『冗談』
分かってんだ、こんなのおかしいって。
自覚はあるんだよ。
でも、こればっかりはどうしようもないんだ。
俺は元々かっこいいのが好きだった。
最初は、ただ男の恰好がかっこよかったから真似してる程度だった。
次に、出来る男の対応がかっこよかったから真似し始めたんだ。
…多分、この辺りから色々とおかしくなり始めたんだと思う。
俺には仲の良い友人がいる。
お互いに親友だって言えるくらいには仲が良くて、冗談言ってからかいあったり、言う言葉が同じだったり、相手の考えてることが分かったり…とにかく仲が良いんだ。
その子は、女の子だから当然っちゃ当然なんだけど、凄く女の子らしくて、身長も俺より小さいし、反応がいちいち可愛いし、とてもからかいがいのある子だ。
反応を見たくてからかって、期待以上の反応をしてくれるから止められなくなる。
そんな事を繰り返してたら、いつの間にか友人として見れなくなっていた。
いや、親友であることには変わりないけど、何故だか違う見方をしてしまうんだ。
彼女には、ちょっと離れたところに彼氏がいる。まぁ、遠距離恋愛ってやつだ。
俺と遊んでる時だってずっと彼氏と電話を繋げてて、二人で遊んでる気がしない。
「今は俺がいるんだから、さっさと電話切ったら?」
とか、
「俺は君と遊びに来たのであって、君の彼氏とまで話に来たわけじゃないんだけど」
なんて言えればいいけど、そんな事は口が裂けても言えない。
だって君に嫌われたくないから。
一回別の案件でやらかしたから怖いんだ。
あの時は『冗談』で済んだからよかったものの、彼女の刺さる様な冷たい視線と言ったら…
今になっても、思い出すだけでも心が折れかける。
最近の事だけど、
「俺が告白すんの!?」
っていう意味分からん話題になった時、
「でも、私は彼氏一途だからなぁ」
って言われて、実はちょっと腹がたったんだ。
君が彼の事を凄く好きでいるのは知ってるんだよ、何十回も君に惚気られてるし。
分かってんだ。
だからこそ、再認識するのが嫌だったんだ。
『心が男なだけじゃ本物の男には勝てない』って。
「えぇ!?告白する前から敗北決定っすか!?」
なんて大げさに驚いて笑って見せたら、彼女はそりゃあ、ねぇ?って言って笑ってたけど。
そりゃそうだよな。
敗北は最初から決まってんだ。
俺が女に生まれた時から。
でも、彼女といると楽しくて仕方ないんだ。
彼女に合う服を一緒に選んでる時なんか、最高に楽しいんだ。
何気ない話をして、店を見てまわって、駅まで送る…
友達なら当たり前であろう行動に、妙にテンションが上がってしまう。
その結果、
「もう少しこう…大胆に腕とか組んでくんないかなぁ」
なんて思ってしまう。
オカシイって分かってんだ。
いきすぎてるって分かってんだ。
傍から見ればヤバイ奴って分かってんだ。
でも、どうしても「そういう目」で見ちゃうんだ。
いけないって分かってるのに、特にこの国じゃああんまし受け入れられないって分かってんのに、自分を変えられないんだ。
普通の女の子が女の子を「可愛い」とか「好き」って言うのは別におかしくないし、よくある事だと思う。
だけど、俺の場合は違う。
最早『俺』って言ってる時点で違う。
俺が彼女に言う「可愛い」は愛情表現だし、「好き」なんて冗談じゃ言えないくらいには本気になってきてる。
俺はもう、どうすればいいか分かんないんだ。
このまま中途半端で生きていくのか、しっかり女として生きていけばいいのか…何が良いのか分からない。
俺に彼氏とか出来れば話は別なのかもしんないけど、お生憎様、男には興味がない。
カッコイイのは勿論好きだけど、俺の求めてる男は多分現実に居ない。
だからせめて、一回だけでいい。たったの一度だけでもいいから、彼女には俺を男として、彼氏として見て欲しいんだ。
本当に「好き」だから。
こんなことを本気で言ったら、君は俺の事を嫌うだろうか。
それとも、また気持ち悪いと引かれるんだろうか。
どちらなのか分からないし、どちらでもないかもしれない。
でもやっぱり、本気で言うのは怖いから、
「『冗談』に決まってんじゃん!嫌だなぁ、本気にしないでよー」
って、俺はおどけてみせるんだ。
雑な文章で本当に申し訳ないです…
ただただ書きたかっただけなのです。
こんな拙い作品を最後まで読んで頂き、有難う御座いました。