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蒼刻の運命  作者: もにょ
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第一話・蒼き夜の旅立ち

いつからかは正確には分からないが、世界の気温が低下し、現在では年中冬のような気候となってしまった。

寒冷化による食料危機の影響もあり、総世界の人口は半減。それとほぼ同時期に『能力』を持つ人間が現れ始め、瞬く間に世界を統一した。

その中でも原始の十三の『能力』を、人々は『禁忌』と呼び、恐れ敬ったのだった。




ここは、絢爛な王都とはかけ離れた辺境の地。吹雪の影響もあり、寂れた雰囲気が漂っているものの、暖かみのある木造建築が立ち並んでいる。

高級そうな毛皮のコートに身を包んだ大男達の集団は、寂れた町並みを黙々と歩み行く。

集団の中で唯一平均的な体格を持つ青年が立ち止まり、彼らに告げる。


「今回の相手は恐らく禁忌だ。お前らはもう下がってろ。」


次の瞬間、空を覆っていた厚い雲は消え去り、月が顔を出した。

月光に照らされた道の先には、痩せ細った体に、縮れた紫の長髪を持つ不健康そうな長身の男が、彼らの行く手を遮るように立っていた。

青年はその男に近づき、腰に下げた剣に手を掛ける。


「ここで戦えば街に被害が出る。場所を変えさせて貰うぞ。」


次の瞬間、一瞬で間合いを詰めた青年は、男を地平線の彼方まで斬り飛ばした。


 「俺はアイツと戦ってくる。街の護衛は任せたぞ」


彼は次の瞬間には地面を蹴り、地平線の先へと飛んで行った。


 「龍斗様なら大丈夫だ。私たちはこの街を全力で守ろう。」


残された一団は、目的の『それ』を探すべく街の各所へと散らばった。




白い雪に紛れ、白髪の少女は路地裏を走り抜ける。先程吹雪が突然止んだのは、彼らが来たことを証明している。

息を潜めて物陰を伝い、彼女は街の外へと向かう中、目の前に何か大きな物が飛んできた。

雪が舞い上がった隙に、他の物陰に隠れ、飛んできた物を確認する。

それは王都騎士御用達のコートを着た男だった。彼は既に気を失っており、その胸には白い十字架のような剣が突き刺さっていた。不可解なことに、剣が体を貫通しているにも関わらず、血の一滴も流れていない。


「まだいるんかよ、勘弁して貰いたいね全く。」


彼を吹き飛ばした張本人と思われる声が彼女へと向けられる。

青み掛かった黒髪の青年が、屋根の上に座ってこちらを見ていた。

その手には先程男に突き刺さっていたものと同じ剣が握られており、その切っ先は彼女へと向けられていた。

ここで逃げようとしたその瞬間、彼にあの大男同様殺されるだろうという予感がする。少女が取れる選択肢は一つだった。


「私はこの人たちのことは知らない。あなたも私のことが標的なの?」


少女は倒れている男を指差しながら、その青年に言い放った。


「えーと、誤解だったみたい。なんと言うか俺もソイツらに攻撃されてな……というか服装が違う時点で気がつくべきだったか。ゴメン」


敵では無いことに安堵したのか、彼は屋根から飛び降りて彼女の前に降りてくる。

気がつけば、彼が所持していた剣は跡形も無く消え去っており、

男に刺さっていた物も同様に消えていた。


「傷跡が無い……あなたの剣、もしかして能力なの?」


「まあそんな感じ。それより、君も襲われたんだろ?」


「そう、突然襲われて……」


少女の言葉を遮る形で青年は問い詰める


「突然ってあのな、心当たりはあるだろ?あれは王都の騎士様だからな。僕は能力持ちだから犯罪の可能性アリってことで襲われたけど、君はどうなんだ?」


少女は沈黙を保ったまま、目の前の青年の瞳を見つめる

しばらくの沈黙に耐えられなかったのは青年の方だった。


「あー分かった分かった。プライバシーね、了解そういうことね。悪かったってそんな睨まないでって。

とりあえず君が極悪人だとしても、この街出るのは手伝ってやるからさ。」


目を反らし、少し早口で青年はそう言い、着いてこいと手で仕草する。


「あ、あの……なんと言うかすみません……」


予想外の展開に少し困惑しながらも、少女は彼の後を着いて行く。

追っ手が現れたと思ったら、青年はその瞬間に数本の剣を空中から出現させ、それを投擲したり、敵の攻撃に対して反撃に使うことで追っ手を撃退する。

それからしばらく話すことも無かったが、街の端が見えてきたところで、少女から話を持ちかけた。


「ところで名前聞いてもいい?」


青年は振り返らず「白闇だ」とだけ言った。


「えーと、じゃあ白闇君って呼ぶね。私は天って言うんだ。今更だけどよろしくね。」


白闇は何の返事もせずに、どんどん先へと歩いて行く。

そして街の外へ出た時、その前に広がっていたのは歪な形に削られた大地と、無数の斬擊の跡だった。地平線まで続くその惨状は宙に浮く痩せ細った男と、それと戦う青年の二人が起こしたものであった。


「あれは、もしかして禁忌の……」


天は呆然としつつそう呟いた。


二人の戦いの決着は一向に着きそうもない状況だった。痩せ細った男の不可視の攻撃は、辺りの大地や空間を侵食し破壊するも、青年はほぼダメージを受けて無い。

同様に青年の斬擊も見えざる攻撃によって阻まれ、ダメージが通らない。

ただひたすらに大地だけが傷つき、足場はほぼ無くなっていた。


「第十禁忌、侵食の使い手エクシオン・イグノート。流石だな」


青年は攻撃を辞め剣を下ろす。エクシオンという男もまた攻撃を辞める。


「龍斗と言ったか、『模造禁忌』の癖に……」


龍斗は剣を振り上げ、その刀身は光を帯びる。


「そろそろ終わりにしようか、『第十禁忌』さん」


膨張した光と共に振り下ろされた剣は、エクシオンの防御を突き破り、この戦いに終止符を打った。


エクシオンの遺体はもはや存在せず、残ったのは約五センチ四方の結晶体だけだった。彼はそれを拾い上げると同時に、それを見ていた天達へと目線を向ける。


「お前らを倒したいのも山々だけど、今は『コア』を運ばないとね。運が良かったな。」


龍斗は天にそう言い残し、次の瞬間には空の彼方へ消えていた。



その場に残された二人、

天は唐突に蒼夜に話を始める。


「さっき言えなかったことなんだけど、私はこの冬を終わらせたいと思っているの。」


白闇は天へと顔は向けず、心当たりはあるんだろうなとだけ言う。


「世界の気温が低下したとほぼ同時期、能力を持つ人が現れた。これは必ず『禁忌』が関係していると思うの。恐らく、気候を変えてしまうほどの能力を持つ『禁忌』が存在する。

私はね、この寒冷化で沢山の友人を失った。だからなんとしてでもその『禁忌』に復讐したい。」


「で、手伝って欲しいと?」


白闇は振り向き、天の方を見て微笑む。


「いいの?」


「やだね、あんなバケモノと戦うのはごめんだ。そもそもお前は信用ならない。」


少女の笑顔は彼の言葉で一瞬にして崩れ去る。


「どうすれば信用してくれる?」


少し間を置いた後、彼は答える

「これから方舟に行く。君がついてこれるのなら僕は君のことを信用しよう。」


天の顔は青ざめる。方舟とは、見つけるのすら困難な空飛ぶ巨大戦艦。噂によると、数十年探しても見つからないことがあったり、方舟にはバケモノがいたりといい話はまず聞かない。


震える手を握りしめ、覚悟をで天は覚悟を決める。


「他に方法が無いのなら、やってみせる……!」


「それじゃあ次の目的地は方舟だな、天さん。」


彼は微笑み、龍斗の飛んで行った方角へ進んで行った。


つづく

これから蒼夜と天の禁忌との戦いが始まります。

始まったばかりなのでなんとも言えませんが、できるだけ面白いようにストーリーを展開していきたいです。

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