【第2話】うさぎみみ
ドアの向こうには、さらに広い部屋が広がっていた。
かわいらしいピンクの壁紙と、ふわふわしたソファやベッド。
大きな柱時計など、いろいろな家具が配置されている。
どれもかわいいパステルカラーで、女の子らしい部屋、という感じだ。
どうやら、ここの部屋には人が住んでいるようだ。
「わぁ!びっくりした!キミは誰?」
ぴょっこりと、柱時計の影から飛び出してきたのは・・・
うさぎ耳の生えた(?)薄桃色の髪色をした女の子。
2つの白いリボンで結ばれた長いツインテールが
ゆるり、とゆれている。
コスプレだろうか?
このかわいらしいうさぎの耳は、
つけ耳というやつなのだろうか・・・?
私がぼんやりと考えていると、うさぎ耳の女の子が
こちらに近寄ってきた。
「ねえ、キミはどこからきたの?」
この子は一体何者なんだろう・・・。
ここについて、何か知ってるのかな・・・?
「わ、わかんない・・・」
「お名前は?」
「えっと・・・アリス」
「アリスっていうんだね!ボクの名前はうさぎ。
ここに来るのは初めてだよね?ボクが案内してあげる!」
うさぎって、ハンドルネームか何かかな?
不思議な女の子だなあ。
でも、ここの部屋やこの場所について
いろいろ知っているみたいだ。
「うん」
私は素直に頷いた。
「アリスは素直でかわいいね!
ここはね、けもみみをもつ女の子達が過ごす施設なんだ!」
「けもみみ?」
「これのことだよ」
私が疑問をつぶやくと、
うさぎと名乗る女の子は、
自分のうさぎ耳を触った。
「アリスにも、けもみみがあるね!」
「え!?私は、けもみみ持ってないよ?」
自分の頭頂部を触る。
2つの塊が手に当たる。
・・・?
これ、耳・・・?
「ちゃんと鏡で見てみてよ!」
かわいらしい装飾が施された手鏡を渡され、覗いてみる。
「う~んこれって・・・」
私はいわゆるリボンヘアーという髪型をしていた。
自分の灰色がかった髪の毛をリボンに見立てて
頭の上で結んでいた。
もしかして、これが耳にみえたのかな・・・?
「これ、耳じゃな・・・」
「アリスの耳、とってもかわいい!
触っても良い?」
「だ、だめだよ・・・」
私はとっさに拒否をしてしまった。
なぜか、触られてはいけないような気がした。
「あっごめんね!耳って敏感なところだもんね!
ボクもあんまり耳を触られるのは好きじゃないかもしれない」
「そうなの?」
「うん・・・でもね、ボク、アリスになら触られたいな」
「えっ?」
「ねえ、ボクの耳を触ってよ」
うさぎと名乗る女の子がぎゅっと体に抱きついてきた。
うさぎ耳がぴょこぴょこと動いている。
つけ耳・・・だよね?どういう原理で動いてるんだろう。
それに・・・
触っちゃっても良いのかな?
でも敏感って言ってたし・・・。
私達、出会ったばかりなはずなのに、
どうして私になら触られたいんだろう?
「うさぎ・・・さん?」
「ね、アリス、ボクのこと触ってくれないの?」
「・・・じゃ、じゃあ触るね?」
そっとうさ耳に触れる。
ふわふわの毛が指をくすぐる。
これってもしかして、本当の耳なのかもしれない。
痛くないように、優しく撫でると
ふぁ・・・と、うさぎさんが甘い声を出した。
「・・・気持ちいい」
「本当?よかった」
うさぎさんは耳をぺたん、と下に向け
うっとりとした顔をした。
「・・・やっぱり、アリスはボク達の運命の女の子」
ぽつり、とうさぎさんがつぶやく。
嬉しいような、切ないような、そんな小さな声で。
運命ってどういうことだろう?
「ね、アリス、ボクと次の部屋へいこう!
みんなにアリスのことを紹介したいんだ!」
うさぎさんはパッと私の手をとり、ぐいぐいと引っ張った。
「次の部屋?」
「ここにはけもみみをもつ女の子達がたくさんいるんだよ!
みんなもきっと、アリスに会いたいはずだから
早くいこうよ!きっと楽しいよ!」
うさぎさんみたいな女の子が他にもいるのかな。
私は言われるがまま、次の部屋へと歩みを進めた。