6日目
「自宅謹慎ばかりさせやがって、全然学校に行けてねぇぞ…」
守谷は暇な一日を送っていた。
自宅謹慎が重なり合って、合計三週間の休みだ。
俺だけ二回目の春休みがやって来たみたいだ。
原因は朝礼の際に大声で叫んだ事だ。
叫んでしまった原因は、神本だ。
一回目の原因も神本だ。
このままだと神本がいる限り僕はこの学校を卒業出来ないことが確定してしまう。
なんて考えてみたのだが、今自宅謹慎をしている状況ではどうすることもできない。
「やる事ねぇなぁ、久しぶりに秘蔵のビデオでもみるか?」
守谷には、机の一番上の引き出しに秘蔵のビデオがしまってある。
この引き出しには鍵がかかるようになっており、幼い頃にはどうやって使って良いか分からずに放置してしまっていた。
「今になってこの引き出しの偉大さが分かるぜ」
守谷は少し高揚しながらも引き出しを開けた。
「んっ?真っ黒?」
あれおかしい、これは確実におかしい。
もう一度開けてみるか…..
「おはよう、もう朝かい? いい睡眠が取れなかったみたいだ。」
………
……..遂に幻覚まで見えてしまったというのか?
「もう一度だけ開けてみよう……」
守谷は恐る恐る引き出しを開けた。
「いらっしゃいませ、いつでもどこでも、貴方のお側で待機中、神本株式会社の私です!」
守谷は思いっきり引き出しの中に向かって拳を振るった。
ムギュゥ…..
神本の顔に守谷の拳が突き刺さっている。
「痛いよ、守谷くん何するのさ?」
「いや、お前が何してるんだ? 完全なる不法侵入だぞ!」
「クヒヒヒヒッ…いやぁ、守谷くんがいないと学校も抜け出して来ちゃったんだよ。そう、責任取ってくれるのかな?」
「それはお前の問題だろ、あと原因は、お前って事も忘れるなよ!」
「そんなひどいっ、とりあえず家に上げてくれない?」
「くそっ、ちょっとしたら帰れよ」
そういうと右手を出されたので引っ張り上げると引き出しの中から神本が飛び出て来た。
「ふぅ、お邪魔します。クヒヒヒッ….男の子の家って初めて入ったー」
「そのネタは異性だから通じるんだぞ!自分も男だから自分の家も入ってないことになるだろ」
「なるほど、守谷くん頭いいねぇ….学校いかないから成績はよく無さそうだけど」
「うるさい! お前のせいだ!」
神本のトークに付き合ってたらいつまでかかるか分からない。
適当に合わせて目的だけ果たして貰ったらすぐさま追い返そう!
「で? 何の用だ?」
「クヒヒヒ…..別に用なんてないんだけど、守谷くんの家にパスを繋いだままにしてたらおっ始めようとするからさ!」
「家で何しててもいいだろ!」
「謹慎って知ってる?」
「悪いことしたのは俺のせいじゃないからな、関係ねぇ、形だけさ」
「やっぱりか、今日の僕には使命があるんだよ」
「使命? 先生か誰かに頼まれたのか?」
「違うよ、今朝起きた時に考えたんだ」
「お前のさじ加減じゃねーか!!」
「やっぱり、一日一回は守谷くんのツッコミを聞かないと、安眠出来ないよね!」
そんなこんなを言いつつ、俺の勉強机に両の肘を付けると指を絡め、自分の顔の前でキープしている。顔も作っている。厳格な雰囲気を出そうと必死に見えるが….
「みたことあるアニメでそうしてるキャラがいたな」
「そんな事よりも守谷少佐、君には謹慎の意味を理解し分かってもらう必要がある。」
「分かった、分かった、何を理解すればいいんだ?」
「机の一番上の引き出しを見てみろ」
「見てみろって、お前が出て来たところじゃねーか」
このままじゃ帰りそうな気配が一切しないので、一応付き合ってやるかと思って引き出しを開けようとすると、横から手が出て来て守谷の引き出しを開けようとする手を止めた。
「覚悟はできているんだな!?」
「なんの覚悟だよ、別に男同士見られて困るようなアブノーマルなモンは無いし、そんなもんいらないだろ!」
「分かった。」
どうゆう事なんだ?
取り敢えず、引き出しを開けてみた。
「 ……….
……….オイ!!」
神本は動かない。
「なんとか言いやがれ」
「神本は動かない」
「口に出てんじゃねーか!!」
引き出しの中にあったのは木っ端微塵になった守谷の秘蔵DVD達
「さっきのパンチを受けるの嫌だったから中に入ってるものに受け流そうと思ったんだけど、間違えて均等に受け流しちゃって綺麗に木っ端微塵になったんだ………これが本当の謹慎だ!」
「意味が分からないんだよ!!!!!!」
この後、二人は全力で喧嘩した!!