【第3話】ねこみみ
次の部屋は、おもちゃのようなものがたくさんある部屋だった。
ボルダリング用の壁、大きなジャングルジム、
それからいたるところに置いてある箱。
ボールや、ねずみのぬいぐるみ、羽など
いろんなものが散らばっていた。
「お~い、ねこちゃん!」
うさぎさんがジャングルジムに向かって大きな声を出す。
するとトサリ、と誰かが落ちてきた。
「きゃあ!」
びっくりして思わず声を出してしまう。
「んにゃ・・・なんの用?」
黒い猫耳をつけた(・・・もしくは本当に猫耳が生えている?)
女の子が現れた。
薄い水色髪のショートカットで、顔横に細く髪を垂らしている。
服装は黒っぽくて、動きやすそうなものを着ていた。
全体的にボーイッシュな出で立ちだ。
どうやら、この女の子はジャングルジムに登って遊んでいたようだ。
女の子がぶるぶると体を震わせると、
小さな羽や葉っぱが辺りにひらりと舞った。
「アリスを連れてきたんだ!」
うさぎさんが自信満々といった感じで言う。
「ふ~ん、キミがアリス?」
「う、うん。あなたは?」
「みーは、ねこだにゃ」
舌っ足らずな声で答えが返ってきた。
喋り方も猫っぽい感じだ。
「アリスっていい匂いがするにゃ」
ふんふんと顔を近づけられる。
「な、なんの匂い?」
「・・・わかんにゃい」
ねこさんは、そう答えると私の顔をじっと見つめた。
黒っぽくて大きな目が私を捉える。
なんだかドキドキしてしまう・・・。
「ねこさんは、なでてって言わないんだね」
うさぎさんが不思議そうに首をかしげて言った。
ここの人たちは、耳を撫でられるのが好きなのかな?
「みーのこと、撫でたいの?」
「えっと・・・」
私がなんと言っていいかわからず、言いよどんでいると
「撫でてくれてもいいにゃ」
ねこさんがずいっと頭を差し出してきた。
とりあえず、うさぎさんにしたように、
ねこさんの耳も優しく触ってみる。
真っ黒な細い毛並みが手になじむ。
ごろごろごろ・・・
ねこさんが喉を鳴らす。
表情が見えないからわからないけど、
気持ちいいのかな?
「アリス、なかなかうまいにゃ・・・」
満足気にねこさんが言った。
よかった。ほっと胸をなでおろす。
「次はお腹を撫でるにゃ」
ばっ!とねこさんが自分の服をめくる。
白い肌と、小さなおへそが見えた。
「な、なにしてるの!?」
私は突然のことに、
びっくりして思わず目を覆った。
「撫でるにゃ~!」
ねこさんが地面に寝っ転がる。
マ、マイペースな子なのかな。
「ねこちゃん、ストップ!
ボクよりも撫でられちゃだめだよ!」
うさぎさんがねこさんを止めてくれた。
「うるさいにゃあ・・・うさぎは独占欲が強いにゃ。
もういいにゃ」
ぷいっとほっぺを膨らませ、すねた顔をしたまま
ねこさんはジャングルジムのほうに走っていった。
「ね、ねこさん行っちゃったけど・・・大丈夫かな」
「大丈夫だよ!ねこちゃんは気まぐれだからね。
次の部屋に向かおうよ!」
「う、うん・・・」
ジャングルジムの奥に、ドアが見えた。
次の部屋にも、けもみみの女の子がいるのだろうか。
「もう行くのかにゃ?」
ねこさんがジャングルジムの上からひょっこりと
顔をだして言った。
「この先は危険なだから、
気をつけたほうがいいにゃ」
どうやら、私達に忠告をしてくれているようだ。
ねこさんっていい子なんだな・・・。
「うさぎは臆病者だから、アリスのことにゃんて
守れないだろうし」
ねこさんは、にやりと意味深な笑顔を見せた。