものは直感が教えてくれていた。おそらくこうしたら使えるという本能。できるだけ山の下の方の道をみて念じこれも3秒あるかないかだろう。
「今!!!瞬間移動!!!」
ヒュっと一瞬身体が浮遊感のようなものに襲われるがさっきのに比べたらどうって事ない。次に視界に初めに映ったのはさっきまで自身が見ていた道の前の森だった。
「きたぁーー!今回は完璧だ!なにもおきてねぇ!よし!今どの辺だ?」
道から下をみて驚愕する。かなり下の方にきたつもりだったがどうやら半分だったらしい。だがゴールは近いようだ。その証拠に下には町がある決してデカいとは言えないが日本の集落ぐらいにはある。
「ようやくだな。んじゃもういっちょやるか!」
そう言い放つと和雲和輝は最後の瞬間移動をした。
「へへっ着いた。それにしてもでっけー門だなぁ」
山をおりることに成功した和雲は町の入口である門をみて感激していた。
門とその横には円形を形取るよう塀が立ち並べられている。村を囲んでいるのだろう。
「これは普通に門を開けて入れってことかな?」
それにしてはかなりでかい。これを開けろというのは人間では無理があるんじゃないかと思うぐらいに。
「流石にキツいし瞬間移動で門の上に立って下に着地が1番無難かな。」
そう考えて門の上をみて瞬間移動で着地する。洋風な町並みをみてここでもまた感激する。
「TVとかで観たヨーロッパみたいな家と道だなぁ。なるほどここはヨーロッパの何処かって感じか。」
一つ疑問が晴れたと思うばかりに顔をうんうんと頷かせる。そして下をみて瞬間移動で地面に着地。
「ふっ。とりあえず町散策といきますか!!何気海外とか初だし?ワクワクしちゃうなぁ。」
と、思い軽い一歩を踏み出したその瞬間足元に1本の矢が突き刺さる。
「は?………ええええええええ?!」
咄嗟に尻もちをつき後ずさる。
「は?!えっ?なっなんだってんだ?やっ矢?だって」
バクバクなる心臓に手をあて目の前の事実を信じられない自分と事実を映してる自分の目に混乱している。
「う、うたれ、たのか?どっどこから?いっいやそのまえに誰から?」
そう思う途端にそれらを解決する者の姿が目の前の左右横に家が立ち並ぶ一本道から歩いて来るのが目に映り色んな意味で衝撃がはしった。身長は自分より少し小さいくらいだろうか露出の多い服に褐色の肌。見惚れてしまうぐらい美しい美形に紅のような真っ赤な目、首裏まで伸びた銀色に近い色の髪。牙が少しみえてる口。そして何より人間ではありえないぐらい鋭利な歯と本来そこにあるはずのない頭の上の獣耳にお尻にあるしっぽのようなもの。
「どうして撃たれたかだって?あたし達の領地に無断で入っておいて本当に言ってんのかてめぇ。」
殺伐とした雰囲気の彼女から放たれた言葉は和雲和輝に重くのしかかった。変な返答などすれば殺すそう感じるほどの重圧が彼女から放たれていた。
(これは現実なのか…どうなってる。海外じゃないのか?しかしかあの姿は完全に漫画やアニメといったものにでててくる獣人と呼ばれてるやつではないのか?)
心の中で和雲和輝はショートしかけの頭で必死に考えるがそんなもの待つ間もなく
「何も答えねぇって事はそうゆう事だと受け取っていいんだな?」
目の前の獣人は殺気を漂わせ弓矢を構える。その瞬間に和雲和輝はここに来た時をフラッシュバックした。馬鹿みたいにでかい山々にそこがみえる草原。瞬間移動しても半分が限界の山。人間では開けれないし入れないであろう門にヨーロッパ風の町並み。そして何よりこの目の前の獣人と光景。これだけ揃えばもう疑う余地はない。むしろ最初に気づくべきだったのかもしれない。なぜ気づかなかったのか。へたりこんだ姿勢のまま上を見る。いい天気だ。
「空間転移……景色のいい所で異世界に飛ばすかよ普通……ありえねぇだろ」
目に涙がたまる。せっかく変わろうとして行動したら異世界に飛ばされて訳分からん獣に矢で撃たれて死ぬとかあんまりだろ。和雲和輝の頭はそこで完全にショートし、へたりこんだ姿勢を支えてた両手は力を失いそのまま仰向きにたおれこんでしまった。目が閉じかける刹那先程まで弓矢を構えていた獣人が何かを叫んで走ってこっちに向かってきているのがみえたが全く聞こえずそこで意識は完全に失っていた。
「おっおい!どうした?!大丈夫か?!クソ!いきなり入ってきて涙流しながら気を失うって何がしてぇんだてめぇ。こっちが悪ぃみたいじゃねえか!」
気を失った男を両手で上半身をおこし揺さぶりながら獣人がはきちらかす。
「人の国の野郎だな。こんな馬鹿な姿みせつけるやつが悪人とは思えねぇが、、」
「処置をしてあげて話を聞いてあげてからでもよろしいのでは?」
そんな時後ろから聞き覚えのある声がかけられて獣人は後ろを向く。そこに立っていたのは小柄で緑のドレスのようなものを着ている薄い黄色のような髪を腰の辺りまで伸ばしていて尖った耳をあるべき場所へと持つ可愛らしい顔立ちの見慣れた少女が立っていた。
「なんだてめぇも来てたのか。」
「ええ。あなたに万が一があったら大変ですもの。それに一部をみていましたが彼に悪意はありませんでしたよ。むしろ深い後悔のようなものをいくつも感じました。」
「後悔ねぇ。だがこいつが入ってきたのは後門だぞ?この山を超えて来たってことだ。アタシも処置ぐらいしてやりてぇが流石に独断ではできねぇ。」
「……連れてくのですか?」
「ああ。これでもアタシは戦士なんだね。悪く思わないでくれよ若い兄ちゃん。」
「久しぶりに荒れるかもしれませんわね。」
「勘弁してくれ。とりあえず乱暴はしないようにアタシから言っとく。あんたはもう帰んな。」
「ええ。そうしましょう。明日が少し楽しみになりましたので早く寝ることにします。ふふ。」
「ったく。んじゃなぁ。」
「ええ。またあした」
そう言って二人はそれぞれ向かうべき所へと向かい帰るのだった。
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