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第二十一話 眠りに落ちる。



「ハイ!今日はここまでね〜」


 少し離れたところからピンキー先生の声が聞こえる。


「はぁ……はぁ……あぁ」


 俺を含めほぼ全員が息も絶え絶え、満身創痍。俺はまだマシな方で、一番奮起していたエイルなど、大の字でぶっ倒れている。


「……くっそぉ、オレ達の攻撃全部捌いて息一つ崩れてねぇとか、すげぇ」


 エイルが姉以外の他の人を褒めるのを初めて見た気がする。まぁ実際誰も歯が立たなかったのだから、理解はできるが。


「ハンゾウちゃんはともかく、他の子は全然ダメダメね。魔術がまともに使えてないし、肉弾戦もとても無理、オマケに連携のれの字もないわ」


「お、お褒めに預かり光栄でござるよ……」


 息は荒らげているが、俺達の中で唯一まともに立っているハンゾウ先輩。伊達に一年先に入っているわけではないということか。


「そ・れ・で・は、次はも〜っとワタシを楽しませてちょーだいねっ?キラっ!!」


 去り際にウィンクをばっちり決めて今度こそ校舎へ歩き出すピンキー先生。


「はぁ……」


 薄々は気付いていたんだが、多くの生徒と魔術の専門的な知識を持つ先生。その中で魔法を使うというのはそれなりのリスクがあるということだ。

 今まではどうにか誤魔化して来たが、正直毎週ある実技の授業で隠し通せる気がしない。


 と、そう考えて今日は魔法を一度も使わなかったわけだが、この授業でいかに魔法に頼っているのかが身に染みて分かった。

 肉弾戦もベラとの訓練で少し習ったが、まだまだ改良が必要だな。



 とりあえず体力的な限界が近かった俺は、深く考えることをやめて一度寮に帰ることにした。



☆☆☆☆☆☆☆



「――ってことなんだけど師匠、どうしたらいいと思う?」


 寮に帰っても他のルームメイトが帰ってくる気配がなかったので、先程の授業で問題だと思ったことを思い切って師匠に相談してみた。


「うーん、生徒はまぁ隠せると思うけど、先生の方はどうだろーね?と言っても、先生に魔法のことを説明したところで信じてはくれないだろうけどね」


 師匠の言っていることはもっともだ。ただ、問題は「魔術学校」で本来の魔術を使えないことだ。これがバレた瞬間、俺は何らかの処理をされるだろう。


 いくら父さんが校長に就いたとはいっても、この学校はよく言えば伝統に重きを置いている、悪く言えば頭が硬い。これは中々変えづらい流れだしな。


「あーもう、眠い……」


 朝からドタバタした一日で疲れが限界に達した俺はごちゃごちゃした考えをまとめることもできず、いつの間にか意識を飛ばしていた。





☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆





 ――久しぶりだね、鍵の子。この前は脅かしてごめん。


 すごく悲しげな声が聴こえるような、なんというか、うん。そういう感じだ。


「……」


 返事をしようとするができない。というか目も見えない。この前は驚かしてごめんということは、前回みたあの夢の続きか?


「意外と怖がってはないようだね、よかった。前回のあれは言うなれば私本体の心情なんだけど。まぁそんなこと、どうでもいいよね……」


 今度こそ人の声だと確信が持てた。ただそれも、音がくぐもったり聞こえなかったりするし、性別も分からないほど曖昧になっている。

 というか、勝手に落ち込まないで欲しい。返答できないから空気が悪いよ。そもそも空気吸い込んでないと思うけどね。


「ごめんね……雰囲気悪くしちゃったね……でもこれだけは言っておきたかったから。んー、どう言おうかな?そうだね。君に――」


 段々増えていくジリリという耳障りな音によって掻き消されていく声。だが、それを指摘する暇もなく話は続けられていく。


「お父、さんの才能は、確かに――受け継がれている。ただ、わた?x_owitrgpyp_yixやはり言えない、か」


 聞き間違えか?いや、間違えるわけがない。

『才能』なんていう言葉を使う言葉は、他に存在しない。ずばり魔術だ。



「ごめなさ。私言えるの、ここまで、ようだ」


 聞こえる言葉がだんだんと物切れになっていくが、それに対して脳が吸収して言葉を咀嚼するという動きを放棄した。


 そんなはずがない。これは単なる夢だ。でも、それなら俺は、一体俺は今まで、


「だからカギは、あ、な、で!」




 全てが切れた。そんな感覚がした。ただ沈んでいく感覚のみが残る。


 あぁ、視界は潰れているはずなのになにかが視える。黒よりも暗い黒。光を一切受けつけないそれは――、


「ゲート?」





☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


「……おい」


 悪夢おそらくから目覚めたが、これまで以上にひどいものを見た気がする。


「おいって」


 ていうか一体あれは誰なんだ?男か女かも分からないし、姿も見えないんじゃ予想のつけようがない。


「起きろコラァ!!」


 がっちり掴んでいた毛布を思いきり剥がされる。たまらず目を開けた先には、


「んーなんだよ、まだ暗いじゃ、って、えぇ」


 なんとカッサンドラ・トロイが怒りの形相をこちらに向けていた。牙のような歯が見えて正直すんごくヤバイ。

 俺が何したって言うんだよ!まぁピンキー先生にぶっ飛ばされた時は少し吹き出したけど……それは関係ない!よな?


「ちょっと外までツラ貸せよ、アンブローズ」


 そう、そうだ!!こんな時こそ師匠に何とか魔法で……ってもう寝てるし!師匠の役立たず!





 ということで、俺はどうやら深夜にカッサンドラ・トロイと外を出歩くらしい。なんだか、あらゆる意味ですごく良くないことが起きそうな、そんな気がします。




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