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自作小説倶楽部 第22冊/2021年上半期(第127-132集)  作者: 自作小説倶楽部
第130集(2021年04月)/季節もの「季節の花」(桜、チューリップ他《花見・夜桜含む》)&「フリー」神秘(秘密、ミステリ、神話)
19/28

04 らてぃあ 著 『楽しみなドライブ』

挿絵(By みてみん)

挿図/Ⓒ奄美剣星「沈みゆく花嫁」


「少しは自分を客観的に見なさいよ。みんなあんたの自慢話にうんざりしているのよ」

友人が静かだが棘のある口調で言った。

しまった。また妬まれてしまったわ。本当のことを話しているだけなのに、みんな私の幸せをひがむ。私が幸せなのは仕方ないことなのに。

3年前から付きあっている私の彼氏はそれは素敵な人なのだ。少し気が利かないところや気弱なところもあるけれど、私がちゃんとサポートしてあげるから大丈夫。

出会った当時は仕事ばかりのつまらない人だったけど私に合わせて休暇を取らせて二人で遊びや旅行に行くようにした。会社の飲み会なんて詰まらないものには参加させないようにしたわ。

私の誕生日はもちろん、季節の行事、二人の記念日も忘れず花束やプレゼントをくれる。この間、カサブランカを買って来たけど花粉が落ちるから嫌と言ったら、夜中なのに花屋さんまで走って薔薇を買い直してくれた。来週のドライブにはきっと私へのサプライズを用意してくれるはずだ。

プロポーズでもするつもりかしら。いくらくらいの指輪をくれるのだろう。もちろん、まずは婚約指輪よね。以前雑誌を見せて素敵だと言ったブランドかしら。うん、きっとあの指輪よね。違っていたら優しい彼は買い直してくれるわ。ドライブの行き先は静かな海辺らしいけど、きっと素敵な思い出になるわ。

「後輩の女の子のことは覚えている? あんなにひどいことをするなんて、どうかているわ」

ひどいこと? 少し押しただけよ。そしたら彼女が勝手に転んだの。彼に色目を使ったから罰が当たったのよね。

「彼はあんたと別れたがっているわ」

そんなはずはないわ。来週は二人きりでドライブよ。確かに、一度、いえ、もう少し多く、ちょっと鬱気味な時に彼は別れるって言うことがあるわ。でも、いつだって私が必要だってわからせてあげるのよ。

「来週のドライブの目的は何だと思っている?」

決まっているじゃない。私を楽しませるためよ。

「地図を見ておかしいなって、思ったでしょう? 人気のない港よ。車で行けば到着は夜よ」

駄目よねえ。計画性がなくって。でも、そう言ったら、私にどうしても見せたい景色があるんだって説得されたのよ。もし間違っていたらどんなお詫びをしてもらおうかしら。

「あんたが死んでも悲しむ友達もいないわね」

私が死ぬわけないじゃない。彼が悲しむわ。

「むしろ清々するわ。彼はあんたと別れたくて仕方ないんだから」

別れたりしないわよ。また、そんなことを言いだしたらタダじゃ済まないから。

「あんたが彼と行く場所は事故が多いのよ。地元の人はまたあそこか、と思うだけ。彼は警察にあんたの我儘で岸壁に車を停めたと説明する」

何を言っているの?

「だから、ドライブに行っては駄目よ」

その時、私は思いだした。彼にドライブの計画は誰にも内緒だと言われたのだ。それをどうして友人と話しているのだろう。それに、この人は誰? 最近、彼の話ができる友達はいない。

「お願いよ行かないで」


悲壮な声で我に返る。

いやだ、うたたねをしていたのかしら。もたれたテーブルの反対側を見ると何をこぼしたのか水浸しになっていた。潮の香りがするのは気のせいよね。

その時、携帯電話が着信を告げる。彼からだ。いつもはすぐに出るのに私の手は携帯電話を握ったまま動かなかった。

私の中にあったはずの彼への強い執着はどこにも残っていなかった。


          了

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