02 柳橋美湖 著 雨宿り 『北ノ町の物語 85』
【あらすじ】
東京のOL鈴木クロエは、母を亡くして天涯孤独になろうとしていたのだが、実は祖父一郎がいた。手紙を書くと、祖父の顧問弁護士・瀬名が夜行列車で迎えにきた。そうして北ノ町に住むファミリーとの交流が始まった。お爺様の住む北ノ町は不思議な世界で、さまざまなイベントがある。 ……最初、お爺様は怖く思えたのだけれども、実は孫娘デレ。そして大人の魅力をもつ弁護士の瀬名、イケメンでピアノの上手なIT会社経営者の従兄・浩の二人から好意を寄せられる。さらには、魔界の貴紳・白鳥まで花婿に立候補してきた。 季節は巡り、クロエは、お爺様の取引先である画廊のマダムに気に入られ、そこの秘書になった。その後、クロエは、マダムと、北ノ町へ行く夜行列車の中で、少女が死神に連れ去れて行くのを目撃。神隠しの少女と知る。そして、異世界行きの列車に乗って、少女救出作戦を始めた。 異世界では、列車、鉄道連絡船、また列車と乗り継ぎ、ついに竜骨の町へとたどり着く。一行は、少女の正体が母・ミドリで、死神の正体が祖父一郎であることを知る。その世界は、ダイヤモンド形をした巨大な浮遊体トロイに制御されていた。そのトロイを制御するものこそ女神である。第一の女神は祖母である紅子、第二の女神は母ミドリ、そして第三の女神となるべくクロエが〝試練〟に受けて立つ。
85 雨宿り
浮遊ダンジョンの第十一階層はなんと、母の実家・北ノ町でした。北ノ町一ノ宮神社をスタートした見習女神の私・クロエと仲間たちは、同階層のゴール地点となるお爺様のお屋敷に向かっていました。ところが、途中の湖で、炎龍のピイちゃんが、突然に、帰ってしまった様子です。
◇
「ジョーカーというか、トリック・スターというか、読めないヤツだったけど、いざいなくなると寂しい」 システム・エンジニアをしている従兄の浩さんがそう言うと、横にいるお爺様の顧問弁護士・瀬名さんや、カラス画廊オーナーのマダムがうなずきました。しかしそんな感傷もつかの間、雷をともなったゲリラ豪雨があり、私達は、屋根のあるバス停に避難しました。横殴りの雨。私たちはずぶ濡れです。そこへ、うまい具合に、北ノ町駅行きのバスが通りかかりました。それは、車体にトラ猫のペインティングをしたボンネット・バスでした。 運転手さんは、空調を温風にして、私たちを温めてくれました。私たちがやれやれ安堵しているとバスは、沿道が紫陽花が咲き乱れている長い下り坂を通り抜け、やがて駅前バスターミナルに着きました。 北ノ町駅の駅舎は、高原のバンガロウのような造りで、風見鶏をてっぺんに建てた時計塔があります。雨がまだ降っていたので、乗り継ぎのバスが来るまで、私たちは駅舎で待つことにしました。 改札の向こう側に見えるホームには青い寝台急行列車が停まっています。( ――この異世界旅行の始まりは、マダムとあの列車に乗っていたとき、母が扮した〝神隠しの童女〟を救出しようとしてのものだった。あれに乗ったら東京に戻れるのかな?) ふと、そんなことを考えていると、ヨット・ハーバー行きのバスがやってきました。 お爺様のお屋敷は、終点近くのバス停で降りればいいのです。 ところがですよ。バスターミナルにやってきた、乗り継ぎバスの運転席窓越しにいた運転士さんは、なんと、――ここ浮遊ダンジョンで、試練を与える側になっている――お爺様でした。 あらら……。
◇
では、またまた次回も第十一階層でお会いしましょう。
By.クロエ
【主要登場人物】
●鈴木クロエ/東京暮らしのOL。ゼネコン会社事務員から画廊マダムの秘書に転職。母は故ミドリ、父は公安庁所属の寺崎明。女神として覚醒後は四大精霊精霊を使神とし、大陸に棲む炎竜ピイちゃんをペット化することに成功した。なお、母ミドリは異世界で若返り、神隠しの少女として転生し、死神お爺様と一緒に、クロエたちを異世界にいざなった
。
●鈴木三郎/御爺様。富豪にして彫刻家。北ノ町の洋館で暮らしている。妻は故・紅子。異世界の勇者にして死神でもある。
●鈴木浩/クロエに好意を寄せるクロエの従兄。洋館近くに住み小さなIT企業を経営する。式神のような電脳執事メフィストを従えている。ピアノはプロ級。
●瀬名武史/クロエに好意を寄せる鈴木家顧問弁護士。守護天使・護法童子くんを従えている。
●烏八重/カラス画廊のマダム。お爺様の旧友で魔法少女OB。魔法を使う瞬間、老女から少女に若返る。
●白鳥玲央/美男の吸血鬼。クロエに求婚している。一つ目コウモリの使い魔ちゃんを従えている。第五階層で出会ったモンスター・ケルベロスを手名付け、ご婦人方を乗せるための「馬」にした。
●審判三人娘/金の鯉、銀の鯉、未必の鯉の三姉妹で、浮遊ダンジョンの各階層の審判員たち。




