表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

貴方と私と君と俺

作者: やきはた

今日もまたチャイムが鳴り、終業を告げた。

毎日変わらない今、これからは完全なる自分の時間だ。

ホームルールを済ませ、ブレザーを着終えぬまま教室を飛び出した。

目的地は歩いて30秒のご近所さん、D組。既に人が出始めている教室に、キュッと上靴の音を立て飛び込み、呼び掛ける。

「へーい!小雪ちゃーん!帰ろ〜」

乱れた髪を整えながら、小雪を誘う。

「あのさぁ...恥ずかしいからちゃん付けはやめてって」

恥ずかしがる姿を見れて満足だ。

「いーでしょ、せっかく可愛い素敵な名前なんだから。」

「.......また馬鹿にしてさ.........まぁ、いいや。

んじゃ、行くぞ真琴く〜ん」

うーんと伸びをして立ち上がる。

ほらね。「言うじゃん」



教室、校舎と外に出た時には空は紅く染まり始めていた。

他愛のない話を幾つか交わした後、小雪が提案してくる。

「ねぇ、やっぱちゃん付きで呼んでくるのやめない?わりかし恥ずかしいよ」

即答する。

「やめないよ?」

「えぇ........」


そこで何か言ってやろうと思ったが、ふと物思いにふけってしまう。



やはりコイツは忘れている。元はと言えば小雪が真琴君と呼び始めたのだ。

その頃は髪がとても短かったし、そして名前が真琴だったから。

焦ってすぐに髪を伸ばし始めて今に至るけど、小雪は気まぐれのイメチェンくらいにしかきっと思っていない。

それに、小雪の名前が小雪だったから。今みたいなめんどいことになっている。

もしも名前が反対だったなら、今の関係とはまた違ったんだろうか。

帰りのお誘いだって遊びのお誘いだってあっちからされてみたい。けど、きっと、抱いている感情が違うんだろう、いつも誘うのは私から。


「私だって、女の子なのに」

堂々巡りの長考の末に出たそんな情けない呟きは、なびく髪に絡まって届きやしなかった。

勘違いしたまま読み進めて最後に辿り着いてたら、嬉しいんだよな。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ