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自作小説倶楽部 第22冊/2021年上半期(第127-132集)  作者: 自作小説倶楽部
第130集(2021年04月)/季節もの「季節の花」(桜、チューリップ他《花見・夜桜含む》)&「フリー」神秘(秘密、ミステリ、神話)
16/28

01 奄美剣星 著  ミステリ 『ヒスカラ王国の晩鐘 13』

 *あらすじ

 勇者とは、超戦士である大帝を討ち果たすことができる王国唯一の超戦士のことをさす。二五年前、王都防衛戦で帝国のユンリイ大帝と刺し違えた指揮官ボルハイム卿がそうだ。やがて二人の超戦士がそれぞれ復活。暫定的な講和条約が破綻しようとしていた。そして、大陸九割を版図とする連合種族帝国が、最後に残った人類王国ヒスカラを併呑しょうとする間際、一五歳の女王は自らを依代に勇者転生を決断した。

 冬季連合種族帝国軍攻勢は、実質、ヒスカラ王国に対する威力偵察であるとともに、巨大な虫型兵器である「カブトガニ」の実験でもあったのだが、女王オフィリアの機転とカリスマ的なスキルによって、初号機を寝返らせることに成功。そのため、帝国軍は、地団太を踏みながら、戦線から後退せざるを得なくなった。


挿絵(By みてみん)

挿図/Ⓒ奄美剣星「ムラサメとカミーユ」

   13 ミステリ


 王宮旧館にある廷臣用大食堂に入ってすぐの壁には、全身を写す鏡が掛かっている。

 長い四肢に細身、シュッとした顔の輪郭。――どのアングルから見ても小官はいい男だ。小官が鏡に映したわが身を愛でていると、

「ムラマサ少尉、相変わらずの『川辺の春花』さんですのね」

 という声がした。

 「川辺の春花」というのは水仙のことで、とどのつまりは「ナルシスト」を意味している。


 直属上司レディー・デルフィー中佐は、長い髪を後ろで束ねている眼鏡美人だ。――そう、王宮では、能力ばかりでなく、容姿端麗さも要求されている。実を言うと彼女はヒューマノイドだ。時空災害でこの世界に飛ばされてきた異時空都市遺跡・軍都二三〇〇で発掘・蘇生され、女王顧問官になった。ドレスに盛装したレディー・デルフィーは、彼女をエスコートしていた燕尾服を身にまとった口髭の紳士にエスコートされ、ホールの奥にある貴賓席に向かった。

 ホールには、長机がいくつも並べられており、文武両官が、席に着き、談笑していた。食事は、ビュッフェ方式だ。大皿を並べたテーブルから、トレイに料理を載せてくるのは、「閣下」と呼称される、大臣・次官級高級官僚も同じだが、一般廷臣とは屏風で仕切って、貴賓席としている。

 紳士はわが国の内務大臣だ。本来、局長級のレディー・デルフィーが、貴賓席には着けないのだが、大臣にエスコートされているので、閣下との同席が許可された。


 さて、小官の相棒・カミーユ君を紹介しよう。

 亜麻色の髪をしたカミーユという女王付きの(少年従者)侍童だ。カミーユ君は、見た目こそ「ショタ」な十歳児だが、オフィーリア女王陛下が、連合種族帝国との国境紛争のとき、敵側から寝返らせた、最新鋭生物兵器「カブトガニ」のアバター(分身)だ。――「カブトガニ」本体は、重戦車級の大きさで、王宮地下にあるシェルターに隠されている。

 小官とカミーユ君は、ビュッフェ・トレイを持って、ホールの中ほどにある席に着いた。

 ――レディー・デルフィーが、大臣に盗聴器を仕掛けることに成功しましたよ。

 カミーユの依代も、レディー・デルフィーが、発見された都市遺跡出土のヒューマノイドを使用しているので、思考回路と無線機能とを接続できた。そういうわけで、傍受した内容をモールス信号の瞬きで、小官に伝えたわけだ。


 一時は、大陸の大半を制圧した人類だが、亜人たちが連合種族帝国を成立させてから以降は押され気味で、今や、人類国家として残っているのは、西辺にあるヒスカラ王国だけだった。

 ヒスカラ王国には「王の目」という国王直属機関がある。具体的には、女王顧問官であるレディー・デルフィーが局長を兼務している。「王の目」の詳細は機密事項なので、ここでは伏せておくが、かくいう小官・ムラマサ少尉やカミーユ君もその一員である。

 先日、「クマムシ」一体が、王宮内部に入り込み、宮殿内部を徘徊。アーチの回廊で、近衛兵と派手な格闘をした末、中庭で撃破された。クマムシは、長い触手をもった芋虫のような形で、人の丈の二倍ほどの大きさの情報収集型生物兵器だが、火器は装備されていない。

 帝国は、これまで、クマムシを、「竜眼蟲」を主体とした飛行型生物兵器で搬送してきた。厳重な王都圏レーダー網をかいくぐり、王宮に潜入するのは不可能。まず国境地帯で降ろし、そこから陸路をつかって密かに王宮に入ったことになる。――ならば手引きした者が必ずいるはず。

 そう睨んだレディー・デルフィーが、「クマムシ」の王宮潜入を手引きした内通者として、もっとも疑ったのが、口髭の内務大臣だった。

 

 事態が急変したのは、その翌日のことだ。

「内務大臣が、連絡役の廷臣に暗号文書を手渡すとの情報を得た。大臣と連絡役とを現場で取り押さえ、一網打尽にせよ」と、レディー・デルフィーに命じられた。――早速、小官と相棒のカミーユ君で、大臣の控室をマークした。

 連絡役は大臣の執務室に入り、帽子掛けに掛けた深縁帽子のリボンにマイクロフィルムをさりげなく差し込み、何食わぬ顔で大臣室を出る筋書きだった。――刹那、小官とカミーユ君で連役を確保した。ところがだ。このとき大臣は部屋にいなかった。

「カミーユ君、宮廷内には大臣の息がかかった廷臣たちも多い。「王の目」が、大臣の不正に気付き、内偵しているという情報が対人側に漏れたのかもな」

 大臣は変装して国外逃亡を図ったのだが、王都からさほど離れていない州警察の検問に引っかかり、身柄を確保された。


 大臣は取り逃がしたものの、小官たちはそれなりの成果も上げた。――カミーユ君にはご褒美をやらねばなるまい。

「口づけを君に」

 小官が壁ドンをしたとき、背後に腕組みをしたレディー・デルフィーが立っていた。


          ノート20210430

〈ヒスカラ(人類)王国〉

01 オフィーリア・ヒスカラ三世女王……転生を繰り返す王国の英雄ボルハイム卿の依代。ボルハイム卿は25年前の王都防衛戦総司令官となり、帝国のユンリイ大帝と相討ちになった。卿は、その後、帝国辺境の町モアで少年テオを依代に復活、診療医となるも流行り病で没し、女王の身体を依代に、再び王国側に転生した。ヒスカラ暦七〇二〇年春現在15歳。

02 アンジェロ卿……灰色猫の身体を依代に、古の賢者の魂魄を宿す王国護国卿。事実上の王国摂政で国家の最高決定権がある。ボルハイム卿の移し身も彼が執り行ったものだ。巡洋艦型飛空艇パルコを居館代わりに使用している。/十年前に異界工房都市の〈量子衝突〉実験で事故が生じて〈ゲート〉が開き、男女十人からなる異界の学者たちが迷い込んできた。学者たちは、ノスト大陸の随所にある飛行石鉱脈を採掘し、水素やヘリュウムの代わりに、飛行石をつかった飛行船の一種・飛空艇を開発した。/アンジェロ卿は彼らを自らのブレーンにした。ヒューマノイドのレディー・デルフィー、ドン・ファン大尉のロシナンテ戦闘機飛行中隊の戦闘機シシイも、異界学者たちが製作したものだ。

03 レディー・デルフィー(デルフィー・エラツム)……教育・護衛を職掌とする女王顧問官で、年齢、背格好、翡翠色の髪まで似せたヒューマノイドだ。オフィーリア女王の目が大きいのに対し、レディー・デルフィーは切れ長になっているのは、彼女の製作者が女王との差別化を図ったためである。レディーは衣装を女王とそろえ、寝台も同じくしているが「百合」関係はない。さらに伊達眼鏡を愛用する。

04 ドン・ファン・デ・ガウディカ大尉……二五年前連合獣人帝国によって滅ぼされたガウディカ王国国王の息子。大尉の父王は、滅亡直前にヒスカラ王国に亡命してきて客分となり、亡国の国王はヒスカラ王族の娘を妃に迎えて彼が生まれた。つまるところオフェイリアの従兄で幼馴染、そして国は滅んでいるがガウディカ王太子の称号がある。女王より二歳年長のドン・ファンは、「オフィーリアを嫁さんにして、兵を借り、故国を奪還するんだ」というのが口癖。主翼の幅一〇フット後部にエンジンを取り付けたシシイ型プロペラ戦闘機の愛機に「ロシナンテ」と名付け、同名の飛行中隊20機の指揮官に収まっている。


〈連合種族帝国〉

01 ユンリイ大帝……一代でノスト大陸9割を征服し大帝国を築き上げた英雄。あまたの種族を従えていた。25年前の王都攻略戦で、ボルハイム卿の奇襲を受け相討ちになるも、帝国臣民に復活を待望されている。比類なき名君。

02 フィルファ内親王……大帝が不在となった帝国を預かる摂政皇姉にして大賢者。王国の勇者ボルハイム卿に対するアンジェロ卿のようなもの。黄金の髪、青い瞳、透けた背の翅が特徴的な有翅種族女性。火の粉が降りかかれば払うが、弟と違って戦いを好まず、戦禍で荒れた土地の迅速な復興など内治に功績がある。

03 テオ・バルカ……帝国の版図に収まった辺境都市モアで診療所を開いていた猫象種族。帝国側道士によってボルハイム卿の魂魄が移し身されるとき10歳の少年だった。すでに両親はなく、看護師の姉ピアに愛情深く育てられた。本来は大帝復活のための依代であったが、大帝の遺言により、ボルハイム卿が王国側で復活しないようにするための措置で、テオはボルハイム卿の依代となった。町から出ることを許されず、事実上の軟禁状態にあった。その後25年後、流行り病で没し、共同墓地に葬られた。猫象種族の妻を娶り、二男三女をもうけた。

04 ジェイ・バルカ……テオの息子・猫象種族。両親を流行り病で亡くし、弟妹たちとともに伯母ピアに育てられる。少年兵で従軍し戦地で上等兵となるも、王国軍の捕虜になる。捕虜交換で帰国後、士官学校入学の名目で帝都に召喚され、ユンリイ大帝転生に際し、依代となる。戦友はガンツ上等兵。


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