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自作小説倶楽部 第22冊/2021年上半期(第127-132集)  作者: 自作小説倶楽部
第132集(2021年06月)/季節もの「雨宿り」&フリー「法則(魔法・運命・法律・心変わり)」
26/28

03 紅之蘭 著  法則 『ガリア戦記 24』

【登場人物】


カエサル……後にローマの独裁官となる男。平民派として民衆に支持される。

クラッスス……カエサルの盟友。資産家。騎士階級に支持される。

青年クラスス……クラッススの子。カエサル付き将校になる。

ポンペイウス……カエサルの盟友。軍人に支持される。

ユリア……カエサルの愛娘。ポンペイウスに嫁ぐ。

オクタビアヌス……カエサルの姪アティアの長子で姉にはオクタビアがいる。

ブルータス……カエサルの腹心 

キケロ兄弟……兄キケロと弟キケロがいる。兄は元老院派の哲人政治家で、弟はカエサルの有能な属将となる。

デキムス……カエサルの若く有能な将官。

ウェルとイミリケ……ガリア人アルウェルニ族王子と一門出自の養育係。


挿絵(By みてみん)

挿図/ⓒ奄美剣星「ゲルマン歩兵」


    第24話 法則


 『ガリア戦記』第四巻は、紀元前五五年、カエサルが四五歳のとき、元老院に提出した報告書だ。

 冬場に、カエサルは、イタリア本土で盟友ポンペイウスやクラッススと利権の調整を行い、少数の近習を率いて、南仏・北伊・アドリア海北端の三属州を巡回視察したのち、雪も溶けやらぬ春先には、アルプスを越えて前年に征服した、現在でいうところのフランス・ベルギー北岸に入るわけだが、その間にも、麾下の将軍たちの報告を受け、状況を分析していた。

 カエサル陣営が密偵として活用したのは商人だ。商人はもっぱらガリア人だったが、中にはローマ人や、ローマの市民権を得ている南イタリアのギリシャ系植民都市出身者もいた。

 カエサルは、出迎えにきた麾下の将軍の一人である弟キケロと、轡を並べ、話しをした。

「それでキケロ将軍、ライン川を探検した商人たちは何と言っていた? ゲルマン人で最も強い部族は?」

「ライン川中流域を支配するスヴェヴィ族だとのことです、総督閣下」

「スヴェヴィ族はどんな部族だね?」

「――ひと口に言って質実剛健。彼らは飲むと戦闘力が弱まるとして、飲酒習慣がありません。また、商人から交易品を買うことはせず、自給自足が基本。ただ周辺部族を攻めた際に出る戦利品を売却します。さらに彼らは、周辺部族を族滅しても征服地にローマのような植民都市を築かず、(直接支配地から半径九百キロもの)広大な休閑地を所有していることを、誇っているとのこと。……支族は百余、兵員は一支族につき一千人として、総兵力一十万人と目されています」

 カエサルたちは、これまで、数万の手勢で、総兵力三十万の敵対するガリア諸部族を相手にしてきた。数からすればスヴェヴィ族の兵員こそ三分の一だが、狩猟・肉食民族であるゲルマン系は、何せ図体が一回り大きく、素手でやりあったらローマ兵でもかなわないのは判っている。


 カエサルが麾下のローマ軍主力部隊と合流し北伐を開始すると、ウシペディー族やテンクテリ族といったゲルマン系二部族の長老が使節として、彼の帷幕を訪れた。

「貴公ら部族の所領はライン川右岸にあったはず。父祖の土地がスヴェヴィ族を奪われたからといって、川を渡って、わが麾下のローマ将兵が血を流して得た征服地をただで明け渡せというのは、虫が良すぎはしないか? 」

「棲家を追われた、われらには行くところがありません。寛大な総督閣下のお慈悲にすがるより方法がないのです。もしお慈悲を戴けないのならば破れかぶれで――」

「一戦も辞さないということか? 土地がないというならば、ちょうど、ライン右岸にいるウヴェヴィ族からも使節が来ている。彼らの休閑地をわけてもらうように、仲介してやらぬではない」

 ウシペディー族とテンクテリ族の長老たちは顔を見合わせた。

 そんな最中にハプニングがあった。

 両部族の騎兵隊が、偵察に出ていたカエサル麾下ローマ軍騎兵七五騎を襲撃し戦死させたという報告があった。七五騎の騎兵は友好関係にあるガリア人部族で編成されていた。これは事実上、ローマへの宣戦布告に等しい。カエサルは使節を斬り、挑戦してきた敵部族に奇襲をかけた。

 ウシペディー族やテンクテリ族四十万人は、遠征軍ではなく、せいぜい武装をした難民というところだ。両部族兵士は十万を擁してはいたが、戦い馴れたローマ兵三万の敵ではなく、テント集落を荷車で囲んで円陣としただけの〈車城〉は、易々と突破された。敵対者のうちの半分は逃亡し、残る半分は一方的な殺戮を受け、恭順して捕虜となった者は奴隷になった。――こうして彼らは族滅させられたのだった。


 カエサル麾下ローマ軍は、現在のドイツ・ボン市とケルン市に至るライン川左岸域に達すると、木柵を巡らした方形の砦を建て、周辺の森を伐採、大量の木材を山積みにし、部品化していた。

「何を創るのか? 橋だ。いよいよ、この地にローマ文明を波及させるのだよ」

 対岸には、スヴェヴィ族の広大な領域がある。

 ゲルマン人最強部族征服のためにカエサルが、麾下のローマ将兵にこしらえさせたのは、人類がラインの大河に架けた、初の橋だった。


          つづく

【あらすじ】

 共和制ローマ末期、南仏・北伊・アドリア海北端の属州総督となったカエサルは、実力者のポンペイオスやクラッススと組んで三頭政治を開始し、元老院派に対抗する一方で、不安定なガリアの鎮静化のため、行動を起こした。

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