【第10話】おやすみ
「うさぎさん・・・!」
部屋の奥からうさぎさんが走ってくるのが見えた。
「こんなところにいたんだね、アリス!」
うさぎさんが額の汗を拭う。
急いで走ってきたのか、息が切れている。
「うさぎさん、ちゃんとごはんは届けられたの?」
「それが、ごはん届けようとしたらさ・・・」
「待ーてー!」
どうやらくまさんがうさぎさんを追いかけていたようだ。
「ごはんー!」
「ひい!!」
うさぎさんが怯えて私の後ろに隠れる。
「あのくま!ボクのことを食べようとするんだよ!
おかしいよ!
普通にご飯届けようとしたのに、
ボクのこと縛ろうとするんだ!アリス、助けて!」
「そ、そんなこと言われても・・・」
とりあえずうさぎさん、とらさん、ねずみさんをまとめて
ぎゅっと抱きしめ、くまさんに背を向ける。
「あれっこの2人は?」
私にぎゅっと押しつぶされながら、
うさぎさんがモゴモゴ言った。
「さっき耳を触ってたら倒れちゃって・・・」
「あちゃあ、2人は慣れてないからねー」
「がおー」
慣れ・・・?
そうこうしている内に、
くまさんがどんどん近づいてきていた。
どうしよう!
このままじゃみんな食べられちゃうの!?
「くまさん!」
私は思い切って大きな声を出した。
「ごはんを食べるよりもお耳をなでるっていうのはどう?」
一か八かの賭けに出た。
たぶん、ここにいる女の子たちはみんな
耳を撫でられるのが大好きなはず。
「み、みみぃー!?撫でて撫でてー!!」
ばぁん、とその場でくまさんが横に倒れる。
やっぱり撫でられることが好きなんだ。
いっぱいなでなでしてごはんのことは一旦忘れてもらおう。
私は2人をうさぎさんに託して、
くまさんの耳を全力で撫でた。
「はあぁ・・・きもちいい~!」
くまさんがぐわぉう、と咆哮(?)をする。
よっぽど好きなんだろうなあ。
もしかしたら、さっきとらさんが言っていた
私の手が持つ不思議な力というやつが
そうさせている可能性もある・・・
なんてことを考えてみる。
くまさんの咆哮が部屋に響き渡ったその時。
バタン!
部屋のドアが勢いよく開いた。
「アリス・・・大丈夫・・・・!?」
「おおかみさん!?」
包帯だらけのおおかみさんと
髪の毛や服がみだれ少しぼろぼろになったきつねさんが
部屋に入ってきた。
「きつねさんも・・・!
ねずみさんととらさんが変になっちゃったの、
助けて・・・!」
私は必死に叫んだ。
きつねさんはそれを聞くなりねずみさんのほうに走っていき、
顔を覗き込んだ。
「・・・」
「ね、ねえ・・・ねずみさんと、とらさんは・・・・」
「大丈夫、気持ちよすぎて眠ってるだけだ」
きつねさんが言った。
「ね、寝てる・・・!?」
「そんなことより無事でよかった・・・」
おおかみさんがぎゅっと私を抱きしめる。
「心配してくれてありがとう、おおかみさん」
目を閉じて体をおおかみさんに預ける。
ばたばたと大騒ぎしていたからか、
他の部屋からも女の子が集まってきていた。
「大きな音がしたけど大丈夫?」
「お~ここが噂の部屋なのにゃ?」
うまさんとねこさんだ。
「私達は大丈夫だよ。
・・・みんな集まっちゃったね」
「せっかくだから最後の部屋にいってみる?」
うさぎさんが立ち上がり、私に手を差し伸べた。
「最後の部屋って?」
差し出された手をつかみ、私も立ち上がる。
「アリス、キミの部屋だよ」
「私の部屋・・・?」
「そう。
アリスと、ボク達だけの部屋だ。
この部屋でなら、ボク達とずっと遊んでいられるんだよ。
とっても素敵な部屋なんだ!」
部屋の奥に、
大きなドアがそびえ立っている。
今までみたことのあるどんなドアよりも
大きくて重厚感のあるドアだ。
この部屋に入ったら・・・
もうここから出られないんじゃないか、
そんな考えが頭をよぎる。
どうしてだろう。
でも。
みんなが最後の部屋に行きたいのなら。
私はドアに手をかけ、ゆっくりと扉を開いた。
“アリス、アリス。
ようやく来てくれた
みんなと遊ぼう
ずっと、ずっと一緒に・・・”
けもみみを持つ女の子たちの百合風話は以上で完結です。
グロホラー展開か、R18エロ展開かどちらにでも行けるように
ゆるく設定を作って書いてみました。
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