【第8話】ねずみみ
「ねえねえ、あのおおかみとどうやって知り合ったん?」
次の部屋は、今までのどんな部屋よりも小さくて、
綿ぼこりや食べかすで散らかっていた。
「おおかみさんの部屋にいったら、ベッドにおおかみさんがいて、
話してたら仲良くなったの・・・」
私は震える手を自分の手で抑えた。
すると、私を新しい部屋に引っ張ってきた小さな女の子が、
そっと上から手を握ってくれた。
優しい手。
「そうなんやね~」
「あ、あの、おおかみさんときつねさんは・・・」
「あの2人なら大丈夫~!
おおかみは強いし、
きつねはずる賢いし、
たぶん引き分けであのケンカは終わると見たっ!」
あ、あれはケンカ・・・なの・・・?
ずいぶん激しかったけれど。
「ね、そんなことより
キミがアリスやろ?」
「なんで私の名前を?」
「あたしは噂好きの知りたがり屋やからね~
いろんな情報が入ってくるんよ」
女の子は頭を自分の手でつついた。
全体的に小さめでかわいらしい女の子。
その頭には丸っこい灰色の耳がついていた。
これは・・・ねずみの耳・・・?
「もしかして・・・ねずみさん?」
「アリスもあたしの名前を知ってるの?
こりゃ~驚いたや!」
大げさにおどけて驚いた顔をするねずみさん。
会話をしているとどんどん
心がほぐれていく感じがする。
明るいねずみさんの声が、
雰囲気を軽くしてくれているみたいだ。
「ねえねえ、アリス
アリスの頭についてるリボン、とってもかわいい~」
「そう?」
「あたしもそれつけたい!」
「じゃあ一個あげるよ」
「いいの~?ありがと!」
にひひ、とねずみさんが笑う。
かわいらしい笑顔だ。
私は自分の頭につけていた
白いフリルのカチューシャについていた、
水色の小さなリボンを一つ取り、ねずみさんに渡した。
ねずみさんは、リボンを受け取り、
私と同じような位置にリボンを付ける。
「えへへ、かわいい?」
「うん、とっても」
「嬉しい~アリスとおそろい!うれしいなあ~」
「おそろいが好きなんだね」
「うん!きつねと一番仲良しなんやけどね、
ほらみて、このメガネ」
赤縁のメガネをくいっとあげる。
「これきつねと色違いのおそろいなんや~
いいやろ?」
「うん、とっても似合ってていいね」
「アリスともっとお揃いなもの、増やしたいな~」
「・・・そういえば、うまさんが
お洋服作るの得意だから、
もしかしたらねずみさんとおそろいのお洋服を
作ってくれるかもね」
「ほんと~!?うまさんの部屋に行きたい!連れてって!」
ねずみさんが目を輝かせた。
「・・・あ、で、でもさっきのおおかみさんときつねさんが・・・」
私はさっきの怖い光景を思い出した。
「あ~忘れてたや。
しばらく暴れまわってるやろうから・・・う~ん」
ねずみさんが考え込む。
「そうだ、次の部屋は誰がいるか知ってる?」
「もちろん!
あたしは大抵のことやったらなんでも知ってるよ!
・・・アリスのことは、そんなに知らんけど」
「すごいね・・・」
「次の部屋に行ってみる?とらさんがいるんやけどね」
「と、とら!?」
とらっておおかみさんやきつねさんよりも
獰猛そうなイメージがあるんだけど・・・。
私は思わずぶるっと体を震わせた。
「怖がらなくても大丈夫~
とらさん面白いし!
一緒に行こうよ、ねっ?」
ねずみさんがぎゅっと腕を握ってきた。
ふにっと柔らかいものが当たる。
こんなに小さくてふわふわなねずみさんと、
あのきつねさんが仲良しなのが
あんまり想像できないけど、
庇護欲が掻き立てられるという感じなのかな。
それで一緒にいるのかもしれない、
なんてことをぼんやりと考えた。
「うん・・・!行こう!」
次の部屋へと行くことになった。
とらさんに会いに行くために。
とらさんはどんな子なんだろう・・・。
怖さと緊張で、少しドキドキしてきた。