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第八話 問の答えを出す。

連続投稿二話目、短めです。

※改稿しました。(描写の追加)10/19




 魔術をかけられてから、一体どれくらい経ったのだろうか?


 ほんの少しの視力以外は全て遮断されているせいで、時間の感覚すら分からなくなってしまったようだ。


 なんだかんだでビビってはいたけど、実際はそこまでなんの抵抗もなくて安心した。


 うーん、どんな感じかって言うと、そう、言うなればここは隔絶された別の世界のような気がする。


 例え目を瞑ってみても、寝てみても、真っ暗な洞窟に入ろうとも、この思考だけがクリアな暗闇を体験することは出来ないだろう。


 再現できたところで別に嬉しくないし、むしろ怖いぐらいだけどな。


「あ、あー。聞こえてる?」


 不安感に呑まれて思わず質問してみたのはいいが、こちらに返答を聞く為の聴覚が無いのを忘れていた。

 というかまともに喋れているのかも怪しいくらいだ。



 こんなところで現状整理は完了。さて、ここからどうしようか?



 そう、ベラに魔術をかけてもらったのはいいけど、そこからは全く持ってノープランなのである。


 とは言っても、自然エネルギーを視る方法なんていうのは教えてもらっているわけではないので、どうしようもないと言えばどうしようもないのだ。


 とりあえず師匠のヒント崩れみたいなのを思い出してみよう。


 えーっと、まずは「自然エネルギーというのは、実は世界と一体化している」だったか。

 これは、視ることとは直接的に関係なさそうだけど、どうせ答えに辿り着くためには必要なんだろう。


 次はなぜ自然エネルギーを視えないか聞かれて、真面目に答えたら普通に馬鹿にされて……うわっ、そのこと思い出すと腹立つなぁ!ってのはどうでもいいとして。


 ────正解は僕の目が曇ってないから。君の目も清めないとね?


 みたいなことを言われたと思う。このヒントから分かることってなんだ?


 曇っている……みたいものが見えない……自然エネルギーが視えない。


 だから、清める。自分の目を……視たいものを視るために……視たいものって?


 それは自然エネルギーだ。そしてその正体は世界そのもの、若しくは世界と一体化しているもの……



 そうか、分かったぞ!!



 つまり、解はこうだ。人間は視覚は失われるまで「世界」をずっと写し続けている。


 だからそれは、自然エネルギーを視ていることと同義なんだ。だから、結果的に自然エネルギーは視覚のある人なら当然のように視えている。


 だけど問題は、その「当然」がそもそもの大前提過ぎることで、真の意味で意識をして自然エネルギーを視ている人は少ないということ。だと思う、多分。


「師匠、コレは流石に分かりづら過ぎだろ。だいたい、答えを導くための言葉が少な過ぎなんだよ!」


 ふぅ。毒を吐くのはここまでにしといて、後はさっきのことを意識しつつ実践あるのみだな。


 今はまだ何も視えない真っ暗な視界に、全神経を傾ける。


 まだ俺が視えていない、直視できていない、視るべき世界を────



 まだ、何も視えていない。


 本当に、この真っ暗な視界に何かが姿を現すんだろうか?そんな不安感が俺を包み込んで、沈める。




 どうせ無理だろ。


 今までお前が一度でも誰かの期待に応えられたのか?




 うるさい────。




 誰でもない誰かが、暗がりに紛れてそう俺を馬鹿にする。その事に無性に腹が立ってきた。



 ……俺のなにが、分かる?



 感覚などありもしない手のひらを虚空に力強く伸ばした。もうここが現実なのかどうかも分かったものではない。

 とにかく、″視る″ということに己の全部を傾けた。



 他の感覚を遮断していることで、どうやら集中力が桁違いに増しているように思える。



 全てを視ろ。壁も天井も、水中も地中も空中も、暗闇の中も光の中も、生きているものも死んでいるものも、細部まで細かく視野をもて。


 他には何も要らない。そう思えてくるほどに視界に意識を集中させる。



 全てを、捉えて、離すな────。






 その、見た目だけを言えばシャボン玉のように、綺麗に鈍く輝いて見える物体は、暗闇に覆い尽くされた視界に唐突に現れた。


 その物体はどこか儚げで、ほかの物体ではとても再現出来ない。

 第一の感想としては、不安定な得体の知れないもの。というのが無難だろう。




 これが、「世界」そのもの────。




 その脳内再生した言葉を最後に、俺の思考は深い奈落へと誘われる。


 まるで、深い海の中に沈んでいくような気分だ。下へ、下へ……いや上か?それも今となっては、よく分からない。



 ただ、もうそんなことはどうだっていいんだ、視えたという一つの真実があるなら。







 とりあえず、第一関門突破だ────。








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